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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]茂華町合同演奏会編
43/208

茂華町吹奏楽演奏会 [リハ・本番編]

瑠璃が主人公の話、今回にて完結です。

瑠璃が本気出すとどうなるか、最後まで、読んでくれると嬉しいです。


使用させていただいた曲

「東京スカパラダイスオーケストラ」


演奏会のリハーサルは、茂華中学校で行われた。


「私、ここわからないです」

「ああ、ここはねぇ」

図書室前の広間で、木管パートは練習をしていた。

木管は、クラリネットやオーボエなどだ。


そんな中でも、伊崎凪咲はクラリネットパートの中学2年生だ。そんな凪咲は、小学生の女の子に、クラリネットを教えていた。


「あ、できた」

その女の子は、思うように音が吹けなかったようで、凪咲が教えると、すぐに吹けるようになった。

「分からないことが、あったら聞いてくださいね」

「うん!」

凪咲は、そう言ってクラリネットを構えた。

(合同練習なんて、春にやった演奏会以来だな)

そうつぶやいた。



その頃、音楽室。

音楽室は、打楽器パートの練習場になっていた。


「あの、すみません」

ドラムを任せられた古叢井瑠璃が、練習していると、小学生の女の子が、話しかけてくる。

「はい」

瑠璃は、少し声のトーンを上げる。

「えっと…えーっと…」

その少女は、瑠璃の胸元を見ていた。

もしかして…、と思う。


「名前、分かる?」

「あっ…!」

図星だった。少女は彼女の名前が分からない。


古叢井。先祖がどんな人間だったかは、知らないが、現在になってはいい迷惑だ。この苗字で何度、笑われたことか。


「私は、古叢井瑠璃(こむらいるり)だよ」

そう言って、柔和な笑みを浮かべた。

「あっ!ありがとう…」

「瑠璃ちゃん、で大丈夫だよ」

「うん!」



その様子を見ていた希良凛が、苦笑する。

「苗字、何度見ても難しいですよね」

「だよね。でも、カッコいいよね。文字が」

「そうですね」

「でも、本当、瑠璃ちゃんが、ちゃんとした先輩になれてよかった…」

すると、優愛が、ホッと息をつくように言った。

「えっ?」

その言葉に気になった希良凛が、こちらを見てくる。その目は疑問に、満ちていた。

「瑠璃ちゃん、元々人見知りだったんだよね」

「へぇ。初めてあった時は、そんな感じしなかったですけれどね」

「なんか…私のお陰らしいよ」

希良凛は、その言葉に目を細めた。

「影響力が強いんですかね。先輩」

「どうだろうね?後輩」

2人は、ふふっと笑った。

最近、この2人の仲は、更に良くなってきている。


その時、高校生の女の子が、瑠璃へ言ってきた。

「あの、古叢井さん、ここ、もう一回いいかな?」

彼女は、少し驚いた表状をするも、

「分かりました」

と笑った。

『可愛いー…』

『うちの吹部に入ってくれないかなぁ』

その時、数人の女の子も、瑠璃へ視線を向けてきた。しかし、男子は、こちらには興味が無いようで、淡々と練習を続けていた。



10時には、全体合奏が始まった。

「はい、そこ!トランペットの動きがズレてますよー」

笠松が、小学生のトランペットの子を、じっと見つめる。

「もう少し、クレッシェンドしてください」

『はい!』

「では、トランペットだけで、やってみましょう!」

すると、トランペットの高らかな音が響いた。


瑠璃は、ドラムの椅子に腰掛け、足を小さく振りながら、その演奏を見ていた。

(なんでだろう?)

しかし、瑠璃は気になった。全然緊張しない。

本来なら、外したらどうしよう?と緊張が体を支配するはずだ。自分が本番に弱いことは、誰よりも分かっていた。それでも全く緊張しない。



その時、トランペットを吹く皆々を、笠松が手で制止する。

「はい!オッケーです!」

「では、もう一度、全員で通してみましょう!」

『はい!』

小学生、中学生、高校生が、自分の楽器を、構えた。辺りに緊張感が、張り巡らされる。

そうして、フルートの音が響いた…。



合奏が終わると、笠松が拍手をする。

「完璧です!あとは、本番まで練習あるのみですね!」

すると彼女が、香坂へ目配せをする。

その合図を受けた香坂が、突然立ち上がる。

『演奏会、頑張るぞー!』

香坂が声を張り上げる。彼女の声は、ビリビリと音楽室へ反響する。

突然のことだったが、部員も「おー!」と繰り返した。

それを見て、笠松は、彼女へ親指を立てた。それを香坂は、にこりと笑って返した。美少女の目が柔らかく歪んだ。





10月3日。本番の日だ。

茂華町民会館に、部員たちが集まった。



高校生の1人が、瑠璃へ訊ねる。

「よく寝た?」

「はい!」

「頑張ろうねー」

すると、瑠璃は「おー!」と右の拳を上に、突き上げた。

その反応に『可愛い…』や『ねー』などと、黄色い声が上がってきた。

「瑠璃さん、モテるんですねぇ」

それを見た指原希良凛が言った。希良凛は、まだ1年生だ。

「そうだね」

優愛も、小学生の女の子と、楽器を運びながら、同意した。


「白波瀬先輩、譜面台持ち、手伝ってくださーい」

瑠璃が、男の子へ呼びかける。すると、白波瀬雪斗(しらはせゆきと)という高校2年生の男の子が、駆け寄ってきた。

「はいー!」

白波瀬が、譜面台の入ったカゴを持つと、一気に姿勢が楽になる。

「じゃあ、行くよー」

「はーい」

このような形で、準備を終えた。

ついに、本番が始まる。


小学校、中学校の演奏が終わり、今は高校生の演奏だ。やはり、経験者が多いのか、今の自分たちより遥かに洗練されていると、痛感させられる。


「あのオーボエ、綺麗ですね」

「私も、あれくらいできればなぁ」

凪咲と、オーボエの久奈が、ヒソヒソと話していた。

「いや、新村先輩も、十分うまいですよ」

「ありがとう」


瑠璃も、スティックを振って、模擬の練習をしていた。練習では緊張しなかったのに、今では緊張する。

「緊張してる?」

その時、優愛が耳元で囁いてきた。

「うっ!優愛ちゃん」

「動きが硬いもん。分かるよ」

優愛は、そう言って笑った。彼女の柔らかい眼差しが、ピンと細まった。

「優愛ちゃは、最初緊張したの?」

「したした」


そうはいえども、瑠璃は過去に一度、ドラムをやっている。だが、あの時は大して観客はいなかった気がする。だが、今回は違う。親や知人が見ているかもしれない場所で、演奏するのだ。

緊張するはずだ。

「頑張ろうね」

優愛は、そう言って、瑠璃と手を合わせた。

ぱちん!と乾いた音が響いた。瑠璃は「うん」と力強く頷き、舞台の方を見つめた。

それと入れ違いに、今度は希良凛が、話しかけてきた。

「瑠璃さん、緊張してますね」

「うん、やっぱり、緊張するよ」

「頑張ってください」

そう言って、希良凛は瑠璃に、笑いかけた。

先輩と後輩に挟み打ちされた瑠璃は、思わず苦笑が溢れた。





程なくして、合同演奏が始まった。


フルートの音が、幾重にも重なって響く。洗練された音が、ホールを包む。

瑠璃は、深呼吸をする。そして、その刹那、スティックを手首から振り下ろす。

パシィン!!と金属が鳴り響く。

と同時に、ハイハットとスネアの往復を、始めた。そして、浮きだった右足を、すとんと落とし、バスドラムを打つ。

音が入る度、タムを打ったり、ハイハットとスネアを同時に打ったり、様々な技術を発揮する。

そして、香坂も必死に、フルートを吹き続ける。息が苦しいが、やめるわけにはいかない、その責任感を演奏にも、ぶつけた。


そして、演奏が終盤(ラスト)へ差し掛かった。

希良凛は、必死にシェーカーを振る。優愛も、マレットで連打する。

瑠璃は、その様子をちらりと見る。ふたりは、どこか楽しそうだ。

瑠璃は、隣のドラムを見る。高校生の男の子は、タム回しをしていた。


太鼓の音が絶え間なく繰り返される。

それを見た瑠璃の中で、何かがぷつりと切れる。

(私も!)

気付けば、瑠璃は全力でスティックを振っていた。

ドコドコドコドコドコドコドコドコッ!

相当な力に、タムが音を立て、震える。

数秒間、叩きまくると、音が小さくなっていく。瑠璃は、それと同時に、シンバルを両手で、叩いた。

指揮者の笠松が、大きく両手を振りかぶる。

それと同時に、瑠璃は、左右にあるスネアとフロアタムの太鼓へ、スティックを振り下ろした。

バン!と鋭い音。久し振りに本気で奏でた瑠璃は、満足そうに笑った。

ずっと我慢していたドラムソロができたことに、嬉しかったのだろう。

目を猫のように細め、頬を赤くし、白歯を横へ伸ばした彼女の表情は、誰よりも嬉しそうだった。



舞台を終えた瑠璃は、

「あー、楽しかった!!」

と両手を伸ばした。

「瑠璃、最後カッコよかったよ!」

凪咲が、本気で褒めると、彼女は、

「えへへ、実は、ちょっとだけ練習してたんだぁ」

続いて、ドラム担当の男の子が、

「凄かったよ!」

と瑠璃に言う。

「ありがとうございます!」

瑠璃は、ニコニコと笑って返した。

タムの打面に傷が付いただろうが、別に大丈夫だろう、と考えながら。

「瑠璃ちゃんも、片付けしょう!」

優愛がそう言うと「はーい!」と瑠璃は、トコトコと歩いて行った。


その時、希良凛が瑠璃をじっと見ていた。

明らかに技術が進化している。

「瑠璃さん」

普段は子供っぽい彼女も、本気を出せば、優愛を超えゆる破壊力と技術力を持つのかと。

希良凛は、険しい表情でひとり考える。


どうすれば、瑠璃からドラムソロを奪えるか…、と。

ありがとうございました!!

瑠璃の本気ってどれくらいなんだろう?って感じで書いてみました!

因みに、瑠璃の実力は、全キャラクターの実力でも、一桁いくレベルですね。


ちょっとここから、設定の小話でも…。

瑠璃の叩いてて楽しいっていう設定は、作者自身の感想を少し変えてみたものです。

作者も打楽器やっているのですが…。

実際、ドラム叩いてると、楽しくなっちゃうことがありまして…

いや、この話は、また後で。


良かったら、

ポイント、感想、リアクション、ブックマーク

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[次回]

むつみの悩み…

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― 新着の感想 ―
ドラム叩いてると楽しいのめっちゃわかります!w 主瑠璃編完結お疲れさまでした!スカパラ叩いたのはパーカスが上手すぎましたね、やっぱすげぇやぁ
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