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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]入部&春isポップン祭り編
7/173

茂華中学校 ティンパニと恋の章 [後編]

この話は、6章の続きです。

古叢井瑠璃と榊澤優愛の過去編になります。

「古叢井瑠璃さん…、いろいろあったね」

その時、優月は明日の学校の用意を終えたところだった。

「…ティンパニ破壊した事もあったんでしょ」


優月もこれは、後から先生から直接聞かされたことだ。


ー1年前(令和5年度)ー

『…絵の写真、何にした?』

『やっぱり、校舎かなぁ。小倉君は?』

その日は、優月と想大は、宿題の写生の為に写真を撮りに外へ出ていた。 

『…そういえば、さっき、優愛ちゃんに会ったぞ』 

その言葉に優月は『ああ…』と頬を赤く染めた。 

『…この前さ、誰かから聞いたんだけどさ、優月君って、優愛ちゃんの事好きなの?』

『…えぇ!?』

誰がそんな事を言ったんだ?

優月はしどろもどろになってしまった。


実は、優月と想大と優愛の3人で遊んでいたこともあった。

優月と優愛がサッカーやバスケをしていると、想大がよく入ってきたものだ。



『…誰がそんなことを言ったのよ?』

『…いや、堀田君から』

『俊輝君から!?』

その堀田俊輝(ほりたとしき)は、吹奏楽部の部長だ。

彼は、部長というだけではなく、情報通でもある。どこで嗅ぎつけたんだか…?


『まぁ、2人とも、LOVE"LOVEだもんな』

すると、優月は不満気な顔をして

『そんなことないよ。部活で忙しいって告白してないのが現状だけどね』

『…ってことは、好きなんじゃん!!!!』

想大が叫んだ。

『おい!』

優月は恥ずかしくなって、想大の肩を揺らした。

『…絶対に言わないでよね!』

『…お、おお…』

彼の剣幕に思わず、想大は首を縦に振った。



それから数分後、写真を撮り終えた2人は、美術室へ戻るべく、廊下を歩いていた。

『…いい写真が撮れたよ』

『引退前最後の作品だからね…。頑張らなくちゃ』


すると、先生2人が何やら作業をしていた。

『こんにちは』

想大が挨拶すると、優月も『こんにちは』と会釈した。

すると、先生2人も『こんにちは』と返してきた。

そこにいたのは、茂華中学校吹奏楽部の笠松明奈

(かさまつあきな)と副顧問の中北楓(なかきたかえで)だった。


『何をしてるんですか…?』

気になった優月が訊ねる。何やら、分解をしているようだ。

『…ティンパニの分解だよ』

中北がそう答える。


床には銅の延ばされた金属の板とポコポコと破れた皮があった。


明らか壊されただろう、と2人は思った。

『…これ、壊されたんですか?』

想大がそう言った瞬間、背後から悪寒が襲う。

『…なに?』


想大と優月は『うわっ!』と後ろを振り返る。

『…え?だ、誰?』

そこにいたのは、髪を肩まで垂らした可愛らしい女の子だった。

『私が叩いたら、こうなった…』


『あ、古叢井さん、戻ってきましたね』

笠松がそう言って、古叢井瑠璃を見る。


『…はい』

瑠璃は、暗い表情を向ける。

『…古叢井…瑠璃…』

優月が彼女の名を言うと、

『…何ですか』

とナイフの切っ先のような鋭い視線を向けられた。

少し怖い…とさえ思ってしまった。


すると、今度は先生2人が、どこかへ行ってしまった。職員室にでも行ったのだろう。


しばらくすると、想大が口を開く。

『…へぇ、瑠璃ちゃんが壊したのか…』

すると瑠璃は『…お前には関係無いだろ』とボヤく。

何かまずい…と思った優月は瑠璃から想大を引き剥がそうと、彼の肩を掴む。

『ちょっと…!小林君!』


その時だった。

『こーら!瑠璃ちゃん!』

聞き覚えのある優しい声が聴こえてくる。

正面を見た優月は硬直した。


何故なら、そこにいたのは、彼の想い人である榊澤優愛だったからだ。







部活終わり、優月と想大は、彼女たちへ謝りに、ロータリー前のベンチで待つことにした。

『やべぇー…。優月君の彼女ちゃんの後輩に喧嘩売っちゃったよー』

想大が頭を抱える。

『…ちゃんと、謝りなよね』

そんな彼に優月は、励ますようにそう言った。


すると、2人の女の子が、こちらへ向かって歩いてきた。

優愛と瑠璃。


優愛が瑠璃の肩に手をポンと置き、

『優月くん、小林先輩、さっきは…ゴメンね!』

と謝る。

『えっ…?』

優月は突然の事に戸惑う。何故、傍観者が謝られなければならないのか…?


『…いや、僕は大丈夫。こっちこそ…ごめん』

想大を止められなかった自分にも責任があったと、優月も謝る。

この2人は、仲が良いからか、秒で話しが終わった。

『…あの、古叢井さん、さっきは煽ってごめんなさい』

すると、瑠璃も

『私の方こそごめんなさい』

と謝った。これにて、一件落着なのだが、どうしても、ティンパニが何故壊れているのか、気になった優月が優愛に訊ねる。

『でも…なんであの…ティンパニ…だっけ?楽器が壊れてるの?』

すると、優愛は、優月の耳元に声を吹きかける。


『練習させたら、マレットが打面に突っ込んじゃって…』


交通事故か…と優月は突っ込みたくなったが、何とか押さえた。

『…古叢井さん、凄いね』

呆気にとられた優月がそう言うと、『そだね』と優愛も言った。


『…先輩、名前、なんでしたっけ?』

『…小林想大(こばやしそうた)

『へぇ』

いつの間にか、2人も仲良くなっていたようだ。


『…そっちも仲良くなれて良かった…』

優愛が胸を撫で下ろした。そして、

『明日から厳しくしなきゃ…』

とため息をつく。


それでも彼女が人に厳しく教えることはないだろうな、と優月は内心思っていた。


昔から優愛はそうだ。何があっても、怒らない。親が厳しいとは、何回か聞かされてはいたが、まるで信じられないくらいに、彼女の性格は明るかった。


優月がそう考えていたその時…

『…どうしたの?』

すると、香坂が優愛に話しかけてきた。

『あ!白夜!』

『帰ろうー』

『うん!ちょっと待っててね!…瑠璃ちゃん、一緒に帰ろー!』

すると『先輩、さようなら』と瑠璃はお辞儀をして帰って行った。なんだか可愛らしかった。

そんな瑠璃を連れて、3人は帰っていった。







それを見て、優月に想大が話しかけて来る。

『あれが、告白できない理由か?』

『…ま、まぁね。良い所で必ず、古叢井さんか、香坂さんが、来るからね…』

『…よし…!幼馴染として、手伝ってあげよう!』

突然、想大がそう言い始めた。

『…手伝い?』




これは、優月が後で知ったことらしいのだが…。

ある日の昼休みのことだった。

『…瑠璃ちゃん、優月君が優愛ちゃんに告白できるように、手伝ってほしいんだけど…』

想大がそう言った。すると、瑠璃は『えっ!?』と驚く。

『おねーちゃんに告白する人いるんだー』

と言うと、想大は『うん』と言った。

『おねーちゃんに…彼氏かぁ…』


彼女はそう言ってはいるが、優月と優愛か付き合うことは多分無いだろう、と想大は分かっていた。

『…優月先輩なら…いいよ!』

瑠璃がそう言うと、

『優月君だったら?』

『あの人、おねーちゃんも好きそうだもん』

『ありがとね』と想大は頭を下げる。

『…で、何すれば、いいんですか?』

『…ちょっと、部長を引き止めてくれれば…』

すると瑠璃がニコッと笑う。

『分かりました!来ないように言っておきますね』


瑠璃は純粋無垢な少女なので、秒で協力してくれたらしい。





そして、卒業式の2日前。受験の翌日の事だった。

『…優月君、頑張ろう!』

想大がそう言って、優月の背中を思い切り叩く。

バンッ!と硬い音が響く。

『う、うん…』

ロータリー近くは、下校する生徒の足音や話し声で溢れていた。

『…てか、本当にラブレター渡して終わりなの?』

想大が訝しげに訊ねる。


『…だって、皆に聞かれるじゃん…』

優月の手には、小さな真っ白の封筒。


その時だった。

優愛が香坂、そして瑠璃と話していた。

『…来たー』

優月は、頭の中が真っ白になる。





優月は優愛へ駆け寄る。

そして、優愛に真剣な表情で声を掛ける。

『優愛ちゃん、あの…伝えたいことがあります』

『…な、何?』

優愛は、いつになく驚いていた。

『…優愛ちゃん、す、好きです!付き合ってください!』

その言葉を聞いた優愛は

『えぇ~っ!』

と小さな声で叫ぶ。

『…優愛ちゃん、凄い部活、頑張ってる所みて元気出た…』


それを遠目に見ていた、瑠璃が想大に言う。

『本当に仲良いんですね』

『…小さい頃から、遊んでた2人だったからな…』


あの後、結局、親友留まりには、なってしまったが今も、こうして仲良く話せていることが幸せだ。








「あの事件がキッカケだったんだ…」

『そうだよ』と優愛は答える。

『でもね、もう大丈夫だよ』

瑠璃の破壊衝動が何とかなったのだろう…と優月は気付いた。

『…お互い、頑張ろうね!』

するの優愛がそう言う。それに優月は「うん!」と嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。


彼女に憧れて入ったことは事実だが、彼女を追って入った訳では無い。

いずれ分かるだろう…。

ありがとうございました!

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