表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日ぶん、歪んだ月  作者: 宝や。なんしい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

第2話

冬弥(とうや)君は、

母との生活の中で自分の痕跡を絶対に残さない。


千葉の家へ何度か遊びに行ったことがあるが、確かに誰かと住んでいるような形跡はまったく見当たらなかった。

私たちが行くと、

遠慮してまったく姿を現さなくなってしまうため、

ほんとうにこの世に存在する人間なのかと疑ってしまうことすらある。


母の夢物語に出てくる、架空の少年ではないのだろうか。

そんなことを考えることもあった。


そんな時、私は妹に、

「冬弥君って、ほんとうに現実にいるの?」


と訊いてみるが、

妹はずっと昔に会ったことがあって、


冬弥君の実物を知っているので、私のこの途方もない不安定な気持ちには、

まったく理解がない。


「いるよ」


 妹の応えはいつも端的で、みもふたもない。


すでに職場に向かっていた妹を呼び戻して、大慌てで新大阪から新幹線に飛び乗ったが、

東京に到着したのは、それでももうお昼を過ぎていた。


そこから総武線で千葉の姉ヶ崎へと向かう。


あまり行くことはなかったが、母がいなくなったら、ここに訪れるのはこれで最後になるだろうな、というようなことをぼんやりと考えていた。


車窓からは、ススキの原っぱがどこまでも広がっているのが見えた。


なぜか、母のイメージとぴったり重なっていく。


そしてそれは、時々私が見る夢と同じ風景だ。

なんにもなくて、私だけがそこにポツンと立っていて、


ただひたすらに何かを迷っている。


なんの起伏もない夢だが、いつも怖くてしょうがなくなって、

必ず途中で目が覚めてしまう。


妹はどんなときもよくしゃべるが、

さすがに慎重な面持ちで、電車の中ではやたらと大人しく静かにしていた。


その姿は、わざとらしく悲しんでいるようにも見えたが、

特に話すこともなかったし、

私のほうも、本を読んだりスマホを触ったりしながら、ただ漫然とその時間を過ごしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ