しもべの名前がようやく分かったようです
「押忍! 朝飯出来やした!」
元気の良い掛け声がリビングから聞こえる。
なんとなく嫌な予感がしながらリビングへ行くと予想通りの光景が広がっていた
「…俺(私)パスで」
察しの通り、山盛りに盛られた飯を見てハモる俺と野薔薇
「初めて意見があったようだな力」
「いや、そういうのいいから。願い下げだわお前と意見合うなんて」
「しかし合わせてきたのはそっちだろうよ力?」
「ハモるのに先も後もあるかっつーの」
「コンマ1秒私がさk」「そういう◯学生みたいなのいいから!」
俺と野薔薇はお互いを睨みつけあう
しかしそこで
「そうですか…なら儂が全部食べやす…」
という涙声が聞こえたので俺達は同時に振り向いた。またハモりやがって…
しかし
「わるいわるい、やっぱ食うわ…ただ量を減らしてくれねえかな?量は少しでいいんだ」
押忍の悲しげな声を聞くと流石に申し訳なくなった。まあせっかく作ってもらったんだからな。ありがたく食おう。
「押忍! じゃ減らしてきます」
台所へ戻る押忍。そしてすぐに戻って来ると元気よくテーブルに丼を置いた。軽く1cmくらい減らされた丼を。
「…量は少しでいいと言ったんだが?」
「言われた通り少し」
「いや、全然量変わってないよ?!」
「(減らす)量は少しと言われやしたので、これくらいかなと…」
文脈ゥ…
だが、うなだれる押忍を見るとこれ以上注文をつけるのも悪い気がしてきた
「…ああ、いや、ありがとう…う、うまそうだ!いただきます」
「…いた、だき、ます…」
あの野薔薇でさえ注文をつけない押忍の純粋さ。だが、今はそれが憎いッ…!
俺は食べてもいないのに吐きそうな様子の野薔薇を横目に震えながら飯を口に運んだ…
「ギブ…」
俺は半分残してギブアップした。朝ですから…
野薔薇は3分の1を食うか食わないかくらいでテーブルに伏している。俺達が食いきれないのはわかってんだから最初から少なくすればいいのに…とは思わなくもないが、例のごとく押忍が食ってくれるので目を瞑ることにする。
ん、そういや
「押に…いや、お前はなんて名前なんだ?」
ようやくこの話題に辿り着けた。
「鷲の名前は佐藤太郎」
…普通だ
「というのは仮名で」
…ほう…まあ一応あっちの世界の人間(?)だからな…
「本名は 御 奴候 でやす」
…強そう…あれ?
「もう1度言ってくれねえかな? 朝だから頭がボケてるみたいで」
「おん なのこう でやす」
ふむ…
御→おん
奴→なの
候→こう
⇒おんなのこ 女の子!girl!
って地味に伏線回収してんじゃねえええぇぇぇ!
野薔薇の方を睨みつけると顔はテーブルに突伏しながら親指立ててやがる…すごくぶん殴りたい
「ちなみに」
今度はなんだ
「二つ名はvirginitasでやす」
「…え?」
いや、二つ名って…あっちの世界じゃよくあるのか…? つうか無駄に発音上手いせいでなんていってるかわからん
俺は気を取り直して聞き返す
「…悪い、日本人にもわかるようにもう一度」
「ウィルギニタース でやす」
無駄にカッコイイななんか。ちょっと失礼だがイメージに合わん
「…ちなみに意味は…童貞だ」
「いや、ここぞとばかりに起きてくんなお前は!」
「儂の二つ名は…昨日名付けられました」
いや、その情報逆効果だから、御奴候! つか名前呼ぶたびに腹が立つわ誰かさんのおかげで…
つまり野薔薇が名付けたんだな?俺への嫌がらせのために
「童貞の神の僕なんだから、二つ名もこうすべきだろう? 少しは私の配慮に感謝してもらいたいものだが」
真面目そうな顔でのたまう野薔薇…腹ん中見て見てぇなぁ?
腹パンしたい衝動を押さえる俺。今腹パンすると食卓が大惨事になりかねんからな。
だが黙ってるわけにはいかない。俺は言葉を紡ぐため、腹に力を込める
「童貞ってなんでツライんだ…」
溜息しか出て来なかった。つうか童貞とかそういうの以前だろこれ。ホントに俺は神の後継なんだろうか
「我慢しろ。童貞はいつか卒業するものだ。それまでのしんぼウッ!?」
天然なのかわざとなのかともかくさらに煽られては流石に手が出る。頬にしてやったんだ、感謝しやがれクソ野郎
というか世界中の魔法使い(30over ♂)に謝れ