最初のお客さん
封筒に入っていたのは祖父からの手紙だった。
手紙の枚数は全部で三枚あった、一枚目はこの店をボクにまかせるといった内容だった。
二枚目の内容は店にある商品は決して捨てずに毎日掃除してやること、買いたいと申し出てきたお客さんがいた場合は、ボクが値段やその相手に売るかなどの判断をするように、といった内容だった。
さほど祖父と会話をしたこともないボクは不思議だった。
なぜ祖父は父でなく、ボクにこの店を継がせたのか。
なぜ祖父はここまで無条件にボクがこの手紙の内容通りにすると思っていたのか。
他にも気になることはたくさんあったが、三枚目の手紙を読もうとした時。
?「ごめんくださーい!」
明「・・・お客さん・・・かな?」
?「どなたかいませんかー?」
明「はーい。今行きますー」
どうしよう。バイト経験もなければ人付き合いも得意なほうではない。
どういった対応をすれば良いのか分からない。
それにまさかお客さんが来るなんて思ってなかったし・・・
?「あなたは?望さんはどうしたの?」
お客さんは女性だった。それに見た感じ若そうな人だ。
とてもこんな店に来るような外見はしていない。しかし、過去に来たことがあるのだろうか。
ボクの祖父の名前を知っているようだし。
明「ボクは祖父・・・九十九 望の孫の明希です」
?「そう、あなたが明希くんなの。それで、望さんは?」
明「祖父は・・・三ヶ月前に他界しました・・・」
?「ウソ・・・そんな・・・じゃあこの店はどうなるの?!」
女性は結構なショックを受けていた。どうやら常連みたいだ。
祖父との関係も気になるが、ショックを受けている人を放っておくわけにもいかない。
明「あの・・・お店は、ボクが継ぎました」
?「・・・あなたが?」
明「はい。祖父の遺書に従って今はボクが九十九道具店の店主です」
?「・・・そう」
そういったきり、女性は黙ってしまった。
なにか考えるような仕草をしながらたまにボクの顔を見ている。
顔になにかついているのかと思い袖で顔を拭っていると
?「ごめんなさい、急用を思い出したわ。また明日寄らせてもらうわね」
明「あ、はい・・・」
女性はそういって店を後にした。
なんだったんだろう。ボクの話を聞いてから急用ができたような感じだった。
祖父の交友関係をまったく知らないのでこれ以上考えても仕方ないのだが、どうしても考えてしまう。
その日はそのまま、あの女性と祖父がどういった関係だったのかを考えて閉店時間まで過ごしていた。
三枚目の手紙の存在をこの時はすっかり忘れていた。