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新年明けたよ、コクリちゃん

作者: 瀬川潮

※クラウドゲート(株)さまの展開するWTRPG「舵天照」(http://www.wtrpg8.com/)のNPCを主人公に据えた短い二次創作小説です。

「うわあぁん!」

「え?」

 神楽の都を歩いていたコクリ・コクル(iz0150)ちゃん。子供の悲鳴に気付いて現場に走っていきます。

 すると、人相の悪そうな大人の集団が子供達に難癖をつけているではありませんか。

「このくそガキ。兄貴に蹴鞠をぶつけるたァいい度胸だ」

「ごめんなさい。だから蹴鞠を返して下さい」

「さぁて、どうしようかなぁ」

 ならず者集団はぺこぺこ謝る子供には素知らぬ顔で取り上げた蹴鞠を高く掲げて取り上げてしまっています。素直に返す気、なさそうですね。

「ちょっと、大人が何みっともないことやってるんだよ!」

 見かねたコクリちゃん、口を出します。ミニスカートで仁王立ちして。

「ちゃんとその子たち謝ってるじゃない。返してあげなよっ!」

「ほぅ。威勢のいいお嬢ちゃんだな」

 声を張るコクリちゃんを見てニヤニヤするならず者たち。何かよからぬことをたくらんでる様子ですよ?

「よぉし。じゃあこうしよう。お嬢ちゃんに蹴鞠をいったん渡す。そしてお嬢ちゃんは足で蹴って運んで、この裏通りの奥の壁にある樽の中に入れたら、この蹴鞠は返してやろう」

「ついでにお菓子もつけてやるぜ?」

 げへへへ、と10人くらいいるならず者たちは言ってコクリちゃんに蹴鞠を渡してきます。

「分かった。じゃ、はじめるよ?」

――だだっ!

「な、なんだと?」

 奇襲です。

 コクリちゃん、知恵を働かせましたね。

 太股を上げて渡された蹴鞠をぽーんと弾ませ、落ちてきたところを足元に納めるや否や、すぐに球を蹴りつつ路地奥の樽を目指したのです。

「合図もなく奇襲か、汚ぇ!」

 ならず者達は慌ててコクリちゃんに抜かれまいと動き出します。

 でも、ドリブルするコクリちゃんの姿に見惚れているならず者もいます。

「見えそうで見えねぇな」

「なに呆けてんだ、止めるぞ!」

 ミニスカートをひらひらさせながらドリブルする姿に釘付けになっているようですね。

 でも、大きな男が前に立ちはだかりましたよ。

「何のっ!」

「おおっ?!」

 おっと。

 コクリちゃん、横の壁に球を蹴って反対側を抜けます。その頃には、壁に跳ね返った蹴鞠が戻ってきて再びコクリちゃんの足元に納まっています。いわゆるワン・ツー。

 まず一人抜き。

「くっ。これならどうだ?」

 ああっ。

 今度は三人のならず者に行く手を阻まれました。両脇の壁もちょっと様子が変わって犬矢来が並んでいます。さっきのような一人壁パスは無理です。

「くそっ!」

「さっきまでの威勢はどうした? そうそう。そっちが負けたときの条件を言ってなかったな。負けたらお嬢ちゃんにこっちの言うこと聞いてもらうぜ?」

「うへへ、何がいいかなぁ。その服装のまま逆立ちしてもらおうかなぁ?」

「卑怯者!」

「負けた時の条件も聞かずに奇襲を仕掛けたそっちが卑怯者じゃねぇか」

 吠えるコクリちゃん。ならず者達は満足そうにあざ笑います。

 もう、前も右も左も固められました。じりじり寄って来るので後ろしかありませんが、背後からも先程抜いたならず者が!

「げへへ。事故でスカートが捲くれても文句いいっこなしだぜ?」

 背後に迫った男、事故を装ってコクリちゃんに不埒なことをする気満々のようです。

 コクリちゃん、大ピンチ!

 その時でした。

「お嬢ちゃん、こっちじゃ!」

「はっ! おじいさん、お願いっ!」

――ぽーん。

「何ィ?」

 蹴り上げられた球を一斉に見上げるならず者。それを尻目に、姿勢を低くしてコクリちゃんがならず者たちの包囲網をすり抜けます。

「ほぅれ。これで樽まで一直線じゃ」

 声の主は、二階から顔を出して一部始終を見ていたおじいさんでした。コクリちゃんの浮かせた球を、はげた頭で弾き返します。

 これを、ならず者の裏に抜けたコクリちゃんが追いかけ右足で押さえます。

「おじいさん、ありがとっ!」

 手を上げて礼をするコクリちゃん。後は樽までドリブルすると、ぽ~んと球を浮かせて樽の中にシュート。

「よしっ、ボクの勝ちっ! 蹴鞠は返してもらうよ☆」

 コクリちゃんの勝ちですが、あらあら。

 シュートの時に勢い余って、スカートが相当捲くれたようですね。正面からは見えませんが後からはチラ見えのようで。

「しょうがねぇなぁ、いいもん見せてもらったし」

「ほらよ、約束のお菓子だ。ただ、いい女になりたかったらもう少し淑やかにすんだな」

 ならず者達も一定の満足を得たらしく、大人しく引き下がるのでした。

 うう、とコクリちゃんはミニスカートの裾を押さえて真っ赤になってましたが。

「……二階におったワシだけが損したのか?」

 ヘディングしたおじいさん、色柄くらい教えてくれてもバチは当るまいに、とか呟いていますけどそれはそれ。



   おしまい

 ふらっと、瀬川です。


 クラウドゲート(株)さまの運営する「キャラコミュ」に、2014年1月に掲載した作品です。

 十二支ネタではなく新年のトピックス(サッカーのブラジルワールドカップ開催)を盛り込んだ年賀小説でした。そういえば昨年も一応年賀小説書いていたのだなぁ、と改めてこちらにもアップ。

 それはそれとして、ちっちゃくて胸がぺたんこでミニスカなボクっ娘、コクリちゃんは相変わらず受難な感じです(

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