決着
「危なかったね。ボクは攻撃が苦手で、岩巨人を自分で倒すことはできない。でも防御は得意なんだ。」
死んだと思って閉じた目を開けた瞬間、そこには水の壁が岩巨人の防いでいる光景が広がっていた。
何時の間にか薫の隣にはリシアがいる。
防御が得意というのは本当のようで岩巨人の攻撃は簡単に弾かれているようだった。
しかし…このままではその内リシアも疲弊して防御が崩れて薫もリシアも殺されてしまうだろう。薫は覚悟を決めた。
「なぁ……今更だけど魔法幼女、になってもいいぜ?」
「本当かい?」
「このままだったら俺もお前も死んじゃうんだろ?」
薫がそう言うとリシアは満足げに頷き薫の胸辺りまで浮かび上がり右前足を差し出してきた。
多分手を合わせろと言っているんだろう。
「我、水霊王ウンディーネが分霊リシア。汝に力を分け与える者なり。」
リシアの顔つきが変わり、ウーパールーパーみたいなくせにやたら威厳がある感じになっている。
薫がリシアの右前足に手を合わせると勝手に口が動き始めた。
「我は人族の水谷 薫。水霊王が分霊リシアと契約し力を欲する者なり。」
足元に水色の魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣に川の水が吸い込まれていく。岩巨人はこの時も攻撃を続けているが、薫とリシアにはまだ攻撃は1度も当たっていない。水の障壁に阻まれて攻撃は全て弾かれている。
薫とリシアは同時に契約の言葉を告げる。
「我は契約し汝を魔法幼女とする。」
「我は契約し魔法幼女として敵を倒す。」
アニメや小説のように複雑だったり格好良い契約の言葉ではなかったが、確かに力が含まれた契約の言葉が鍵となり魔法陣に蓄積された水が薫の体を包み始める。
水は徐々に服の形になっていく。水は半透明から水色に変化していく。
体も水が服に近づくにつれて縮んでいく。体が成人の男性から小さな幼女に変わっていくのが分かる。
服が完成して薫が幼女に変化した瞬間、水の障壁は弾けるように消えた。
「……本当に幼女になった。」
声も可愛い幼女の声になっていた。
身長は本来の165cmから130cm位にまで縮んでいる。そのせいか視界の違和感が半端ない。
因みに髪は薄い水色で腰辺りまでの長さの絹のようにしなやかなストレートに変化していた。
服は水色と白のシンプルなゴシックドレスな感じ。フリルは襟や袖に申し訳程度についている。
スカートは少し短かったが、動いてもパンツは見えないだろうという絶妙な長さだ。
「少し動いてみてよ。初めは強化されすぎた身体能力に戸惑うと思うけど、そこは徐々に慣れていってね。」
リシアに言われて軽くジャンプしてみると、それだけで4m位まで飛び上がってしまった。
岩巨人は薫を追いかけてジャンプしてくる。
さっきまで死の権化、恐怖の対象にしか見えなかった岩巨人だが、今の薫にはとても小さな人形に見える。
(こんなのに俺は恐怖してたのか。)
薫が右手を川の方に向けると川の水が薫の手のひらに集まっていき、巨大ハンマーの形を瞬時に作り出した。
「マジカル☆ギャラクシーハンマー!!」
薫は自身の倍以上ある巨大ハンマーを岩巨人に叩きつけた。
水でできたハンマーは岩巨人に当たり、岩巨人を粉々に砕いていく。
「粉☆砕!!」
薫は地面に足がつく前に巨大ハンマーから手を離し水に戻す。
スタン、と地面に到着したと同時に粉々になった岩巨人をさっきまでハンマーだった水が取り囲んだ。
水は徐々に小さくなっていき、最後には手のひらに乗るくらいの大きさになった所でリシアがそれを飲み込んでいく。
「キミ、嫌がってた割にはノリノリだね。」
「……別にいいだろ。」
薫はリシアのニヤニヤした笑顔を見て、リシアの手のひらで踊らされた気分になる。
だがまぁ、それも悪くないかとため息を吐いた。