第4部 小さな希望
「ちょっと私、様子を見てきます」
「だめですよ! 姫!!」
十馬は必死で要姫を止める。
「龍之介を信じて待ちましょう」
「でも、心配なんです!!」
眼に涙を浮かべ、龍之介の元へ行こうと十馬まで引っ張っていく。
「龍之介は強いですけど、もしも何かあったら……」
「分かりました」
「え?」
いきなりの了解に要姫は驚く。
「そのかわり、僕も付いていきます。龍之介さんほど強くはありませんが」
十馬は笑みをいっぱいに浮かべる。
「十馬さん……」
要姫は今にも泣き出しそうだ。
「ホラ、泣かないで。さっさと行きますよ」
「はい!」
「龍之介……要姫が苦しむ所は見たくはないだろう?」
「?」
「どうやらここに向かっているようだ」
将軍は西の方角を指さした。
「十馬のやつ! 止めなかったのかよ!!」
今になって要姫を帰したことに後悔する。
「あと十分足らずでここに来るだろう。それまでが、お前の生きていられる時間だ」
「そうやって、沢山の人を殺したんだな」
龍之介の声に僅かに将軍は反応する。
「ここに迷い込んできた野郎を、片っ端から殺していった。自分の秘密を知られたくない。ただそれだけの為に……」
龍之介は拳を固く握り締める。
「それだけの為に、沢山の人の命を奪っていったんだろ!?」
龍之介の声は大広間中に響いた。
でも、将軍も、機械も全く反応を示さない。
ただ、その声は虚しく響いていくばかりだった。
「沢山の人の命を奪った……」
その沈黙を将軍の声が破った。
「だから何だ?」
「っ!?」
将軍の返答に龍之介は驚く。
「醜く、脆い人間達を殺して何が悪い? お前はそう思わないのか、龍之介」
「思わねぇよ!! 俺は人間に感謝しているほどだ!」
「そうか。お前は、失敗作だな」
将軍は龍之介を哀れな眼で見つめる。
「失敗作でも何でもいい。俺ら機械は人間の為に生まれてきた。なのに反対に人間を支配していってどうする?」
「そうか、龍之介。お前は良い機械だな」
将軍の顔は無表情になる。
「それと同時に、愚かな機械でもある……」
将軍の姿が消え失せる。
そして、次に戻って来たときには−
「あばよ……龍之介」
次回、龍之介VS将軍の戦い!!
今までの幕府、
今までの政治、
今までの将軍が崩れ去るこのとき−
ここまで読んで下さった皆様に、感謝の気持ちを捧げます。