朝の幸せ
ピピピッピピピッピピピッピピピッ。
規則的な電子音が部屋に鳴り響く。外から降り注ぐ朝日が淡い黄色のカーテンを突き抜け、仄かに光を送り届けてくる。部屋の主がいるであろうベットの上にはこんもりと布団の山が出来ており、電子音と連動するかのように蠢いていた。
蠢く布団の主が目覚まし時計を止めようと手を伸ばすより先に、別の手が電子音の息の根を止めた
「ほら、花菜。もう7時ばい?はよ起きんば」
柔らかく優しい声が耳朶を打つ。しかし、それでは布団の主もとい、鉄壁の要塞となったベット城の主は降伏しない。もごもごと動き、布団ごとさらに丸まってしまった。
「ほら、花菜ってば」
次に敵軍は布団と言う城壁に手を置き、ゆさゆさと揺さぶり始めた。これにはベット城の主もたまらず和解策に出る。
「……うぅ~、あと5時間」
「どんくらい寝るとさ。ほらほら、はよ起きて」
「ん~……やだ」
交渉決裂。その瞬間、布団の城壁は瞬く間に敵軍に奪われてしまった。
「あぁ!?鉄壁の要塞がっ」
「なん言っとっと?取りあえずシャワー浴びてくれば?その間に朝ご飯準備しとくけん」
敵軍はそういうと、キッチンに撤退して行くのだった。
「……はぁ~い」
シャワーを軽く浴びた彼女、佐倉花菜は下着姿のまま風呂場から出てきた。それを見た彼、木島冬弥は苦笑いを浮かべながら料理をテーブルに並べる。本日の朝食のラインナップは白ご飯と味噌汁、目玉焼きとベーコンにコーンサラダだ。二人とも朝はそんなに食べないので、このくらいが丁度良いと言うことは既に分かっている。
二人が向かい合わせに座って両手を合わせる。
「いただきます」
「……いただきますー」
花菜はまだ完全に覚醒してないのか、やや声が気だるげだ。しかし、その食事をする手はやや早いだろう。朝の1分と言うのは途轍もなく早く感じるため、花菜は余裕持って仕事へ行く準備をしたいのだった。
そんな花菜を見て、冬弥は味噌汁で口を湿らせて言う。
「花菜、湯冷めするばい?いくら暑いって言っても下着はやめん?」
「んー?大丈夫大丈夫。ここ何年か風邪とかなったことないし」
「いやでも……いつも朝からその格好はその……」
「……あぁ、欲情しちゃうってやつ?げーんきーだーねー」
花菜のオブラートに包む気なしの発言に、冬弥は「うぐっ」と呻いた。その顔が若干赤くなってる。
「そりゃ!す、好きか人が下着だったら仕方なかばい!!そ、それに花菜は……か、可愛いかし」
「……ありがとぅ」
花菜は感謝の言葉を小さく述べた。よく見ると彼女もほんのりと顔が赤くなっている。その後、二人は顔を朱色にしたまま食事を進めた。テレビから流れている朝のニュースがなんだか無粋に思えるほどの甘い空間だ。
白ご飯をはむっと口に含んだ花菜が、上目使いに冬弥を見る。耳まで赤くしてちょっと早めのスピードでご飯を食べている彼を見て、何だか幸せを感じて微笑むのだった。
甘すぎて口から砂糖が・・・おrrrrrrrrr orz