序章5 『さよならとおやすみ』
食事会はデザートまで滞りなく進み、そして終わる。それは御三家の枠組みの話から彼の昔話。また俺の昔話なんかも交えて。
全てが終わり、俺たちは駅前まで彼の車で送られる。退屈そうに窓の外を見るみぃちゃんと、おそらく少しにやけていた俺。
人と人の繋がりは強固で、それでいて脆い。
運転席の逆神に目を向け、そんなことを思って。
帰り際、電車を待つ間、彼は自身の携帯電話を取り出して、とある有名なアプリケーションと立ち上げる。それはグループチャットのためのツールであり、どうやら彼は底での連絡先の交換を持ちかけているようだ。
俺も、そして意外なことにみぃちゃんも自分の意思で携帯を取り出し、彼と三人でのチャットルームを作成した。
「みのりさん。よろしくお願いします」
そういった彼に、みぃちゃんはプイとそっぽを向きながら。
「みのり、でいいです」
そう答える。
チャットルームに入るなり、初めて表示されたメッセージは逆神のもの。
よろしく、と。
その一文の電子データに、少しだけ心があったまる気がする。
最初はお堅い役人の一人だとしか認識していなかったのに。
今では彼をよこしたシステムに感謝すらしている。
彼がいつ、どのタイミングで、俺に目を付けたのか。そう思って素直に訪ねてみれば。
「君が、誰一人として殺さない結末を作り出したからだ」
そう帰ってきた。
次も同じようにいくとは限らない。俺がそう言うと、彼は笑いながら。
「わかってるさ。心持の問題だ」
そう言う。
やがて帰りの電車が到着し。
俺とみぃちゃんは乗り込んだ。
バイバイ。
その言葉だけを残して。
家にたどり着き、そしていつも通り『家族』が笑いながら過ごしているのを見る。みぃちゃんもすぐにそれに参加した。
疲れていて、だけれど少しだけ気分のいい俺は、早めに休み床に入る。
春先。未だ冷える夜の中。それでも温かい布団に包まれながら。