第12話
「さすが、冬弥くん。
ありがとう」
うまく機転を利かしてくれたおかげで助かった。
実の妹の死すら金にしか見えていない魑魅魍魎に、
大切な形見を奪われなくて済んだ。
「でもこのお金は、
冬弥くんがもらってくれたらいいから。
今までもお母さんのためにお金使ってるやろ」
以前、
母がまだ元気だったころ話していたことがあった。
もし自分に何かあったら、
少しでもいいから冬弥くんにもお金を渡してあげてほしいと。
遺産相続なんてたいそうなものをあんたたちにも遺してあげられないけどって。
「もしよかったらで、いいんだけどね。あの子にも遺してあげたいのよ」
そして少女のように「私の、気持ちなのよ。ごめんね」
と、はにかんだ。
母の遺産などまるで期待してなかったが、
変に謝られると複雑な気持ちにはなる。
「おれ、いらねえから」
「そういう訳にはいかへんのよ。
これは母の遺言。
そんなたいした額じゃないし、
気にせずもらってやってよ」
冬弥くんは少し困った顔をしたあと
「まあ、それじゃ」と言ってから封筒を受け取って
「今回の病院とか葬儀とか支払いが色々あるんで、
それを支払ったあと、残ったら返すよ」と言った。
あまりにもかたくななその様子は、
母の言うかわいそうな子として生きてきた冬弥くんの
人生が透けて見える。
人を信じることから逃れようとしているような、
誰に対しても
期待しないしされたくない、
小さな箱にとじこもっている冬弥くん。
いったい
どんな人生を歩んできたのだろう。
そして母は、
どんな風に
このかたくなな冬弥くんに寄り添っていたのだろうか。




