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幼馴染のおかげで大ピンチ

なんでこうなった???


いや、原因は分かってる。分かってるけど納得いかねぇ!!!


目を開けたらここにいた。

一瞬前まで自分の部屋にいたはずなのに。


燃え盛る炎、すえた何かが燃える匂い。意味の解らない怒号や悲鳴。考えてる暇と余裕はない。裸足だから足の裏がジリジリと熱い。それでも逃げなきゃと本能的に思う。


どこへ?どうやって?そんなことを考える前に足を動かしていた。


あの馬鹿女っ!私の事殺す気満々じゃないかっ!!


時折、ガキーンとか、ドォォォォンとか、金属同士が擦り合わされたり、何かを破壊するような音も聞こえるけど気にしちゃダメだ。怒号の事も考えると誰かが戦ってるようだなんて気がついちゃダメだ。


とにかく、誰かに見つかる前に逃げよう。物凄く命の危険を感じる。ヤバイヤバイヤバイ、絶対にヤバイよこれ。


音のするほうを避けて、どこかに燃えていない隠れる所はないかと煙を吸い込まないようにTシャツを捲り上げて口元に当てる。この際羞恥心は忘れる。命のほうが大事!キャミソール着てるしっ!


舗装されずに土のままの地面は燃える盛る炎の影響を受けてドンドン熱くなる。どこまで走れるだろうか。


崩れ落ちる柱や、壁の間をなんとかくぐり抜けて、村なのか、町なのかわからないけれど、とにかく炎のない場所へ行こうと体を低くして闇雲に走り回る。


どう考えても、戦いの最中のだよ。ここ。

まるで中世のヨーロッパ彷彿とさせるような、町並みだ。白い土壁に木枠の窓。オレンジ色の瓦の屋根。崩れかかっているし、燃えている家のほうが多いけど、こうなる前と今の状況を考え合わせれば恐らく蓮が召喚されたという世界だろうと思う。それしか思いつかないし。日本では絶対にあり得ない。それだけが確実な事だね。


蓮の話をちゃんと真剣に聞いておくんだったと、後悔しても遅いとは思うけど、私の想像があっているなら、ここは言葉も通じないし、命のやり取りが普通に存在する世界なはずで、こんな格好の私が戦っているであろう人達の前に出るのは得策ではないと思う。あっという間に殺される自分が目に浮かんでしまう。


そんな理由で人影を見つけては反対ほうに逃げてを繰り返す内に、ドンドン炎が勢いを増していた。まずい、こんなところで死にたくない。さっきまで自分の部屋にいたはずなのに。


どうしよう、どうしよう、どうしよう。

怖い怖い怖い。


震えそうになる足を、無理矢理動かしているとどこからか子供の泣き声が聞こえてきた。


子供?こんな火の中に?


思わず立ち止まり、辺りを見回す。子供の姿は見えないけれど右の奥の建物のほうから聞こえる気がする。


この辺りには人影はない。もう、この場所に住んでいる人達は逃げたのだろうか。


自分が逃げなくてはいけないこの状況で、子供助けるの??私が死にそうなんだけど。なんて考えるまでもなく、泣き声の方へと足を進めていた。


しばらく進むと井戸のようなものがある。その裏側から声が聞こえて来るみたいだ。むせかえるような熱い空気の中に進んで行く。早くこの場所から逃げないと燃える家の壁が崩れ落ちてきそうだ。子供の姿を見つけた時、私の脚は動かなくなった。音が、熱さが遠退いていく。


なに?これ?


何がどうなってる???


女の人が倒れていた。

血溜まりの中に。

ピクリとも動かないその姿に、何よりも濃厚な死の気配にもう生きてはいないのだろうと思った。鉄臭い匂いが燃える何かの匂いが……………。

ドクンドクンとやけに自分の心臓の音が大きく聞こえる。

戦いの最中だろうと考えていたって、実際に目の前で人が死んでいると頭が真っ白になる。


『うわぁぁぁあぁぁん』



一際大きくなった泣き声に、ハッと現実に引き戻された。

女の人に覆い被さって揺すりながら、小さな子供が泣いてる。もう、泣いてるといより慟哭だ。心の奥から絞り出されるような、聞いているほうが苦しくなるその泣きかたに、恐らくこの女の人の子供なのだろうと思う。


バチンと、後ろで炎が弾ける。


ここにいたら確実に焼かれて死ぬ。唐突にそう思った。呆けてる場合じゃないよ。

呆けるのは無事な場所に辿り着いてからだ。

そう、気持ちを無理矢理切り替えた。じゃないと私、ここで死ぬ。

取り敢えず、井戸があって良かった。水がある筈だから。


井戸らしきものに近づいて、備えつけのポンプを見よう見まねで動かしてみる。あれだ、昭和の時代とかにあったポンプ式の井戸に似てるんだ。


水が汲み出されてきて、ちょっとだけホットした。泣いてる子供を問答無用で引き剥がして、汲み上げた水を頭からかぶせる。かなりの温度が高くなっているのか、地面から水蒸気が立ち上る。私も頭から水をかぶってTシャツを脱ぎ、子供の口に押し当てた。確か濡れた布の、ほうが効果があったきがする。あくまでもウロ覚えだけど。あぁ、学校の避難訓練をもっと真剣にやっとくんだった。ごめんなさい校長先生。長ったらしいあなたの話をちゃんと聞いとくべきでした。


暴れて女の人の方へと戻ろうとする子供を抱え上げて怒鳴った。


「死にたくなければ、大人しくしてなっ!」


ここでこの子供を、置いていったら確実にこの子は死んじゃう。連れていったところで私と一緒に死んじゃうかもだけど。見殺しにするよりは私の精神的にはいい・・・・・・・・はず??


もう、なにが正しい判断で、なにがダメな判断なのかも分からない。

体が動くままに行動をするしかなかった。


頭から怒鳴られて、驚いたのか子供は泣き止んだ。良かったよ。泣かれたままだとどうしていいのか更に分からなくなる所だった。しっかりと小さな手と自分の手を繋いでアテもなくもう一度走りだした。


このこのお母さんの事は気が引けれるけれど、仕方がない。さすがにもう死んでいると分かっている人を担いで逃げる事はできないんだから。


大人しくなった子供はキチンと着いてきている。あっちと指を差したり視線で町を抜ける方向を教えてくれるのでこの子の言う通りに進んだ。


いつまにか、金属音や怒号が消えていた。その変わりとばかりに燃えて何かが崩れ落ちる音とゴォォォォォという炎の燃える音が聞こえる。


多分、日本の家よりも燃えやすい素材で家が建てられいるんだと思う。火がドンドン勢いを増していくから。


煙があたりに立ち込めていて、目に染みる上に視界も悪い。肺が焼けるように熱い。


もうダメかもと思ったその時、目の前にまだ燃えていないおそらく町の入口だと思われる門が見えた。

門の左右は高い石造りの塀が続いている。よく見ると町を囲うように塀が築かれている。


あそこを出れば、助かる。


子供を見ると汗にまみれ、苦しそうに顔を歪めていた。

ここからならばと、門との距離を目測ではかり、走りながら繋いだ手を引っ張り上げて抱っこをする。

驚いたように悲鳴を上げたけれど、私の腕におさまった子供は落ちないようにしがみついてくれた。遠慮なく走るスピードを上げる事にする。


門の前は大通りらしく、幅の広い道になっているから炎が襲ってくる心配もない。あと少しで助かると思えばの正に火事場のクソ力だった。


門を走り抜けて、炎から少しでも離れようと距離を稼ぐ為に走るスピードは緩めなかった。

けれど、体力的にも気力的には私は限界だったんだと思う。

いくらも走らないうちにガクリと足の力が抜けて、その場にすっ転んでしまった。


子供に怪我をさせないように、咄嗟に抱え込む。


あぁ、助かった。死ぬかと思った。


荒く息を吐きだしながら、子供の無事を確認しよと体を起こした時、ヒヤリと冷たいモノが首にあたった。


無意識でソレを手で払おうとして、手の甲に違和感を感じ、次の瞬間ソコが熱くなりダラダラと血が流れる感覚と焼け付くような痛みに襲われた。ピタリと首筋にあたっているものは剣だ。そう認識した途端にアブラ汗が滲みでてくる。


『*********』


何を言っているのか分からない言葉をかけられ、驚いて顔を上げるといつの間にか男の人たちに囲まれていた。


蓮が着ていたものよりも薄汚れているけれど似たような格好をして、薄笑いを浮かべてこちらを見ている。助かったと思ったけど、全然助かってないじゃんっ!!この薄笑いは全く全然安心なんてできないよ。


まだ荒い息を飲んで、視線を男達に向けたまま子供を引き寄せ、抱きしめる。子供にもこの緊迫した雰囲気が伝わっているようで、震えながら私にしがみついてくる。男達から発せられるのは紛れもなく悪意だ。殺気とか、そういう物は分からないはずなのに、男達が私を殺そうとしていることだけは分かった。


まるでスローモーションように、目の前の男が剣を振り上げる動作が見える。


あの、剣が振り下ろされた時、私は死ぬのだろう。この、どこだかも分からない場所で。

あり得ない方法で。


振り下ろされる剣など見ることが出来なくて、せめて連れ来てしまった子供だけでも助かればいいと、庇うように抱きしめて目を閉じた。


目の裏に映るのは、高笑いと共にあらわれた馬鹿女と蓮。


そう、蓮。てめぇのせいで殺されるとかあり得ないからっ!!!



読んで頂きありがとうございます。やっと異世界到着。

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