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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]文化祭始動編
49/208

1年1組ーメイド喫茶始動の章

こんにちは!

今回は、文化祭の出し物回です!優月たちは、メイド喫茶をする様ですが、優月が女装することになり…。


普段は中々見せられない優月の姿を、最後まで、楽しんでいただけると嬉しいです!

「へぇ、古叢井さんとねぇ…」

翌日、音楽室で優月が想大に言う。

今は、個人練習中で、皆の集中力も減ってきていた頃だ。


実は昨日、古叢井瑠璃と手を繋いで、一緒に帰ったという想大は、頬を赤らめていた。どこか恥ずかしそうに…。

「それでさ、瑠璃ちゃんも文化祭に、来るらしいんだよね」

「へえぇ」

「優愛ちゃんと」

それを聞いて優月が、半歩下がる。

「ま、まじで?」

「おう。マジだ」

そう言って、想大は笑った。


その時だった。

「むっつん!」

鳳月ゆなが、井上むつみに話しかける。

「何?」

むつみは、彼女の方へ振り向く。

「私たちのクラス、メイド喫茶やるみたいなんですよー」

「えっ…メイド喫茶かあ」

むつみが羨ましそうに言うと、

「むっつんのクラスは何するんですか?」

ゆなが訊ねる。

むつみは、白く細い髪をいじりながら、

「えっ…私は射的だよ」

と答えた。

「へぇ、見に行こうかな」

ゆなは、少し興味を示したようだ。そんな彼女の反応に、むつみは少し笑みを見せた。

「あ、それでさ、むっつん、メイド服とか持ってる?」

「持ってるよ。使うなら貸そっか?」

「ぜひ、頼む!!明日までに…」

彼女の無茶振りにも、むつみは珍しく笑顔で、了承した。


「朝日奈、1組は何すんの?」

3年生の周防奏音が、朝日奈向太郎に訊ねる。

「ああ、プリクラとミニゲームをやる予定だ」

向太郎は自信満々に答えた。

「へぇ」

「周防のクラスは何するんだ?」

「私のクラスは、ハンバーガーショップらしいよ」

そう言って、ホルンを構えた。


こうして、各々、文化祭の出し物の話しで、音楽室は熱を帯びていた。

その時だった。

「皆さん、何話してるんですか〜?」

顧問の井土が話しかけてきた。すると、一斉に合奏の用意を始めた。

「皆さん、文化祭で何するか、決まってますか?」

井土は意外にも、部員たちにそう質問した。

「ああ、メイド喫茶やる」

するとゆなが、何の躊躇いもなくそう言った。それを聞いた井土は「えっ?」と眉をひそめた。

「鳳さん、メイド服着るの?」

しかし、彼女は首を横に振った。そして、次の瞬間、とんでもないことを言い出した。

「いえ、ゆゆに着せようと思います」

それは優月にとっても初耳。井土と共に『えっ?』と疑問の声を上げた。だが、彼女は笑みを浮かべるばかりで、何も言わなかった。



翌日。

5時限目に、文化祭の役割について決めることになった1年1組は、話し合いをしていた。

「えぇ、メイド喫茶をやることになりましたが、誰が何をやるかを今日は決めたいと思います」

と学級委員長が言う。


そうして着々と話し合いは進んでいく。そして、ついに最後の課題に到達した。

委員長が重々しく口を開く。

「さてと、男子でもメイド服着る人が、出ると思います。やりたい人はいませんか?」

刹那、教室内に視線が飛び交う。誰か手を挙げろよ、やりたくないよ、と否定的な意見が上がる。

「…はぁ」

その時、優月の脳裏に、ゆなの言葉が浮かぶ。

『いえ、ゆゆに着せようと思います』


その時だった。

数人の女子が手を挙げる。垂直に伸ばされた手もあれば、肘を曲げ自信なさ気に上げる手もあった。

「はぁ」

優月が手を挙げる。仕方ないな、と思いながらも。このクラスは女子の方が圧倒的に多いが、恐らくシフトの都合で、男子も数人、接客役に回る人もいるだろう。それに、メイドになるのは、女子だけという固定概念も気に入らない。

ならば、と優月は手を挙げることにした。


「えッ!小倉君、女装するの!?」

「楽しみー」

その時、女子の黄色い声が、あちらこちらから、聴こえてきた。

そんなに楽しみか?と優月は予想外の反応に、驚いた。

しかし想大が途中で、突っ込む。

「ってか、女装なの?」

その問いかけに、優月が「多分」と頷いた。


「じゃあ、接客役は、渡見さん、篠田さん、中原さん、石田さんと小倉君で決定ね」

そう言って、名簿にマークした。

「それじゃあ、午後のシフトの子も…」


そうして、優月がメイドをすることが、決定してしまったのだ。だが、これが意外な結果を生むことになる。



そして今日も、文化祭の出し物の話で、吹奏楽部員は、盛り上がっていた。

「想大君、お前もメイドにならないか?」

どこかで聞いたことのあるセリフを優月がぶつける。 

「えぇ…。瑠璃ちゃんに見られるのは嫌だな」

億劫そうに返す彼に、優月がため息をつく。

「それに、他のクラスの人に見られたら…」

確かに、と優月は言った。優月はあまり友達を作っていないから、そこまで言われることは、無いだろう。


その時、井土が音楽室に入ってきた。

「はいー、合奏するよー」

本番も近いからか、井土の雑談も少し減った気がする。

こうして、合奏が始まった。


何曲かこなすと、井土の指導が入る。

「…はい!トランペットとサックスの2つでもう1回!」

すると、トランペットとサックスの音が、ゆるりと絡み合う。普段打楽器で暇している優月は、それを、ぼんやりと見つめていた。

「次は、メロディーですね。フルートと鍵盤ふたりで合わせてください」

そう言うと、優月が慌てて、マレットを構えた。その横で美心もビブラフォンを前に目を細める。それと同時、初芽と心音がフルートを構える。

『だ・れ・か・に・あ・い・さ・れ・た・ことも』

優月は流暢に、マレットを動かす。暗記しているので、本当は譜面などいらないのだが。

「はい!良きです!それでは、もう一度皆で!」


優月は、タンバリンとグロッケンの担当だ。即座にタンバリンを構える。

ゆながシンバルを叩く。それと同時に、優月はタンバリンを振る。シャカシャカ…と軽やかな音が鳴った。

『天才的なアイドル様!フォウ!』

井土のボーカルに、優月は苦笑しながらも、音を奏でた。


そうして、練習が終わった。優月は楽器の後片付けをしていた。その時、ゆなが紙袋を眼前に突き出す。

「これ、文化祭の衣装」

「えっ?今?来週でいいよ」

「いや、明日も打ち合わせだから」

ゆなは、それだけ言って、去っていった。

「はぁ」とため息をつく。どうやらメイド服だけでなく、女装するのも確定らしい。

その日も、ドラムセットの自主練習をして、想大と他愛もない話をして、帰った。



翌日。

「どうして、ゆなはメイド服にならないの?」

とクラスメイトが、ゆなに聞く。

「面倒くさいから。私、面倒なことはしないの」

ゆなはそう言って、メイド服を抱えた生徒を見た。


優月も、確認のためにトイレで着替えることにした。

「よしよし…」

優月は、白いエプロンに黒いスカートと普段は見慣れない容姿を見せる。そして極めつけは…。

彼は白い髪の(カツラ)を頭に付ける。これが、むつみから拝借したものだとは知らずに。

それにしても、女の子として人に接するのは久し振りだな、と思う。

昔、優愛と家族ごっこをした時だったか、何度か

母役を押し付けられたこともあった気がする。



そうして、衣装をクラスメートに晒される時間になった。他の女子は髪を縛ったり、普段と、そこまで変わらないが、唯一男の、優月は違った。

『えっと、着替え、終わりました…』

敢えて、声を高くして教卓の前に立つ。

「異装届けには、こんな感じでお願いします」

優月を見た、クラスメートが絶叫する。

『えッ?かわいい!!』

『本当に優月君!?』

担任の若村も、彼の変わり果てた容姿に、口を手で覆う。


鬘だが、真っ白な髪を、わざと束ね、爪にはチップ、いつもの可愛らしい目が強調され、品のあるメイド服姿。

その場にいた誰もが、優月かと疑ったに、違いない。

しかも、仕草もどこか女の子らしい。小さな手で口元をそっと覆う。その姿に、男子の数人が卒倒した。

(あぁ、ドン引きされてるなぁ。今日の晩御飯、何かなぁ?)

優月は緊張の余り、場違いな事を考えていた。


「優月君、めっちゃ可愛い!!」

その時、想大がそう言って、優月の肩を叩いた。

「あ、ありがと…」

優月は、恥ずかしくなり、思わず目を背けた。

しかし、それがまた歓声を誘発する。

「へぇ、意外」

ゆなも少し驚いていた。美女のゆな。逆に可愛らしい優月。絵になりそうだ。

優月は普段、吹奏楽部では冷静なのに、こういう時になると、少し弱くなる。


「あの…これで通りますでしょうか?」

その問いに、学級委員長が「うん!!」と自信に満ちた声で答えた。

「これ!1日中、シフト入れたい!!」

と言うが、優月は、

「吹奏楽部の発表もあるし、無理だよぉ」

とわざとらしく答えた。その声も、演技で声が、普段よりも幾分か高い。

『やべぇ。鼻血出そう…』

『おいおい…。でもあの子、女の子の演技上手いよな』

そう言う男子たちの反応に、優月は恥ずかしいな、と少し後ろへ引いた。

すると、若村がこう言った。

「では、メイド服のサイズに、問題はないですね?」

「はい」

優月たちが、そう答えると、この時間は解散になった。


「マジ可愛い」

「優月って、女装似合うな」

男子たちの褒め言葉を無視して、優月は着替えるためにトイレに走る。だが、既に個室は全て埋まっていた。

「えっ…!空いてない」

最悪だ、と内心冷や汗をかく。すると、颯佚に肩を叩かれる。

「小倉、ついに扉が開いちゃったか?」

「いや、コナンか!って、ヤベェ」

優月は、肌に冷や汗をかく。


「夏矢君、これ内緒ね!」

そう言って、優月は階段を慌ただしく降りていった。確か、次は音楽室が空いているはずだと思い、音楽室で着替えることにしたのだ。

しかし、道中、他学年の生徒とすれ違う。


『可愛い!!』

『えっ?誰?』

『あの子、吹奏楽部じゃなかった?』

そんな会話も無視して、優月は音楽室に走る。


真面目で冷静沈着という周りからの評価が、変わってしまった、と優月は焦る。後輩ができるまでは大人しくしていたかったのに。


やっとの思いで、音楽室に到着した。

その時、誰かとすれ違った。

「あれ?小倉君」

「あっ…!井上先輩、こんにちは」

すれ違ったのは、衣装を貸した本人、井上むつみだった。

「小倉君が女装」

『ううっ…恥ずかしいぃ』

どこか、意味ありげな感じで、言ったが、優月は逃げるように、音楽室へ入っていった。


慌ただしくドアが閉まる音を聞いたむつみは、クスッと笑った。

なんだか意外な一面を見てしまったような気がして…。



そして、これをキッカケに優月の吹奏楽生活は、大きく変わっていくのだ。

ありがとうございました!

優月の演技力は、幼馴染みの優愛と遊んでいくうちに、身についたものです。

この後も優月の意外な一面を見られるかもしれませんね…?



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