【最終回】 卒業そして未来の章へ…
さて、記念すべき70話。吹奏万華鏡最終回です。
これまで読んでいただきありがとうございます!
あの打ち上げの日に言われたことを、僕は忘れられない。想大君の放ったあの言葉……。
「うーっ!」
優月はチャイムの音で目を覚ます。
「優月、授業だよ」
そう言ったのは、担任の若村だ。
「…では、教科書102ページ」
優月は軽くなった瞼を擦る。何故か、もう眠ろうとは思わなかった。
「優月君が寝るなんて珍しい」
隣では、小林想大がそう言っていた。
6時間目さえ終われば、放課だ。だが、今日は生憎部活がある。
優月と想大はそれぞれ音楽室に向かう。
「優月君、結局、演奏会でドラムやらせてもらえなかったね」
想大が残念そうに言う。すると優月は、コクリと頷いた。
「まぁ、2年になったらできるって言ってたし、それまで待つしかないね…」
その時、優月の声色が重々しいものへと変わる。
「ねぇ、想大君、打ち上げの帰りに言った話、本当なの?」
その問いに想大が頷いた。
「うん。俺、吹部辞める」
その言葉には絶対的な決意が裏打ちされていた。
退部。そして退部者が続出するのだ。
東藤高校吹奏楽部は、テスト期間が終わると、顧問である井土に招集された。
今日から卒業式に向けての練習だ。
井土が束になった楽譜を掴むと説明を始めた。
「さてー、卒業式の曲ですが、入場曲、国歌、校歌、そして退場曲です。それと申し訳無いのですけど、この人数となると、楽器の運搬が非常に困難なので、入場曲のティンパニは無くなりました」
えぇ、そう言ったのは優月だけだった。鳳月ゆなは面倒臭がりで、楽器の運搬を手伝わないので、何とも思わないのだろう。
今までは、朝日奈向太郎というティンパニひとつを1人で運搬できる部員がいたが、彼は卒業式の主役だ。そうはいかない。
だから、井土はその状況に見かねたのだろう。
「それと、今年度中に退部する予定の人は、来週までに連絡するようにしてください」
そして彼が言うと、部員たちから声が沸く。
「えっと…どういうことですか?」
優月が質問をする。すると、
「特に2年生に多いのですが、大学に進学する子は、ほとんどこの時期に辞めてしまうんです」
と答えた。
果たして、この時期に辞める部員は、あの人含め、何人出るのだろうか?
「では、楽譜を配ります」
そう言って、各パートに楽譜が配られた。
優月は結局、シンバル、グロッケンだった。すると、井土が「退場曲です」と最後の楽譜を前に出す。
「今年は選びに選びまくって…スピッツの空も飛べるはずを選びました」
すると菅菜が「ズコー」と言う。この曲は皆、初めて演奏する。だがこの曲は、確か…
「空も飛べるはず…って、朝日奈、好きだったなぁ」
ゆなが懐かしそうに言う。
「ええ。ですから、彼らにはシークレットサプライズです」
「つまり、秘密のサプライズってことね…」
想大がそう言うと、井土がうん!と頷いた。
「さてー、ゆゆー!」
その時、不意に井土が優月を呼び出す。
「ひゃ!はい!」
優月がそう返事する。するとクスクスと笑い声が聴こえてくる。
「ゆゆは、ドラムやってくださーい・ネ!」
するとそう言って、優月に井土は2枚の紙を手渡した。
その左上にはDrumsと書かれていた。
「えっ……!?」
優月は衝撃で体が硬直する。まさか、卒業式にドラムを演奏できるとは。
優月は今まで、『ドラムをやりたい』とは進んで言ったことがなかった。何故なら、他の打楽器を演奏することも大好きだから。
「いっつも、あの黒ドラムで叩いてるから、できるでしょう?」
確認するように言われると、優月は「はい!」と頷いた。
「だから、鳳ちゃんは、グロッケンシュピールをやってください・ネ!」
「良いけど、何で語尾にネ!?」
そう言ってゆなは、グロッケンの楽譜を受け取った。音階はピアノと同じだ。
それにしても、ゆなは駄々をこねなくなったな、と優月は思った。きっと成長だろう。
「あっ!でも校歌はドラムでリズム取ってもらうから!」
井土がそう言った。
「では、5時から合奏!初見大会です!略して誤解」
そう言って、彼は音楽準備室へ入っていった。
…とこうして合奏練習が始まった。
「あの、タム回しがバカみたいに多いのですが…」
ゆなが不満そうに悲鳴をあげながら、ドラムを打ち込む。
そして優月もドラムを練習し始めていた。
「…この☓って入っているのが、ハイハットか。真下の音符がバスドラ。そして、中間辺りに浮かんでいるのが…」
優月はドラムスティックを、スネアに、ぱん!と叩きつける。
「スネアか」
優月は左手にスマホを乗せ、ひとりドラムの練習を始めていた。
まさか、1年生の時からできるとは…。
すると、ホルンを手にした想大が、右手でひらひらと手を振ってきた。
「良かったねー」
彼がそう言うと、優月はうん!と頷いた。
今、卒業式でドラムを叩けることが嬉しいんだ。
そうして、合奏になった。
「さて、初見大会です。3年生は居ませんが、初々しい気持ちで頑張っていこう!」
「略してサンバ」
すると、井土を先回りして、心音がそう言った。
「いや!うまい!」
そこにゆながそう言ってきた。
「心音!君を略称大臣に任命する!!」
ゆながそう言うと、
「いらねーなーぁ!」
と心音は突っ込んだ。すると、アハハハ…と学年問わず笑い声が響く。
「アハハハ…」
優月も笑ってしまう。やはり、ゆながいると、空気が緩む。
「はいはい!合奏しますよー!君たちー」
「略してハガキ!」
再び心音がそう言った。井土は微笑すると、右手を前に出す。
「では、まずは威風堂々から!」
すると、黒嶋氷空のトランペットが高鳴る。彼女の音に連動するように、他の楽器も入ってくる。
茉莉沙もトロンボーンのスライドを引き、音を出す。一方の優月は井土の合図通りに、シンバルを打ち鳴らす。ばしぃーん!と少し抜けた音が響く。ゆなはスネアドラムをロールする。細かい音が辺りに散らされる。
ひとまず吹くと、井土の指導が始まった。
そして国歌、校歌の合奏を終え、いよいよ退場曲になった。優月はいつも練習しているドラムとドラムスティックを前に深呼吸をする。
そして、曲が始まった。
ド…ドドン…と地を這うようなバスドラの音、そしてスネアのぱぁんと弾けるような音が響く。
この時間ばかりは、とても楽しいな、そう思った。
だが、現実は非情だ。
「小倉君、ハイハットを振りすぎです。あと途中でテンポがズレてます」
やはり井土には、こう注意された。
「あ、すみません…」
優月は肩をガックリと落とした。出来ていたつもりだったのだが、まだまだみたいだ。
「でもまぁ、初見にしては、上手いですよ」
井土が褒めると優月は「は、はい」と笑ってしまった。何だか、彼に褒められるのは悪くない。
その日の帰り道。
「何だか、3年生抜けても、元気なままだったな」
想大がそう言ったのは、帰りの列車の時だった。想大は時間ギリギリまで井土と話していて、駆け込み乗車だった。
「そうだね。心音さんも凄い喋るようになったし」
優月も、どこか嬉しそうだった。
「でも、とりあえず、ドラムの任命、おめでとう!」
「うん!」
優月は憧れのドラムが任命されたことが、嬉しかった。今まで続けてきて良かったな、と思えた。
「最後の最後で、優月君のドラムと俺のホルンが合わさるのかぁ」
想大はそう言ったが、余りにも小さな声で優月には聴こえなかった。
そして数日後。体育館裏の2階で、楽器の運搬が始まった。
「鳳月ぃさん!」
初芽がドラムを持って、恨めしそうに顔をしかめた。すると、そこに菅菜が寄ってくる。
「休んじゃった子のことを考えても、仕方ない!ドラムは私が運ぶよ」
「ありがとう!」
中学生時代、菅菜はゆなの面倒をたくさん見ていたので、彼女の性質は理解している。恐らく、体調を崩したのでは無くわざと休んだと。
向太郎が居なくなった穴は、想像以上に大きかったようだ。
「…はぁ」
そう思うと、初芽は大きなため息が出た。
その頃、優月がゆなに代わって、ドラムセットを設置していた。
「ゆゆー、この小太鼓、どこに置けばいい?」
すると優月は、サスペンドシンバルを下ろし、
「それはね、左だから、もう少し奥」
と言った。その指示を受けた心音がスネアドラムをマットレスのやや左側に置いた。
「おっけー!ありがとう」
優月はそう言って、シンバルを置いた。
「小倉君、これは?」
すると、今度は菅菜が、バスドラムとタムが取り付けられている本体を持ってきた。重そうなのに何ともなさそうな彼女を見ると頼りがいがある。
「あ、それは真ん中なので、スネアよりやや奥の真ん中に置いてください」
「分かった」
そう言って菅菜はドラムを置く。その後はハイハットシンバル、フロアタムなどの必要な楽器は全て優月自らが設置した。
「これでOKなの?」
初芽がそう訊ねると、優月は「OKです!」と言った。何だかいつもより気が楽だった。
優月は紺色のドラムセットを前にスティックを構える。このドラムを使用するのは随分と久しいが、今日はゆなが居ないので、好きなだけ叩くことができる。
優月はスティックを振り下ろし、シンバルを鳴らす。パシィーン!!と大きな弾ける音が響いた。そして優月はハイハットシンバルを右手のスティックで打つ。そして右足でバスドラムを打つ。ペダルを踏むことによって、ハンマーのようなビーターが跳ね上がり、大きな太鼓の皮を打つ。
ど…どどん…ど…とどん!と正確に響く。
そうして夢中で叩くこと、約30分。ようやく井土が来た。
「さて、卒業式まであと1週間を切りました」
井土は合奏前にそう言った。
「それでは、まずは国歌から」
そう言うと、楽器を構える。優月もシンバル2枚を手にする。
すると、管楽器の音が響く。そして井土の目配せに合わせて、優月もシンバルを打つ。
バシィーン…!
大きな音が体育館で弾ける。
そして徐々に管楽器隊の音が消えていく。やはり颯佚のサクスフォンが1番よく響いていた。
「はい!それでは次!空!」
その時、黒嶋氷空が自分を指さす。
「えっ?私!?」
氷空がボケることは想定外だったのか、井土のみならず、想大やほのかも笑ってしまった。
「ち、違うよ。氷空ちゃぁん」
ほのかがそう笑いながら言うと、
「あ、そっか」
と氷空は言った。
こうして、合奏を終え、5時30分。ようやく合奏が終わった。
それでも、優月はドラムを居残り練習をしていた。だが、これはいつものことだ。部員が全員帰った日だけ、特別に指導してくれる。
茉莉沙がトロンボーンケースを仕舞う時間になっても、優月と想大は練習をしていた。一方の井土は何かの書類を見ていた。
優月のドラムと想大のホルンが重なる。こうして一曲を2人でデュエットするのは初めてだ。
その時、
「ゆゆ、ちょっといいかな?」
井土が背後にいた。優月はビックリしながらも、ドラムから少しだけ離れる。
「ここはね、ド…ドドン!じゃなくて、ドド…ドン!だよ」
「は、はぁ」
すると井土が何度か、お手本を見せてきた。やはりら彼は凄いな、と思う。恐らく手数と知識なら、ゆなや茉莉沙に並ぶくらいだろう。
優月は、彼の過去について、少しばかり気になった。
「あとね、タムを叩くタイミングが少し早いね」
「えっ?」
そう言うと井土は、イントロの最後を叩く。ドコ…ドコ…ドコとくぐもった音が聴こえる。この音が優月は大好きだ。
「やってみて」
「はい」
こうして、優月の反復練習は、卒業式本番まで続いた。
そうして本番の日。
いよいよ、卒業式が始まった。威風堂々、国歌、そして式典に東藤高校校歌を終えた。
『卒業生、退場!』
ついに退場曲『空も飛べるはず』だ。
優月は今までの努力を思い出す。遅くまで残って、練習した日もあったのだ。
深呼吸したその刹那、優月がシンバルを打つ。
そしてエイトビートを刻む。そんな音に管楽器もついて行く。
ドコ…ドコ…と優月がタムタムを叩くと、メロディーが少しばかり大きくなる。頼りになる低音がいなくなってしまったのは悲しいが、それでも演奏は安定している。
ちなみに、井土は、退部してしまった澪の代わりに、ギターを弾いている。本当に何でもできるな、この人、という優月の中での評価は、全く変わらない。
タタン…ドコ…ドコ…
サビに入ると、殆どの楽器が音を奏でる。ゆなもマレットを転がすように打ち、甘い優しい音楽が卒業生の耳を突く。この雰囲気がいつまでも続くことを誰もが祈るくらい、よい演奏だった。
だが卒業式が終わってからも、吹奏楽部の責務は終わらない。
楽器の運搬だ。
「ゆなちゃんはグロッケンの脚をお願いね!」
「じゃあ、菅菜が鍵盤持たないと運べないじゃん!」
菅菜とゆなが仲良さそうに、楽器を運ぶ。
「全く、私がいなくなったらどうするの?」
「そしたら、ちゃんとやるかも」
「本当?」
「てか、辞めるの?」
ゆなが聞くと、
「…」
菅菜は黙り込んだ。しかし、体育館を出ると、再び別の話題で盛り上がっていた。
優月たちも楽器を運ぶ。地道に運ぶこと30分。ようやく合奏の運搬が終わった。
「うー!終わったね!茉莉沙」
初芽が椅子に座り、そう言うと、「ですね」と茉莉沙は頷いた。
「…本当、やっとヅラが脱げる…」
そう言って、むつみは地毛である白い髪を露わにした。
「やっぱ、むつみのその姿、本当いいな」
「そりゃ、地毛だから」
むつみはアルビノ体質だ。そして瞳は親から受け継ぎ、紅い。
「想大君、終わったね」
優月がそう言うと、想大は「だな」と頷いた。
「あと、優月君、ドラムカッコよかった!瑠璃ちゃんみたいに」
すると彼はそう言って、素直に優月を褒めた。
「えっ?古叢井さんと比べるの?」
「おう」
何だか、嬉しい!そう言うと想大は優月に抱きついた。
「いやー、すげー良かったから!」
「えへへ…」
その時、2人の親友関係を目の当たりにした誰かが、クスリと笑った。
「想大君、元気にしてる?」
「…あっ!周防先輩!!」
そこにいたのは、周防奏音、朝日奈向太郎だった。
「先生〜」
すると、涙ぐみながら向太郎が、井土に駆け寄る。
「は、はい?」
「俺の好きな曲、吹いてくれて、ありがとぉございましたぁ〜!!」
目元が真っ赤だ。相当泣いたのだろう。
「いやー、気づいてくれて良かった」
すると井土は満足げに頷いた。そして
「…差し入れ持っていつでもおいで」
と優しい声で言った。すると、それにつられて、
「はい!」
と向太郎は頷いた。
(今、一言余計な文字が入っていたような?)
優月は咄嗟にそれに気づいたが、向太郎は気づいていないようだ。
すると、
「わぁ~い!差し入れだぁ!」
ゆなが両手を上げて、わざとらしく喜んだ。もうもらった気でいるらしい。
その時、向太郎の声色が変わる。
「と、ところで井土先生、今年度で退部しちゃう子は何人くらいいるんですか?」
「ああ、奏澪さんが辞めちゃったから、まず1人。あと、春休みまでに辞めちゃうのが、あと2人かな」
「へぇ…」
すると井土が2人の退部者を、コショコショ話で口にする。すると向太郎の顔色が青ざめる。
「…え!?意外!!」
「もう受理してるよ」
先回りのように言われた向太郎は、心の底からこう思った。
(来年からはやばいな)
卒業式から数週間後の春休み。
今年度最後の部活の日だ。
「さてとー、次は点描の唄やりますか!」
「先生ー、もう12時でーす」
井土とゆながそんなやりとりをしている。
「えー!ゆゆにドラムやらせたいから、我慢してー」
「…はぁ」
ゆなは仕方なさそうに頷いた。
あれから、優月は2曲ほどドラムの楽譜を配られた。まだ発展途上中だが、たゆまぬ努力で何とかするしかない。
こうして、最後の合奏を終えると、今年度の部活は終わりになった。
「さぁ!来月からは忙しくなりますよ!そして次の部活で、新部長、新副部長を発表します!雨久さんが決めたので、文句はなしです!以上!」
そう言って、解散になった。
ゆなはいつものように、スマホゲームを片手に笑っていた。その時、齋藤菅菜がゆなに話しかけてくる。
「ゆなちゃん…」
するとゆなが「何?」と顔を上げる。
「ゆなちゃん、私ね、吹奏楽部…辞めるの」
その言葉でゆなの瞳が、今までにないくらい大きく開く。
「は?どうして?」
茉莉沙に憧れる彼女が、吹奏楽部を辞める理由が分からない。
「私、大学行くって進路決まったから。このまま吹奏楽部続けてたら、テスト追いつけるかも分からないから」
それと…、と菅菜は残念そうな目をする。
「多分、今後の演奏会のスケジュールが合わなくなるかもしれないの」
「模試で?」
「いや、塾で」
塾か…、とゆなは苦い言葉を口の中で転がした。
「…だから、ゆなちゃんにお礼を言いに来たの」
「…えっ?」
「こんな私と一緒に居てくれてありがとうね。今度は客として応援するから…」
それだけ言って、彼女は音楽室を出ていった。
こうして、テナーサックスパートの齋藤菅菜は、進路を理由に、この部を去った…。
一方、優月はドラムを練習しているところを、想大に話しかけられる。
「優月君、そろそろ帰るかー」
「ああ。そうだね」
「もう音楽室来れなくなっちゃうのか」
想大は諦めたように肩を竦める。
「ホントに退部するんだね」
「ああ。アルバイトをする上に美術を本格的に学ぶんだったら…な」
「そっか、今まで付き合ってくれてありがとう」
すると想大が「違う」と首を横に振る。
「今まで俺と付き合ってくれてありがとう。同じ部活でこうして見守れたのが楽しかったから。それに、最後に、優月君のドラムと演奏できて本当に良かった。優月君は辞めないで頑張ってな…」
その言葉には、優月への親友としての想い、そして優月の今後を案じた言葉だった。
彼の感謝の言葉に優月は頷いた。
「じゃあ、帰るか!」
「おう!」
そう言って、ふたりは音楽室を出ていった。
優月の親友である小林想大。彼も今後を見据えての理由で、退部した。
こうして更に、ふたりの大切な部員がいなくなっても、無慈悲に4月はやってきた。
「…はぁ、次は入学式かぁ」
優月は颯佚と話していた。
「そうだな。優月君の親友、想大君も辞めちゃうとは思わなかった」
「うん。僕も打ち上げの日にそれを聞いて、すごい驚いた」
「でも、まぁ、俺等たちは、引退まで生き残ろうな!」
「うん!」
優月はそう言って、大きく頷いた。
しかし、この1年間。
これまでに無い試練が待ち受けているとは、この時の優月は、全く考えていなかった。
吹奏楽部。
何もコンクールだけが吹奏楽部じゃない。
きっとこの部で生きていくには、必要な言葉だろう。
そして、東藤高校の吹奏楽部は、優月たちを巻き込み、次なる世代へと続いていくのだ…。
【完結】
読者様へ
吹奏万華鏡をご愛読いただき、本当にありがとうございました!
これにて完結となります。
続編である吹奏万華鏡2は、ただいま執筆中ですので、お楽しみにしていただけると嬉しいです。
主人公でもある小林想大は、今後の展開を見据えての判断にて退部という決断を下しました。彼の活躍を見たかった皆様は非情に申し訳ございません!
さて、続編の吹奏万華鏡2も宜しくお願い致します!




