クイズ「競争」
「さて問題です。」
「いきなりなんだよ。」
「お前は走っている。お前の前には、誰かが走っている。お前は必死の思いで走り、そいつを抜かした。お前は先頭になった。」
「へー、で?」
「しかしお前は、お前が抜かしたやつではない奴に後ろから抜かされてしまった。」
「ふーん。ソレハクヤシ―イ。」
「でもお前は先頭だった。」
「...は?」
「さて、なんででしょう?」
「なんだそれ。わけわかんねー。」
「さー、なんででしょーう。」
「いやいいよもう。俺は次の講義があんの。」
「やーだー。答えていかなきゃはーなーさーなーいー。」
「だぁぁもう、うっとうしい!離せ!期末あんだよっ!」
「あーん、もう、つれない人ねー。」
「うっさい!オカマ言葉使うな!もう行くからな!」
ダダダダッ
「............」
「...正解はね。お前も、お前が抜かしたのも、お前を抜いたのも、全部お前だったからだよ。」
「かつてアメリカでこんなジョークが流行った。フォードの車はどんな車よりも速い。理由はフォードの車の生産が多すぎて、どこまで行ったって自分の前を走っている車はフォードだったからさ。」
「人間だってそうだ。どんなに走っていたって、生き急いでいたって今の自分を追い抜いてもそこにいるのは誰かではなく自分だよ。そいつは自分が思っていたより自分そっくりで、自分が思っていたより自分が望んでいた存在じゃないっていうのがオチさ。」
「他人を目指してる場合なんていわんやおや、だ。自分以上によくわからないものなんて目指して走っていたら、まさしく五里霧中だろうよ。」
「なぁ、これを読んでいる君は、クイズには正解できたかい?」
「まー俺が君たちに何が言いたいのかというとだ、わけわからんもん追ってるくらいだったら、きっちり足元を見て進め。ほっておくと、”全盛期”とかいうタスキを巻いたやつがお前のことを追い抜くぞってことだよ。」