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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]地区コンクール大会 本編
40/304

【最終回】 地区コンクール大会の章

今回で、コンクール編は最終回です!

瑠璃が主人公です!最後まで読んでくれると、嬉しいです!

茂華中学校の多目的室に、和太鼓やパーカッションの音が響く。

先の市営コンクールでは、惜しくも銀賞だった。市営の時は銀賞でも、本番の地区コンクールでは金賞を獲る。そして次の大会に出場する。

そう部員たちは、各々練習に励んでいた。


「できた」

「じゃあ、合わせよっか」

「うん」 「はい」

瑠璃と優愛が、バチを構える。

今やっている所は、『メトセラⅱ』のパーカッションソロだ。

この曲には、ソロがあり、難易度が高い。

3人がバチを振り下ろした。

もう既に、本日4回目の合わせだ。

疲れはあるが、頑張らなければならない。

コンクールは3日後だ。


瑠璃は、先の市営コンクールを、思い出す。

確か…あの時は、と叩きながら記憶を巡らせる。


振りが大き過ぎたり、打つ位置が悪かった…。そう顧問から言われた。


瑠璃は、目の前の太鼓に、集中を注ぐ。余計なことを考えている暇はない。

東関東大会出場、という目標に、一歩でも近づくために…。



「えっ?付き合えないの?小林先輩と」

「うん」

正午、空き教室で弁当を食べながら、優愛と瑠璃が話していた。

「どうして?金賞獲ったら付き合うって、打ち上げで、言ってたじゃん」

「う、うん。でも想大くん、忘れちゃってたみたいで」

は?と優愛は思った。そんな訳はない。

「それさ、今すぐにでも、瑠璃ちゃんと付き合いたいってことなんじゃない?」

「えッ?」

瑠璃の目が大きく見開かれる。

「そんな、吹奏楽なんて団体競技なんだから、ひとり無理して頑張っても、結果は変わらないよ」

「う、うん」

「小林先輩は、結果と恋愛を結びつけたくなかったんじゃないの?」

確かにそうかも、と瑠璃は思う。

あの時、先に約束を取り付けたのも自分だ。


「そうかも。優愛ちゃん、どうすればいい?」

「うん、もう一回、付き合ってくださいって打ち明けるしかないよ。」

「う、うん」

「大体、いくら瑠璃ちゃんが、可愛くても、高校で小林先輩、取られちゃうかもしれないよ」

「そっか…。でもね、前から思ってたの」

「何を?」

瑠璃は食べ終えた、弁当箱を机の上に置く。

「だって、遠距離恋愛でしょ?私、できるかなって」

「確かに」

遠距離恋愛は、何かと大変だ。それは、彼氏のいない2人でも分かっている。

「てことは、付き合うのが、怖いの?」

「正直言って…」

「そっか。でも最後に決めるのは自分だよ」

優愛は、そう言って、バッグを両手に持つ。

その時、瑠璃は、自分の気持ちから逃げていた、そう感じた。

「がんば」

だからこそ、その声は、いつもより優しく響いた…気がした。


「で、でさ、優愛お姉ちゃん!」

「ん?どしたの?」

「あの、9月の小中高の合同演奏会でさ…」

「あれは、大丈夫!」

すると瑠璃の表情に、花が咲いた。

「ドラムでしょ?でもね、文化祭は、そうはいかないかもね」

「なんで?」

「さっちゃん。あの子も、瑠璃ちゃんと同じくらい上手いし、どうなるか…」

「ええ…」

恩人の優愛と同じ舞台で、演奏することに意味がある。

そして、文化祭が、先輩の優愛と演奏できる最後の機会だ。

「でも、さっちゃんには、実力で競り勝てば、いいんでしょ?」

「そういうことだね」

茂華にも、実力主義な所はある。

「私、頑張る!」

「その前に、コンクールだね!」

息巻く瑠璃に、優愛がそう突っ込んだ。

「うん」

瑠璃は、それだけ言って、空き教室を出ていった。




翌日。

バスは、再び御浦市のコンサートホールへ、向かっていた。

「眠らない眠らない」

サックスのひとりが、自己暗示をかけていた。

「眠いよね〜」

隣の席の子も、欠伸を必死に噛み殺す。


「はぁぁ…」

凪咲がそう言って、瑠璃の頬をつつく。

「寝んなよーぉ」

「うー…」

瑠璃は必死に、瞼の上を持ち上げる。まだ眠い。

「凪咲ぁ、私、ねむうい」

「緊張しないの?」

「してないフリー」

瑠璃の様子がいつもと変だが、寝てはいないので放っておくことにした。





そして、コンクール会場に着く。

今年2回目の、駐車場で見る向日葵(ヒマワリ)は、先日よりも、爛々と神々しかった。


「それでは、準備します!」

顧問の笠松の声を、先頭に、各々が準備を、始めた。茂華中学校の今年の番は、2番だ。

2番は、何かと不利だが、受け入れるしかない。

「おっもぉ…」

大きな長胴太鼓に、優愛が顔を歪める。

「優愛先輩!」

そこに、慌てて希良凛が入る。

「あ、いや!だ、大丈夫!さっちゃんは、他の楽器を運んで!」

「了解しました」

希良凛はそう言って、踵を返した。そこに、今度は瑠璃が駆け寄ってくる。

「優愛お姉ちゃん!」

「あっ、お願い!!」

先程とは違って、優愛は瑠璃の手助けを、要請した。

(なんか、差別みたいになっちゃったなぁ)

優愛は、そう思ったが、運よくも希良凛は、友達と他の楽器を運んでいるようで、こちらには気づいていないようだ。

「ねぇ、お姉ちゃん」

「ん?」

「ソロ、頑張ろ」

「うん」

その会話以降、運び出しでは、2人は何一つ話さなかった。




その後、小ホールで、最初だけを通した部員たちは、舞台裏で待っていた。

黄昏色の照明に、浴びせられ、各々の楽器の、音と光が煌めく。

(冬馬中、腕が落ちたなぁ)

久奈が、内心そう思う。なんだか、去年と違って、ハリがない。曲の佳境だというのに、やんわりとした感じだ。

その時、音がぴたりと止む。どうやら、終わったようだ。


『行くよ!みんな』

香坂が、白銀のフルートを片手に、左手の人さし指を突き上げる。

すると、次々と部員が、同じように、指を突き上げた。

『金賞獲得』きっとそんな意味だと、部員たちは思った。



そして、楽器を定位置にセットする。その間は、暗い闇が辺りを包んでいた。


そんな中、瑠璃は譜面をめくる。

『瑠璃!! 自分の気持ちをぶつけるように!!頑張ろう!』

その文字をみた瑠璃の目が、大きく見開かれる。


その時、見てもいない風景が、思い起こされる。

『えっ?アドバイス?』

『そうです』

聴こえてきたのは、憧れの先輩である優愛と、親友の凪咲の声だった。

『先輩、瑠璃とのコンクール、今回で最後かもしれないんですよ』

『そんなぁ』

『それに、優愛先輩が、書いてくれたら、瑠璃は死ぬほど喜び…』

凪咲が、優愛のボールペンを手に取り、彼女の胸へ突きつける。

『ますよ』

凪咲の言葉に、優愛は、分かったよ、と言った。

そして、優愛は瑠璃の譜面に、ボールペンで書き出す。

『本番まで、見えないように、私が隠すんで安心してください』

凪咲が自信満々に、そう言うが、この言葉の意味がよく分からなかった。



柔らかく丸い文字で分かる、優愛の文字だ。

優愛が書いてくれたんだ。

次の瞬間、何故か、涙が溢れそうになった。

もう優愛とは、演奏ができないのか?

この曲はもうできないのか?

いや、そうはさせない、と瑠璃の中で何かが、切れる。それは、理性の線でもない、迷いと緊張の糸だった。目の前が透明な空間になる。


『プログラム2番、茂華町立茂華中学校』


笠松が、指揮棒タクトを構える。次の瞬間、トランペットの音が響いた。

続いて、クラリネットやオーボエなどの木管も入ってきた。

どれも、洗練された音。朝だろうと関係ない、その音は、研ぎ澄まされていた。

そうして、曲は進んでいく。

打楽器も、譜面通り、楽器を打ち込んでいく。

身を削ったその音は、先の本番よりも、更に優れたものになっていた。

そして、希良凛がスティックを、振る。

パラパラパラ…とロールの音が響いた。

そして、オーボエソロ。久奈が、心を落ち着かせ吹き始める。柔らかい音。


そして、打楽器のソロになった。

瑠璃が、バチを振り上げる。

ドドンド…!!

その時、頭の中で何かが聴こえてくる。

『簡単で楽しいじゃん』

それだった。悪魔のような囁きに、瑠璃の瞳が大きく開かれる。

確かにそうだ、瑠璃はその悪魔の囁きを、信じ込んでしまった。



彼女たちは、もう叩き切ることしか、頭にない。

それは、希良凛も、優愛も同じだった。

だが、瑠璃だけは違う。

楽しい、ずっと叩いていたい、そう思うくらいの余裕が彼女には、あったのだ。

先日とは違う、力強く、正確な音が、ホールへ響いた。

もう迷わない、失敗しない、そんな絶対的な自信が瑠璃の口元に笑みを作る。

そうして、演奏は従順に終えた。


だが、演奏が終わった瑠璃は、息を切らす。夢中になって叩いていたからか、息が苦しい。それと同時に、汗が込み上げてくる。

「はぁ…はぁ…」

深呼吸を隠すように、優愛の方をちらりと見る。優愛も、こちらを見ていた…気がした。

瑠璃は、怖くて既に泣きそうだった。これで優愛と舞台で演奏できなかったら、どうしょう?

そんな気持ちが込み上げてくるが、今は余韻に浸っている暇はない。

他の学校の生徒が、迫っている。


瑠璃は、泣きそうになりながらも、楽器を持ち上げ、逃げるように舞台裏へ向かった。


「終わった…」

瑠璃は、へなへなと優愛に突っ込んだ。

「頑張ったね」

優愛は、それを驚くこと無く、頭を撫でた。

「泣いてる?」

その時、瑠璃が泣いていることに、気が付いた。しかし、瑠璃は

「泣いてない…よ」

とニコッと笑う。そんな細めの眉からは、涙が垂れていた。

それがなんだか面白くなった優愛は、クスッと笑う。

「まだ泣くのは、早いよ」

「こわ…い」

「えっ?何が?」

瑠璃の肩をさすりながら、優愛が訊く。

「もう…お姉ちゃんと演奏できないんだなぁって…」


瑠璃にとって、優愛は本物の姉以上の存在だ。孤独な自分に、いつも手を差し伸べてくれた。その結果、本当の自分を見つけることができたのだ。

だからこそ、瑠璃は、優愛も吹奏楽も、大好きなのだ。


「何言ってんの!駄目だったとしても、合同演奏会とか、文化祭があるじゃん!」

優愛は、ハンカチで彼女の目元を、ゴシゴシと拭う。

「うん…。そうだね…」

瑠璃もそう言って、打楽器を運び出した。

「瑠璃ちゃんのソロ、本当にカッコよかったよ」

「ありがとう」

「同じ音を、文化祭でも宜しくね」

「分かってるよ!」

瑠璃はそう言って、満面の笑みを浮かべた。

駄目だったとしても、まだ次がある、時間は待ってくれない。



結果発表の時がくる。

しばらく待っていると、結果発表の時になった。

『令和6年度地区吹奏楽コンクールの結果発表』

男性がそう言った。

ホール内に、緊張が走る。


「プログラム1番、冬馬中学校、銅賞」

すると、隣から涙ぐむ声が聞こえてきた。近すぎて、自分たちもそうなるのではないか、と思ってしまう。

「プログラム2番、茂華中学校、金賞」

こうして、着々と各学校の結果が、伝えられていく。

「続いて、東関東大会の出場校を発表します」

瑠璃や香坂は、両手を握って、神に祈る。

『2番、茂華中学校』

その時、部員全員が叫んだ。無意識にも、大きな声が響き渡る。

嬉しい!そう思った。今年もだが、また優愛と演奏できる、と嬉しかった。

『9番、神平中学校…』

瑠璃は、優愛の方を見る。その時の優愛の顔は、いままでに無いくらいに、優しい顔をしていた。

すると、夢が叶った、と誰かが言った。

だが、瑠璃はこう思った。

夢じゃないよ、願いだよ、と。




翌日。

「えっ?金賞?」

『そう!やったー』

想大は、コンクール帰りのバスに乗っていた。電話の相手は、瑠璃だった。

「すげぇな。俺等は銀賞だったよ」

『そうなんだ』

「まぁ、東関東でも、頑張って」

『ありがと!!』

隣にいた優月も、その言葉の意味を理解した。



優月はひとり、家の近くの公園に寄った。

「はぁ」

疲れが重くのしかかるが、思わずブランコの、鎖を引いてしまう。

その時だった。

『優月くん』

聴き馴染みのある声が、聞こえてきた。後ろを振り向くと、優愛だった。

「優愛ちゃん…!」

この公園は、昔から2人きりで遊んでいた思い出の場所だ。


「東関東、だね。金賞おめでとう」

「ありがとう」

「流石、茂華中学校だね」

「違うよ」

しかし、優愛は、褒める優月を否定した。

「瑠璃ちゃんのお陰だよ。あの子の太鼓が無かったら、パーカッションソロは、絶対に失敗していたもん」

「そっか」

優月は、先の話を思い出す。


初芽は、茉莉沙のお陰で覚醒した。瑠璃も間違いなく、優愛のお陰だ。


「僕、思うよ。優愛ちゃんが、いなかったら、古叢井さんは潰れてたって…」

「そう?」

優愛が、首を傾ける。

「じゃなきゃ、本番で覚醒しないよ」

「…そうかもね」

2人は、顔を見合わせて笑った。


吹奏楽が、この2人を繋いでくれている。その事実は2人の背中を、ゆっくりと押しているのだ。

だが、このあと、強大な試練が、2人を待ち受けているとは、思いもよらなかった。

ありがとうございました!

コンクール編いかがでしたか?


次回から文化祭編を描いていきます!

お楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
コンクール編完結お疲れさまでした。まさかゴールド金賞が取れるとはねぇ、流石茂華中!東藤も銀とれたのは熱いq(oωo)p 2~30巻ぐらい続きましたっけ? ほんと面白かったです!次回から文化祭編が始まる…
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