第6話
まだ幼い子どもを残して、
男と駆け落ちして出ていってしまった母親の亡骸の面倒は、
その捨てられた子どもが、担わないといけないものなのだろうか。
母が出て行ってしまったあと、父が母の実家へおもむいたとき、
この人たちは、
寄ってたかって父を非難したのではなかったか。
母がいなくなってからの、
私たちがどんな生活を強いられてきたのか、
この人たちは本当にわかっているのだろうか。
私たちを見るたびに「ごめんね、ごめんね」と謝り続けてくれていた、
あの母の姿は真実ではなかったということか。
私たちが
父の待つ家に遺骨を持って帰るということの矛盾に、
違和感はないのか。
この人たちの主張こそ、人の道に外れてやしないか。
明日の朝、
遺体を引き取りに業者の人が来てくれると
冬弥くんからメッセージがあった。
火葬は明後日になるらしい。
叔母さんたちは、
「火葬場のほうに直接行くわね」と言って帰っていった。
私と妹は、母の遺体とともに小さな部屋に残された。
ロウソク立てや、
香炉などの簡単なセットが、ベッドの前に据えられてあって、
念のため線香の火は絶やさないように気を付けていた。
ぽつりぽつりと、
近所の母の知り合いの人が、線香をあげに来てくれた。
まったく知らない人ばかりだったが、一応、挨拶だけは行った。
それで少しは、
自分がこの人の娘だという実感がわいてきたというくらいのものだった。
それでも8時を回ると、弔問客もピタリと来なくなった。
それから私たちは時間が過ぎていくのを、
なんとなく持て余した。
そういえば、
朝からほとんど何も口にしていない。
そしたら急に、お腹が鳴った。
この周辺のことはまるでわからないが、
道中を思い返したところで、適当な店は見当たらない。
このあたりの人はどこで買い物をしているのだろう。
東京駅あたりで何か仕入れておくべきだったと後悔した。




