第4話 庁内の過激派
# 《推し変誘導士は推し変できない》
## 第4話 庁内の過激派
【2025年11月26日 午前4:12 信仰値:10億0000万0000】
危険水域突破からちょうど17時間12分
世界の平均年齢が、昨日比で-4.8歳まで低下
ミコ・エターニティの権能「永遠の17歳」は、もはや止められない
推し変庁本部・地下3階 緊急対策室
巨大モニターは真っ赤な警告色。
世界各地で「若返りによる社会機能停止」が発生中。
病院は17歳の元老人で溢れ、
学校は逆に空っぽになった。
霧島主任の声は、もう叫びだった。
「白崎君!! 今すぐ!! 今この瞬間!!」
「ミコ・エターニティを消して!!」
零は、無言で銃を握りしめる。
指先が、震えている。
その瞬間。
――建物全体が揺れた。
【緊急警報・最高優先】
エターナル・ワン 総勢87名、本部に突入
目的:白崎零の確保およびミコ・エターニティへの献上
廊下のモニターに映った信者たちは、
全員がミコのピンクのリボンを首に巻き、
涙と笑顔で叫んでいる。
「零くんはミコ様のものだ!!」
「永遠の17歳を、世界に!!」
零は、一人で廊下に出た。
銃口を下ろしたまま。
先頭の女信者が、泣きながら駆け寄る。
「零くん……やっと会えた」
「ミコ様が、毎晩毎晩、零くんの名前を呼んで泣いてるの」
「もう逃げないで……一緒に永遠になろう?」
零は、静かに首を振る。
「……俺は、まだ」
「ミコを、消したくない」
女が、狂ったように笑う。
「だったら、死ねばいい!!」
強制信仰注入器 最大出力 10本同時。
零の体に、針が突き刺さる。
――ズキン。
世界が、真っピンクに染まった。
頭の中に、ミコの声が降り注ぐ。
『零くん……大好きだよ♡
もう、離さない。
永遠に、永遠に、永遠に……』
膝が崩れる。
視界が歪む。
心臓が、ミコの名前だけを刻み始める。
女たちが、零を抱き上げる。
「ミコ様の元へ――」
その瞬間。
銃声。
霧島主任が、零の額に銃口を突きつけている。
「白崎零……ごめん」
「あなたが消せないなら、
私が、あなたごとミコを終わらせる」
引き金に、指がかかる。
零は、ゆっくりと顔を上げる。
涙が、一筋だけ流れる。
「……主任」
「俺は、まだ」
「ミコを……消したくない」
主任の指が、震える。
エターナル・ワンが哄笑する。
「撃てばいい!! 零くんも一緒に死ねば、完璧な永遠だ!!」
静寂。
次の瞬間。
零の端末が、勝手に起動。
ミコ・エターニティ 全世界同時緊急配信
視聴者数:79億8921万4417人(人類の99.86%)
画面の中のミコは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、
それでも優しく微笑んでいる。
『みんな……ごめんね。
零くんが、来てくれないから……
私、もう限界かも』
『でも、最後に一つだけ。
零くんを、責めないで。
零くんは、私の……最初で最後の、純粋な信者だから』
『だから……
零くんが選んだ未来を、
私は受け入れるよ』
『さよなら、じゃないよ。
ありがとう、零くん♡』
配信が、終わった。
主任が、銃を下ろす。
エターナル・ワンも、膝から崩れ落ちる。
零は、ゆっくりと立ち上がる。
肩から10本の注入器を、一本一本引き抜く。
血が滴る。
でも、零は笑った。
初めて、本当に笑った。
「……ミコ」
「俺は、まだ」
「君を、消したくない」
でも、知ってる。
あと数時間で、
この世界は、永遠の17歳で終わる。
零は、一人で歩き出す。
行き先は――
ミコ・エターニティの配信スタジオ。
自分で、
自分で終わらせるために。
背後で、主任が呟く。
「……白崎零」
「あなたは、本当に……
最悪の、最強の信者だ」
第4話 終わり。
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次は第5話「神の密売市場」




