エピローグ
半年が過ぎた。
目を覚ますといつものように控えめながらも柔らかい胸が目の前にある。
ジグの頭は齢二百と十五歳。二百は余分のアリアに抱かれていた。
「…」
少女特有の甘いにおいをゆっくりと吸い、ふうと息を吐くとくすぐったそうにアリアは甘い声を上げた。
「アリアー?」
アリアは起きなかった。
ジグはため息を漏らした後、自力で抜け出した。自分の頭の変わりに枕を突っ込んでひとまず退散する。
あれ以来大いなる敵は現れていない。
だが、大いなる敵というには何体もいると考えていいと思っている。
「…ジグ…ん…」
寝言でジグの名を呼んでいる。ジグはアリアを見ると枕をぎゅっと抱きしめていた。
その可愛い行動にジグはこれでも龍なんだと自分に言い聞かせた。
「おはよー…」
アリアが寝癖を作りながらジグに言う。ジグはアリアが起きるまでに朝ごはんを作っていた。
干し肉を戻して胡椒で味付けしたスープと厚めに切ったパン。そして隣の家からもらった焼いた卵だ。
「今日は豪華だな…なにかいい日でもあるのか?」
そういってスープをずずずと口にするアリア最近は温かい飲み物が飲めるようになり暖かいものがこんなにおいしいのかという感動を覚えていた。
「さあ? 何があるでしょう?」
「もったいぶらないで言え。我の英雄殿よ?」
ジグはそういわれるのが嫌いである。
「まあ後で話す。このあとちょっと出かけよう」
「構わん」
そして先に食べ終わるのはアリアの方だった。
ジグとアリアはこの国では英雄扱いだった。国を守った栄誉として不自由ない生活を送れていた。
「何をどこにいくんだ!」
「だから内緒だって」
ジグはアリアの手を握り、引っ張る。アリアは付いていくしかできなかった。
「ここだ」
そういって着いた場所はアリアと始めてあった場所だ。
「覚えているか? アリアが俺に言ったこと」
「龍との契約は結婚だってやつ?」
ああ、とジグは言う。
ジグは振り返るとポケットから小さい箱を取り出す。
「これは?」
「龍との結婚は接吻だが、今度は人間の結婚というのをしてもらう」
アリアは小さい箱を開けるとそこには銀色に光る指輪だった。
「アリアドラゴニクス、龍族の姫よ」
ジグはその指輪を取り、アリアの薬指に通す。アリアは涙を浮かべ、それを見届ける。
「俺と…結婚してくれないか?」
その返事はこの話に書く必要はないだろう。