感動の親子の再会は、戦闘になりそうです
初めての投稿です。
よろしければおつきあいください。
「おい!人間どもが軍を率いてきたぞ。ざっとみて、5千人ってところだ」
砦の見張りをしている狼の獣人が、私の部屋に飛び込んできた。
(せっかく、午後のお茶を楽しんでいたのにな〜)
魔王様から下賜された蜂蜜とお茶は絶品だった。もう少しゆっくりと堪能したかった。
私はため息をつきつつ、テーブルにお茶のカップを置いた。
魔族や獣人の多くは夜行性だ。この砦にいる魔物も例外ではなく、多くは眠っている。すぐにでも応戦できるのは、80匹程の見張り当番と隊長クラスの魔物20人、それと3人の幹部くらいか。
しかし、幹部の1人である私は、戦闘に関してはまるっきり役に立たない。
(しょうがないじゃない。人間だもの)
そう、私はただの人間だ。一般人だ。剣はおろか魔法も使えない、アラフォーのおばさんだ。
だから、幹部とはいえ、私に対する言葉遣いは皆タメ口だ。
まあ、差別とかはないけどね。私も魔王様以外にはタメ口だし。
(というか、砦から見える位置まで敵の進行を許すなんて。見張りの奴ら、寝てやがったな)
言いたい事は山ほどあるけど、とりあえず状況を確かめるのが先だ。
私はローブをかぶり、砦の最上階へ向かった。
最上階には、既に他の幹部が待機していた。
「なんだ、お前も来たのか」
白銀の長いストレートヘアに褐色の肌をもつダークエルフのシヴァが話しかけてきた。
切れ長で涼しげな目元。黄金色の瞳が神秘的なイケメンだ。すらりとした細身の長身に、金で縁取られた黒銀色の鎧に身を包んでいる姿は、いつみても眼福である。
20代の青年にしか見えないが、200年は生きているとか。
(アンチエイジングの秘訣、教えてほしいわ〜)
「まあ、一応ね〜」
私は砦の窓からひょいっと顔をのぞかせて外を眺めた。
報告通り、鎧に身を固めた軍勢が砦に迫っている。
昼間とはいえ、多くの魔物が潜む森を無事に抜けられたのは、よほどの実力者がいるに違いない。
眼下の軍勢を眺めながら考え込んでると、いきなり後ろに引っ張られた。
「怪我するぞ。役立たずは引っ込んでろ」
そういって、私を窓から引きはがしたのは、リザードマンのガロンだ。
緑色の固い鱗に覆われ、大きなかぎ爪を持つ、2足歩行の恐竜のような姿。
2メートル以上ある屈強な体躯につまみ上げられて、私は足をぶらぶらさせた。
「わかった。後ろでおとなしくしてるから、降ろして」
そういうと、すぐにそっと降ろしてくれた。
ガロンは見た目も恐ろしいし口も悪いので誤解されやすいけれど、誰よりも優しい性格だ。
今もこうやって私の心配をしてくれている。ガロン、なんていい子。
「どうやら勇者のパーティーが一緒らしいな」
シヴァが見つめるその先に、他の兵とは違う派手な一行がいた。
「勇者?」
「あっ!おい!!」
ガロンの静止を振り切って、もう一度窓に駆け寄り確かめる。
毛色の違う一行の中に、2年ぶりに見る息子の姿を見つけて、思わず涙ぐんだ。
「蓮・・・無事だったんだ」
安堵と同時に、複雑な思いが込み上げる。
(なんで、こんな事になったんだろう)
パワフルなおばさんが主人公というちょっと変わった話です。
少しずつ更新していきます。