都市散歩
この先に自分の知らない未知の場所があるとする。
すると人は二つの考えに分かれるのだ。
一つは未知の恐怖を恐れ、足を止める者。
これは社会で生きていくのには都合が良い。
社会の中に未知の場所など殆ど無い。
もう一つは、未知に興味を示し、自ら進む者。
これは旅をする者には丁度言い。
限度があるが、旅がうんと楽しくなる。
この老人がどちらかなど、言わずとも分かるだろう。
数十分後。
神々に自己紹介をした陽夜は、
その後に起こった神々の様々な質問を適当に答え、今―――――
ズズズズズズズ―――――
陽「はあ・・・・・美味い。」
都市の店でうどん(恐らく)をすすっていた。
ぶっかけうどんである。
永「そりゃあそうよ。
この店は昔からあって、かなり繁盛してるもの。」
向かい側にはお目付役兼ね案内人として付いてきた永琳が、
同じくうどんを食べている。こちらはきつねうどんだ。
永「にしても、最初に案内してほしい所が食堂だなんてねえ・・・・・」
陽「食は生き物が特に楽しみにする行為の一つじゃ。
滅多に使わない味覚を使うからな。」
永「まあ、私はよく味覚を使うのだけれどね。」
陽「うん?それはどういう?」
永「主に薬とか毒とかの研究にね。」
・・・・・それは健康上大丈夫なのだろうか。
どこかの少年名探偵より危ないのではないだろうか。
<ペロッ・・・コレハ!セイサンカリ!
陽「よく味覚が壊れないな。」
永「まあ、私は薬師もやっているからね。」
陽「『も』か。」
永「ええ。『も』よ。」
先の神殿での騒動で、永琳は月夜見尊は敬語で、
それ以外の神は普通に話し、しかも命令を出していた。
このことから、永琳はこの都市で比較的高い地位にいることが分かる。
しかし、永琳は進んでお目付役を買ってでた。
それは陽夜が興味の対象になったのか、元々そういう性格なのか。
少なくとも、ただお目付役になっただけでは無いだろう。
陽(・・・・・まあ、関係は無いか。わしはわしのまま。
疑心悪鬼になってしまったら、折角の暇つぶしが逃げてしまう。)
「さて。それでは移動するかな。案内を頼みますよ。」
永「ふふふ。分かってるわ。
・・・・・あ。」
陽「ん?」
永「・・・・・あなたお金あるの?」
陽「・・・・・・・・・」
永「・・・・・はあ。貸し一つよ。」
陽「・・・すまん。」
永琳がお目付役を買って出た理由。
一つは陽夜の警戒。
陽夜は月夜見尊をもこえる程の力を持っている。それを野放しのすることは出来ない。
・・・・・と言うのが表の理由。
一つは陽夜との関係を良いものにするため。
実は、この都市の住民や神々は、近い内にある所へ移住することになっている。
しかし、その土地は未知の場所で、何が起こるか分からない。
故に、力を持つ陽夜を引き入れるために、頭の回る永琳が付いていった。
それに、どちらにしろ地上に降りた以上、陽夜はその土地に行くか此処に残るかを
選ばなければならなくなる。此処に残るのは極少数。恐らく陽夜は付いてくる。
その時に簡単に頼みごとが出来る仲になっておきたいのである。
これは月夜見尊の策略だ。
もう一つは・・・・・永琳の単なる暇つぶし。
陽夜から面白い雰囲気がしたので付いて行ったのだ。これは永琳個人の希望。
永(まあ、面白くなるかどうかは分からないけどね。)
陽「どうした。置いていくぞ?」
永「ああ。ごめんなさい・・・ってあれ?陽夜は道分かるの?」
陽「自由気ままに進んでいれば面白い所も見つかるさ。」
永「え?・・・あ!ちょっと!勝手にふらふらしないで!」
陽「わしは都市を自由に歩ける権利をもらったんじゃ。
別に良かろう。」
永「あなたが私に案内してくれって言ったんでしょう!?」
陽「だから案内してくれ。わしの歩行速度に合わせて。」
永「小走りじゃない!あ、ちょっと待って!」
・・・・・面白い?