約束
掲載日:2016/05/16
約束を守らないから殺した。存在をこの世界から殺した。抹殺した。
俺は彼女にそう言われてきょとんとする。俺は死んだのか?
何も感触はない。あるのはただただ意識だけ。
自分に残されたのは視覚と考える能力だけ。俺は下を見る。
そこにあるのはかつて自分の体であった血まみれの肉塊。そこには生命特有の暖かさはもうない。血はすでに固まりかけている。
そして、そのただの肉の塊の前にいるのは俺の元カノである。
そうか。
俺はあいつに殺されたのか。俺は納得する。あいつには動機もヤル度胸も十分すぎる女だ。
しかし、奴はしてはならないことをした。
殺人。それは何人たりとも許されてはいけない。太古の昔から存在する罪。蛇のように狡猾でライオンの心臓を持ったこの俺を殺したのだ。これから為すことも、為さなければならにこともすべて消したのだ。
消されたのは何時間だったのだろか。誰との楽しい何時間だったのだろうか?
それを消された。愛おしきわが子との時間も消された。許さぬ。許せぬ。一度は本気で愛した女といえども許せぬ。
一生呪ってやる。
それが俺に出来るただ一つのことだ。
呪い。これをあなたに贈ろう。
安心しろ。これで君は俺をいつもそばにいることを感じられるだろう。
いつも一緒にいるという約束が果たせではないか。
それが呪いだとしてもそれは変わらないのだから。




