第3部 大切なモノ
俺は小さな何かを見つけた。
それを拾い、じっくりと観察するうちに、何かの鍵だということが分かった。
「姫も、十馬も待っているかな」
でも、そんなことを気にしているヒマなんかなかった。
先に、将軍の招待を暴かなくては……
俺はその鍵を使い、近くの扉を開けた。
「遅いですわね……」
要姫は心配そうに窓から空を見上げる。
「何してるんでしょうかね」
何も知らない十馬は、要姫に違和感なく尋ねる。
「さ、さあ。私もしりませんわっ!」
「そうですか?」
(本当に遅い。何してるんですか? 龍之介)
要姫は心の中で龍之介の帰還を必死に願った。
「ここは!?」
大広間の中には、大きな柱と共に沢山の雑用機械が溢れていた。
「なんで、こんな所に?」
龍之介が機械の一つに触れようとしたとき−−
「気づいてしまったのか? 龍之介くんよ……」
「!?」
振り返ると、そこには笑顔の将軍がいた。
だが、いつもの将軍とは違い、その笑みは冷たく、残酷な笑みだった。
「しょ、将軍」
龍之介は後ろに下がろうとして、機械に足を絡ませ尻餅をつく。
「ばれてしまったら仕方がない。貴様も殺すしかないな……」
「!?」
「いや、『壊す』とでも言うのかな?」
将軍は掌を天に掲げると、邪悪な笑いを部屋中に轟かせた。
「我が造りし機械、龍之介よ!」
「!?」
龍之介は驚いて何も言えなかった。
「貴様の父からの願いでな、どうしても子供がいないから造って欲しい、と頼まれたのだ!!」
「そんな……」
龍之介は手を地面につき、こぼれてくる涙を抑えた。
まさか、自分が機械だったなんて。
将軍も機械で、でも要姫は……
!? と、いうことは!
「もう、お前は死んでしまったんだな」
「ああ。娘、要姫が死ぬ前に病気で死んだよ」
「そうだったのか」
俺は親父の為に息子として造まれた。
将軍は要姫の為に父として造まれた。
誰かの為に、
“大切なモノ”として……
次回、要姫が動きます!!
十馬の真の能力とは!?
ここまで読んで下さった皆様、心から感謝いたします
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