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魔法幼女

 夕暮れ時に一人の青年が公園のブランコを漕いでいた。

青年の名前は水谷 薫という。


リクルートスーツに身を包んだ彼は社会の荒波に投げ出されたものの、仕事という船を見つけることができないでいる、俗に言う就職難民だ。


薫は大学を卒業してしばらくの時間が過ぎている。

同じ時期に卒業した友人達は何かしらの職に就いているのに薫は未だにプータローだった。


自分の何がいけないのだろうと薫はブランコを漕ぎながら考えていた。

髪は染めてない黒髪だし、スーツも清潔にしている。

身長は166cmと少し低いが太ってはいないから見た目の印象は悪くないはず。

あがり症で口下手だが、面接の練習通りにはやれているはず……はずなのだ。

そこまで考えて薫はため息を吐いた。


「やっぱり口下手なのがいけないのかな。」


薫は悪い考えを振り払うように勢いよく頭を振ってブランコから立ち上がった。

もうすぐ日が完全に落ちて暗くなるだろう。

空も曇りはじめてきた。親が海外に出張しているため薫は実家にひとり暮らしをしている。

その為、雨が降る前に洗濯物を取り込まなければ地味に面倒くさい事になるのだ。

急いで帰ることにした薫は公園から出ようと歩き出す。


ガサガサ……ペタペタ


薫が公園から出る寸前、草むらから何か音が聞こえてきた。

最初野良猫か野良犬かとも思えたが、ペタペタという何か水に濡れた素足で歩いた時に出るような音も聞こえたので気になって薫は草むらの方に近づいていく。


ガサリ………


草むらから出てきたのは全身水色の何とも形容し難い形をした生き物だった。

形的にはウーパールーパーに近いが、大きさは猫程であり、よくテレビで見るようなやつよりだいぶデフォルメされているようだ。


「やあ、僕と契約して魔法幼女になってよ。」


興味半分で草むらから出てきた謎生物を眺めていた薫に謎生物は笑顔で、しかも日本語で話しかけてきた。


「ファンタジーだな。」


思わず薫がそう呟いてしまったのも仕方ないだろう。

ウーパールーパーが喋るなんて新種発見どころの騒ぎではない気がする

そんなウーパールーパーが発した言葉は薫には聞き逃せないようなセリフだった。

薫は男であり、成人している。謎生物は「魔法幼女になってよ」と言っていた。性別も年齢も合わない。


「ボクの名前はリシア、世界を支える4大精霊が一柱の水精霊さ。」


薫が謎生物の言葉に悩んでいるうちにどんどん話は進んでいた。

水精霊って、そこはウンディーネじゃないのか。と薫は思ったがウーパールーパーもどきのウンディーネはちょっと嫌な気もするので黙っている事にした。


「キミがボクの願いを聞いてくれるのなら、ボクもキミの願いを何でも一つだけ叶えてあげるよ。」


薫は何でも叶えられるなら厄介事を解決する方向にそれを使えばいいのではと思った。

多分それが出来ないからこんな話を薫に持ってきているんだろうが、なんか釈然としない。

まぁ、そんなことより言わなければいけない事がある。


「うん、その前にちょっといいかな?」

「なんていうか、魔法幼女だっけ?あの、俺は男でしかも成人しているんだが。」

「知っているよ?」


それがどうした?って感じで首を傾げるリシアに薫は少しイラッとした。

知っていて幼女という単語を使ったのは腹立たしい。

若返りと性転換を強制してくるとはふざけた精霊もいたものだ。


「キミは他の人の数十倍の魔法力を体に秘めている。それを最も効率よく使うことが出来る形態が人間でいう幼女なんだ。だから魔法を使ってもらう時だけキミをボクが幼女にするんだよ。」


薫がイライラしているとリシアが魔法幼女の事を説明してくれた。

精霊の不思議パワーで戦っている間だけ薫を幼女にするらしい。


冗談じゃない、と薫は思った。魔法っていうのは気になるが、幼女になんかなりたくはない。

それに薫にはハローワーク通いという日課があるのだ。そんなに遊んではいられないのだ。


「色々説明をありがとう。じゃあ帰れ、ゴーホーム。俺は魔法幼女にはならない。」

「何故!?」

「何故!?じゃねーよ!誰が好き好んで幼女になんかなるか!帰れ!っつーか、俺が帰るわ!」


リシアが意味がわからないといった感じで前足をペシペシと地面に叩きつけている。

願いを叶えてもらえるとかは魅力的だ。しかし、だからこそ危険な事をさせられそうだと薫は考えていた。


「一体、俺を幼女にして何をさせるつもりなんだよ。」

「闇の精霊から神の魂を取り戻して欲しいんだ。」

「そうかそうか、答えはごめんなさいだ。そんな危険そうな事は自衛隊とか警察に頼んだほうがいい。じゃあな。」


薫はそう言って洗濯物を取り込むために自宅に帰ろうする。

その時、空から何か大きな塊が落ちてきた。


ズドン!!


大きな音を立てて公園の真ん中辺りに落ちた【それ】は岩や石の集合体だった。




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