私の放課後。
バカ、ナルシスト、根暗。
三種類のタイプが出てきますがあなたは一体どれを自分に重ね合わせるでしょうか。
または、この作品にあなたはいないのでしょうか。
ぜひ、自分に近いと思うキャラの行動を見ていてあげてください。
「5時間目の学活は授業に入る前に自己紹介をします。」
疲れきった目をした女教師がそう言った。
彼女は、私が転入してきた下ノ里第三中学校二年A組の担任だ。
担当教科は確か数学だったかな。別に興味ないけど。
数学だけは得意な私には、数学の教師は視界にも入らない不必要な存在だった。
「名前や自分の好きなもの、特技とかなんでもいいから3つ以上は話すこと。じゃあ秋山から出席番号順に進めて。」
そう言うと、一番前の席に座っていた男子生徒から順に自己紹介を始めていった。
――別に興味ない。
私は、親の仕事の都合で住み慣れた東京からなにもないこの下ノ里村へ引っ越してきた。
特に親しい友だちがいたわけではないので東京を離れるのは苦ではなかった。
教室の窓際、左後ろの角。
ギリギリ日の当たらない席、そこが私の居場所だった。
どうでもいいクラスメイトの自己紹介は私の耳に留まることなくただ通り抜けていくだけだった。
「篠原 勇気!」
バカみたいなでかい声。
「趣味はゲームで、特技は寝ること!」
クラスに絶対一人はいるこのありきたりな自己紹介。
この後何人もの自己紹介が続いたが、私の耳にとまったのはこの男と隣の席の男だけだった。
自己紹介の順番が私の隣の席の男に回った瞬間、今まで机の影で本を読んでいた人、友達と話していた人など全員彼に注目した。
ニコニコしながら私の顔を覗き込むその男は、すっと立ち上がり自己紹介を始めた。
「はじめまして。このクラスのイケメン代表・吉田修平です。誕生日は勇気と同じ4月6日。誕生花は「キブシ」これからよろしくね友里ちゃん☆ ついでに彼女募集中ですっ」
あ。私も誕生日一緒…。
大してかっこよくはないイケメン代表の自己紹介は、クラスを少し控えめな笑いに包んだ。
彼はこのクラスでナルシキャラなんだろう。見てるこっちが疲れる。
自己紹介が終わると前の学校と変わらず退屈な授業が始まる。
一つ言うなら、これが最後の授業でこれが終われば帰れるというのが唯一の救いだった。
キーンコーンカーンコーン
帰りの会。特にだれとも会話もせず帰りの会は終わった。
「なんでお前ずっと怒ってんだ?」
「せっかく可愛いのにもったいないよ?」
勇気と修平だ。ほっといてくれればいいのに。
「つまんない」
そう言い残しその場を去ろうとすると勇気に引きとめられた。
「それならゲームをしよう。お前が負けたら笑え。俺らが負けたらもうこれ以上は関わらない。」
「急に何言ってんの!私はゲームなんか得意じゃないしっ…」
すると耳元で修平が小さな声で呟いた。
「こいつバカだから。」
そんなの言われなくても気づいてる。自己紹介の時からわかっていた。
「じゃあルール説明な」
勇気は私の話を聞かずに勝手に進めている。
「ルールは簡単。一人ずつ順番にこの食パンに1〜3回タバスコをかけていく。それを繰り返していって20回目にタバスコをかけた人の負け。罰ゲームとしてその食パンを食べてもらう。ただし、俺はハンデとして必ず3回かけよう。」
「どうする?友里ちゃん。」
優しい声で修平が尋ねてきた。
「やるわ。ただし、約束は守ってよね。」
勇気は私の答えに対し、あぁ。とだけ答えた。
一周目
勇気は宣言通り3回タバスコを振った。
私は2回、修平は1回ずつタバスコを振った。
二周目
勇気はしっかりと3回振っている。
このまま宣言通り全て3回ずつ振ってくれるならば修平の振る回数を予測すれば勝てる。
だが勇気が約束を守り続ける可能性は極めて低い。
「ねぇ、勇気。一つ質問していい?あなたを信じていいの?」
すると、彼はあくびをしながら、
「さっき言ったろ?約束は守るって。」
当たり前のように言った。
私はその返事を聞き、1振りタバスコをかけた。
それに続き修平は2回タバスコを振る。
この時点で、元の食パンとは正反対の地獄のような赤色に染まっていた。
三周目
勇気は平然と3回タバスコを振り、友里に渡す。
私は1回。正直これは賭けだった。
すると、その意図に気づいたように修平も1回だけタバスコを振った。
四周目
勇気は流れ作業のような慣れた手つきで3回タバスコを振りかける。
タバスコを受け取った私の手から修平は瓶を奪い去り、内蓋を開け食パンにぶちまけた。
「はい、勇気の負け。」
片手にタバスコを持ちながら微笑んでいる姿はまさに悪魔のようだった。
「まて修平!なんで俺負けてんだよ、3回ずつ振ればいいって言ったの修平だろ!」
驚いた声で修平に訴えかける。
「別に勝てるとは言ってないし。それと、女の子にこんなもの食べさせたくないしね。はやく食べなよ☆」
「うっせぇ!じゃあお前が先に食え!」
二人のそんなやり取りを聞いてる間に、自然と私は笑ってしまった。
「なんだよ、笑えんじゃん」
勇気は本当のバカだ。最初から知っていた。
「やっぱ、笑ったほうが可愛いね☆」
助けてくれる自称イケメン代表。
「あのね、私二人と誕生日一緒なの!」
「キブシ」
勇気が呟いた。
「そうだね、キブシの花言葉。『出会い』かな。」
私の放課後。を読んでいただきありがとうございます。
私は話を考えるのが好きでよく妄想はするのですが、それを文字として文として表現することはなかなかありませんでした。
なので、挑戦ということでこの作品を書かせていただきました。
やはり、細かい描写など文として表現するのは難しく、でもそれはすごく楽しかったです。
S先生の次回作にご期待ください!!←