第21話
叔母さんに
タクシーを呼んでくるからと言われて、
大きな骨壺の入った木箱を
膝にのせたままタクシー乗り場のベンチに腰かけていると、
ロータリーの向かい側にマイクロバスが到着して、
ぞろぞろと
喪服の団体が降りてくるのが見えた。
全員が勢ぞろいしたところで、
僧侶を先頭にして葬送の列が厳かに通過。
一番前の女性がうつむきながら、
遺影を抱きしめる。
あの遺影の人は、
こんなにも多くの人に見送られて逝く。
それに引き換え、
母はなんと憐れなのだろう。
ちゃんとした式もあげてもらえず、
厄介者扱い。
母の人生とはいったいなんだったのだろう。
「お母さん」
私は思わずそう呟き、
骨壺を抱きしめていた。
大き過ぎると思ったが、
抱きしめるには丁度良い大きさだ。
そして今更、
涙が溢れだした。
泣いているところを
誰にも見られたくはなかったが、
情けないことに
自分の意志ではどうにも止めることはできなかった。
ときおり、
平野からふきあげる秋風が、
まだ遠いはずの冬の匂いを連れてくる。
ここからは見えない芒の原が深い闇となって私を呼ぶ。
それは少し母の声に似ていた。
「お母さん、一緒に帰ろう」
私はもう一度、掠れた声で呟いた。
叔母さんたちは駅まで送るよと言ってくれたが、
荷物を残したままだったし、
冬弥くんにもお礼を言わないといけないからと、
またあの部屋に戻ってきた。
冬弥くんは
がらんとした部屋で、母を待っていた。
「お母さん、こんなんになってしもたわ」
骨壺をちゃぶ台の上に置く。
冬弥くんはお疲れ様と誰にともなく声をかけて、
少し笑った。
「あのさ、開けていい?」
冬弥くんの細く長い指で骨壺に触れる。
愛おしそうに優しく。
「いいよ。見てあげて。
真っ白な綺麗なお骨やったよ」
妹が躊躇なくそう言って、
骨壺を開けるように促した。
冬弥くんはほっとしたように、
風呂敷を外し、木箱の蓋を開ける。
そしてひと息ついてから、
骨壺の蓋をそっと開けた。
その一連は
厳粛な儀式のようで、
私など踏み込んではいけないような、
見ることも許されないような、
神聖な行為だった。




