第5話
開けっ放しの扉から、
声の大きながさつな感じの男が、
ずかずかと部屋の中に入ってきた。
ずっと冬弥君のことを考えていたので、
一瞬冬弥君かと思ったが、
こんな品の無い男のはずがない、と思った。
男は叔母さんにぞんざいに挨拶をしたあと、
派手な女性に甘ったるい声で、
「なんども電話したのにい」と言った。
派手な女は、
急にくねくねと身体をヘビのようにくねらせながら、
男に微笑み返した。
どうやら男は叔母さんの息子のようだった。
そして、どうみても男よりかなり年上のこの派手な女は、
男の嫁のようだが、
叔母さんとは年が近いせいか、よく気が合うらしかった。
「紗綾ちゃん、どうする?」
全員揃ったところで、
と断ってから、叔母さんは改まって聞いた。
「どうするって?」
叔母さんの言う意味がわからない。
「だって、あれでしょう。
お母さん、このままにしておくわけにはいかないでしょう。
お葬式っていうか、
火葬やなんかは、役所の人かなんかがしてくれるらしいからいいけど、
そのあとの………なんていうか、
遺骨とか、お墓とかそういったこと」
「はあ」
なるほど、と思った。
「だって、あれでしょう、
山に撒いてくれとか、海に撒いてくれとか、
本人は言ってたけど、
本当にそうするわけにはいかないでしょう」
「それに、冬弥君は他人なわけだし、
あの子に任せるのも人の道にはずれるしねえ」
叔母さんは、思いついたことを思いつくたびに、
だらだら話し続けていた。
でも確かに、
今まで、母が死んだ時のことなんて考えたことがなかった。
「そうでしょうけど、でもそれを私が、なんとかしなくちゃいけないというのが、
理解できないんですけど」
自分が思っているいじょうに、声が震えてしまった。
私は、情けないような腹が立つような気持ちになって、
涙が溢れそうになったが、
しかし、絶対に泣くもんかと必死でこらえた。
「だって、親なんだからしょうがないじゃないか」
男が、がらがらした声で言った。
親だからしょうがないっていうのは、理由になるのだろうか。
私にはよくわからなかった。
「うちは、だって一緒のお墓に入れるわけにはいかないし、ねえ」
叔母さんは、なんとかこの面倒な事態から逃れる理由を、
必死で探しているみたいだった。




