神の仕事は大変なようです
朝飯を食い終わった俺達3人はダラダラと午前中を過ごす。御奴候は今日は部活がないらしい。
「ところで、童貞の神の仕事ってなんなんだ?」
と最も気になっていたことを聞いた。というか正直不安で仕方がない。
あっちの世界はどうもシステムに欠陥があるようだし、くだらないことをやらされるかもしれん。サポート役とかいってる野薔薇でさえこの有様。正直1ミリも期待できそうにない
「ああ、言い忘れてたな…童貞の神の仕事は…」
お、なんか真剣な雰囲気だ。久しぶり、いいや初めて野薔薇が役立つ日が来たのかもしれない(まだ2日目なんだがな)。
「私はよく知らん…!」
「落ち着け…俺ッ!!予想通りだろうッ…!」
膝をつねって耐える俺。つうかサポート役ってなに? 煽って居候することなの? 忍耐力のサポートかな?
しかも金くらいは役に立っていると思いきや食費が馬鹿にならんせいであまり役に立っていない
「しかししょうがないだろう?私は薔薇の神の僕だぞ?」
と冷静に言う野薔薇。まあ確かに、他の神の仕事は知らないのは普通なのかもしれない。
と冷静に受け止められる俺かっけー。こいつがサポート役の仕事を果たせてないのは事実なんだが。仕事内容くらい聞いてから来いよ、俺の名前も知らないしさ。
おっと愚痴が長すぎたな、先へ進むとしよう。
「なら、薔薇の神の仕事内容はなんなんだ?…そのマリー様とかいう」
「ほう、ようやくその話を聞いてくれる気になったか!! マリー様は身長152cm、体重…」
「鼻息荒くすんな気持ち悪い、そういう話聞いてねえよ、仕事の話だよ、神の個人情報は今いらないからな?!…改めて、薔薇の神の し・ご・と の内容は?」
仕事の部分を強調してやる俺。
野薔薇はそこで落ち着きを取り戻したようで静かに語る
「申し訳ありませんが、当店ではその情報は取り扱っておりません」
「喧嘩売ってんのかコラ?!」
こいつ、マリー様の話が出来ないからっていじけてやがる。ことごとく使えない奴だ。そして当店ってなんだ。神様は商売なのか?あ?
「まあ冗談は置いといて」
「今の一連の会話はなんだったんだ?!」
「まあ場を和ませるゴッドジョークといったところか」
「いや、和んでねえから、むしろ険悪になったわ、クソ野郎!」
そしてアメリカジョークみたいなノリで言うな。
「…で、本題は?」
怒りを抑える俺かっけー…
「童貞の神の仕事とは…」
またこっからか…ループものですか、これ?
「まあまずは存在が仕事みたいなもんだ。既にキツかろう?」
「表に出ろやコラ!!」
なんなの?会話するたびに煽らないと気がすまないわけ?
「そういきりたつでない…童貞という概念を司る神がいないと世界のバランスが崩れてしまうだろう?存在でバランスを保つことは非常に重要な仕事なのだ」
…なるほど?
「例えば…童貞の神がいなければ、世界がリア充で溢れてしまう」
「いや、それむしろいない方がいいじゃん!幸せな人が増えるんですが?!」
本格的に童貞の神の後継者になるのやめたい…
そして、こいつには俺に童貞の神になってほしいのかほしくないのかはっきりして欲しい…
「よく考えてみろ…リア充ばかりになると人口のバランスが崩れたりと色々な問題がおきかねんだろ?」
まあ、確かにいいことだけではないか。こいつも案外マトモなことを言っているのか?
しかし少子化問題とかは解決出来そうだな
「だから、適度に自身の童貞度を調節して世界のバランスも調整せねばならんのだ」
童貞度という謎の言葉は置いといて、案外マトモな役割なのかもしれない
「あとはまあ童貞関連の悩み相談とかだな」
「神が相談を受けるのか…?」
「いや、神の僕が主に返答する」
「例えばどんな相談なんだ?」
「そうだな…「童貞を卒業したいんですが、どうすればいいでしょうか?」by 40歳男性 とかだな」
「いや、最初にあげる年齢として40はおかしいだろ?!」
そして童貞の神に童貞の卒業について聞くなよ
「なかなか深刻な問題だろうよ。これに対する僕の返答は…
1、諦めましょう
2、社会的ステータスを上げましょう
3、◯俗へ行きましょう
4、異世界転生をしましょう
5、2次元の世界に浸りましょう
が挙げられるだろうな」
「いや、それただの悪口だろ?! 有益なアドバイスしろよ!」
最低すぎる…そして異世界転生しましょうってなんだよそのテキトーなアドバイスは…
「そもそも童貞の神の僕が童貞卒業のアドバイスすんのはどう考えても不自然だろ…」
「いや、童貞の神の僕は皆、質問相談のために非童貞もしくは非処女だ」
「御奴候ゥ?!!」
ウソだろ…仲間だと思ってたのに…
「儂の童貞卒業の相手は…この娘でやす!」
いや、ご丁寧にスマホの画面をこちらに見せんでいい…ツラくなるだけだ
「ちなみに、童貞の神の僕は童貞の神に童貞または処女卒業の相手を見せる義務がある」
「なんなんだ、その地獄は!?」
俺、前世で悪い事でもしたんかな…前世は◯人と不倫みたいな…
まあものすごく失礼だけど、御奴候の童貞卒業の相手にショックを受けることはない気がする。俺はスマホの画面を見やった
「…ってめっちゃ可愛いじゃねえか!」
フラグかよ! 悔しさと嫉妬と申し訳なさと悲しみが入り混じってなんもいえねえよ…
「今もその娘とは付き合っているでやす…儂は相撲部でやすが、彼女はマネージャーでやす!」
「ブワッ(溢れる涙)」
クソッなんて羨ましい…でも御奴候の幸せそうな表情を見ると、幸せになって欲しいと思えるぜ…
これが…童貞の神、か…
としみじみとしている俺に野薔薇もスマホの画面を見せてくる
「可愛いじゃねえかああああああああ!! 」
ダメだ、こいつ確かにイケメンだし、予想通り可愛かった
だが御奴候のときのように切ない感情になることはなく
「唸れ!俺のストレート!!」
と全力でスマホを野薔薇に投げた
「ッ!…なにをする!危ないではないか!」
キャッチする野薔薇…クソ、こういうとこで無駄にスペック高いのが腹立つな
なんとか怒りを抑えた俺に野薔薇が付け加えた
「もう一つ、神々の集まりや会議にでないとならん」
ほう…中2病臭がプンプンする
「直近だと…1週間後のキザ神会議だな」
「はやっ、そしてなんだよキザ神って」
「キザ神グループに属する神々の集まりだ…薔薇の神や処女の神もそうだ」
「処女の神…?」
「ああ、彼女はかなりの美少女だ」
「今度こそ女なんだな?」
「当たり前だろう?」
俺は目の前の奴を殴りたい衝動を抑え、気になったことを質問する
「童貞の神もキザグループに入るのか…?」
「ああ」
「なんでだよ!」
「知らぬ」
…もっとしっかりしてくれあっちの世界…
「ちなみにキザグループの中では童貞の神の権力は最下位に等しい」
「でしょうねぇ!」
「まあ半端にカッコつけるからな、童貞は…」
我慢我慢我慢我慢我慢…
つか色々と終わってそうなキザグループの中でも最下位て絶望でしかねえんだが…
「…ちなみにキザ会議の内容は…?」
気を取り直して聞く
「フ…知らぬ」
「いや、お前薔薇の神の僕だろ?まさか僕は入れない系のガチなやつ…?」
「私も中に入ることは出来るが…神達の話が始まると、私の思考は混濁していき、気づくと終わっている…なんと次元の高い会話なのだろうか」
「いや、それはお前が話のつまらなさに居眠りしてるだけだからな?!」
ダメな予感しかしない、1週間後が不安だ…と俺は思わず顔を覆うのだった