DearMyFriend
3年前も、こうして君とこの桜の木を見上げたこと、僕は覚えているよ
僕は不器用で自分の気持ちを上手く人には伝えられないけど、
今日は、今日だけは伝えたい
“ありがとう”
僕から君へ
たくさん伝えたい言葉の中の
ほんの一部でしかないけれど、
僕の気持ち、ちゃんと伝わってくれるかな?
いつもいつも、僕の手を引っ張ってくれたこと
一歩前に踏み出す勇気の無い僕の、情けない背中を押してくれたこと
僕は今でも覚えているよ
何も無い僕に、君はたくさんの宝物をくれた
なのに、貰いっぱなしの僕は
何も返してあげられなかった
そんな自分が、情けなくて、恥ずかしくて、悔しくて、
大嫌いだった
だけど、君はそんな僕の隣に居てくれた
「自分を嫌いな人間を、好きになってくれる人なんていない」って教えてくれた
君の言葉に、僕はどんなに助けられたことだろう
あの時僕は、前を見ようって、前に進もうって初めて考えることが出来たんだ
これからは、自分に・・・
ううん、僕を暗い闇の中から救い出してくれた君に向き合おうって
なのに・・・
君は僕の前から居なくなってしまった
どうして?
僕が寂しい時は、隣に居てくれるって約束したのに
君は、最後の最期に約束を破った
僕は今、とても寂しいよ・・・
隣に居たはずの君が居ないことが、とても寂しい
「あと少しで卒業だったのにね・・・」
情けないことに、僕は何も知らなかった
君が重い病気だったこと
長く生きられない状態だったこと
苦しい中で必死に学校に通っていたこと
なにも・・・なにも知らなかった、辛そうな顔を僕は一度だって見たことが無かった
友達だったのに、何一つ気づいてやれなかった
それどころか、いつも自分のことしか考えていなくて・・・
大切なもの程、失ってからその大切さに気づく
まさにその通りだ
もっと君の話に耳を傾けられれば良かった・・・
3月1日、今日は卒業式。
僕と君が通った学校の門をくぐる最後の日
「最後ぐらい、友達らしいことさせてくれよ?」
僕の手には小さな写真
君と一緒に卒業式を迎えようと持ってきた
君と僕が二人で写っている唯一の写真
「只今より、卒業式をー・・・」
「さぁ、行こうか。」
僕は背筋を伸ばし、ゆっくりと体育館に向かって歩きだす
手には一枚の写真を持って
僕の最初で最後の雄姿はたった一本の桜の木だけが見下ろしていた
完
小説と言うよりは、語りになってしまいました。
題名もDearMyFriend(友達へ)なんで、
友達に贈るささやかな手紙といった感じで受け止めていただければ嬉しいです。