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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]地区コンクール大会 本編
33/304

立夏青春の章 [御浦編]

こんにちは!


制作上、名前の変更をさせていただきます。

薬雅音ノ葉→薬雅音乃葉

川又悠良之介→川又悠良之介

指原綺羅莉→指原希良凛


変更、申し訳ございません!

それでは、物語をお楽しみ下さい!!

セミの鳴き声が、チラチラと響き始める夏のある日。


ここは、墓場だ。墓の前で、女の子がひとり、手を合わせていた。

「元気にしていますか。お母さん、お父さん…」


墓には、[月峰家]と書かれていた。


それをみた、田中美心は、優しそうに笑った。

「私は、今、すごく死にそうです」

優しい表情とは裏腹に、美心の言ったことは、随分と重い言葉だった。

実は、美心の苗字は『田中』ではない。受け入れ先の苗字を借りたものだ。


しかし、そんなこと、誰も知る由などなかった。そして、悲劇の渦を作り出すことも…。





その時、東藤高校の音楽室。

各パートが、本番へ向けて練習中だった。


それでも打楽器、俗に言うパーカッションパートは、喧騒に包まれていた。

「アァ!負けたぁ!」


鳳月ゆなが、スマホでゲームをしているのだ。

いつもなら、美心が叱ってくれるのだが、彼女は今日は、休みだ。



その一方で、優月は、渡された楽譜と、睨み合いをしていた。

「…うるさぁ」

その優月が、ゆなをチラリと見る。

トランペット、ホルン、フルートやサクスフォン等の音とは、分断された、どこか不快な音。

ゆなが、何をしようと、誰も怒らない。それが、彼女のサボり癖に、拍車をかけているのだ。

その時だった。

「鳳月さん」

ふと、大人しい声が、ゆなの首を動かした。

「あい」

「ちょっと…ドラムを貸してほしいんだけど」

そう言ったのは、明作茉莉沙。部内でも一目置かれているトロンボーン奏者だ。

そんな彼女は、元打楽器奏者でもあり、その経験から、たまに打楽器に派遣されることがある。

「あいあい」

そう言って、ゆなは丸椅子から、重い腰を上げ、トコトコと、近くのアップライトピアノの椅子へ、座り込んだ。

どうやら、まだゲームを続けるらしい。



その時だった。

茉莉沙の持つスティックが、大きく振り下ろされる。無論、音は大きい。

それでも、正確だ。


「うわぁ」

優月は、凄いなぁ、と毎回感心する。『楽団最強』と揶揄されるだけあるな。

小さな体のどこに、そんな体力を隠しているのか、と思う程に、演奏は途切れない。

彼女の深紅の瞳は、楽譜台へ釘付けられていた。



「ほぉぉ…」

突然の爆音に、驚いたのか、ゆながスマホを下げると、彼女を睨むように見る。


「ごめんなさい。うるさかったですか?」

そんな彼女に、茉莉沙が振り向いて、言う。

「いや、大丈夫」 


茉莉沙の律儀な言葉遣いのせいで、彼女が後輩に、見えてしまう。本当は先輩なのに。




合奏が終わると、茉莉沙は、いつものように、初芽に話しかける。


「じゃあ、私は、薬雅音ノ葉ちゃんに会ってくるね」

「うん。またねー」


薬雅(やくまさ)と言う女の子は、全国トップレベルのトランペット奏者だ。

そんな彼女とは楽団時代からの友達だった。



御浦市のホール。

電車で十数分。懐かしい場所へ来た。


「ここ、懐かしいなぁ」

茉莉沙は、懐かしそうにそう言った。

かつて、苦楽を共にした場所だ。苦しいことの方が、多かったけれど。


しばらく日陰で待っていると、黒い髪に細めの女の子が、こちらへ手を振ってきた。

「やぁ」

「あっ」

茉莉沙は小さく会釈した。最低限の礼儀だ。

「久し振り。メイちゃん」

「お久しぶりです」

「相変わらず固いなぁ」

そう言って、音ノ葉は朗らかに笑った。


薬雅音乃葉(やくまさおとのは)。彼女は、御浦ジュニアブラスバンドクラブ、世間では、御浦吹奏楽団と呼ばれているが、音乃葉は、ウラと揶揄される奏者だ。

「良かったら、見ていくかい?いまならサワ君も居ないよ」

「挨拶だけなら良いけど」

茉莉沙は、当時、打楽器奏者の沢柳律を、越えたと、組織からもてはやされていた。



2人は、ホールの中に足を踏み入れる。

エアコンの涼しい空気が、彼女の緊張を、少しほどいた。

「おおおお~っ!まりたん!」

その時、もうひとりが話しかけてきた。その声は、音乃葉の声とは、また違うどこか熱意のある声だった。

「あれ…。鈴木さん」

茉莉沙は、その人物を見て、目を丸めた。

鈴木燐火。オーボエのプロ奏者。彼女も、ウラと揶揄される実力者だ。

赤と黒の短髪に、灰色の瞳、色黒な肌とボーイッシュな容姿だ。

「港井君から聞いたよ。トロンボーンをやってるんだってね」

「はい」

茉莉沙は、はにかむように言った。


「もうまりたんの、パーカス聴けないのは、寂しいなぁ」

赤みがかった髪を、ぐしゃぐしゃと掻き回しながら、燐火は残念そうに言った。


「いや、実は、パーカスも少し続けてます」

そんな彼女に、茉莉沙がそう言った。

「おおっ!そうかそうか!良いねぇ」

彼女の態度は一変。口角を上げ、ニヤッと笑った。


「ところで、鈴木さん、練習はどう?」

「厳しい稽古のおかげで、世界で26番目に、有名な鈴木になったよ」

「私がいた時は、30番だったよね」

「あれから、大きな大会に、出たからなぁ」

燐火は、誇らしげに言う。


相変わらず個性的だなぁ、と茉莉沙は思った。

練習中は真剣な2人も、オフの時になると、個々の個性を爆発させる。



「待っててくれ。阿櫻を、呼んでくる」

そう言って、音乃葉は、ボールにつながる通路へ歩いて行った。


「音乃葉ちゃんが私を呼んだみたいだけど、何の用でしょう?」

茉莉沙が、そう訊いた。すると燐火が、

「あー」

と笑う。

「特に用は、無いと思うよ。音乃葉ったら、茉莉沙が泣いている所見てから、放っておけないみたいで」

その言葉は、茉莉沙へ深く突き刺さる。

「その節は…」


実は、茉莉沙は、沢柳たちの厳しい指導のせいで、精神を病んでしまったことが、あった。それ以降、沢柳が苦手になったのだ。


「音乃葉ちゃん、本当は優しい子なんだから、警戒することないよ」

「うん」

燐火の灰色の瞳が、どこか安心感を与えられる。




「こんにちは。明作さん」

その時、1人の男性が、音乃葉と共に現れる。

阿櫻克二(あさくらかつじ)。楽団の副監督だ。年齢は56。

「お久しぶりです。阿櫻先生」

茉莉沙は、そう言って頭を深々と下げる。

打楽器パートと決めたのも、彼だ。

「元気にしてましたか?」

落ち着いた口調は、相変わらずだ。

茉莉沙は「はい」と言う。頷きはしない。

「メイちゃん、高校でトロンボーン、続けてるんだってさ」

音乃葉が、こう言った。

「はい。あと、パーカッションを少々」

2人が言うと、阿櫻はニコッと笑う。

「今は、速水監督は、いません。良かったら、皆で少し吹きませんか?」

突然の阿櫻の提案。

え、と茉莉沙の口から声が零れる。その声は、拾うに値しない程の小さな声だった。


「いいじゃないか。アンサンブルができるとは、最高に最高だ」

音乃葉が、満足そうにそう言った。よほど合奏が好きなのだな。

「おぉー。まりたんのボーン聴けるのか〜」

燐火も、期待をしているようだ。


どうやら自分が吹くのは、確定事項らしい。



それから、紆余曲折。彼女はトロンボーンを、吹くことにした。

「メイちゃんは、ここで待ってなさい。優秀な配下を連れてくる」

こうして、またも音乃葉は、姿を消した。


「すぅー」

茉莉沙は、その間、借りたトロンボーンを、チューニングすることにした。


ロングトーン、タンキング、基礎練習を難なくこなしていく。1人だからか集中できる。


その時だった。

扉がものすごい勢いで、開く。

「師匠の目掛けと吹く…」

現れたのは、金色に光るトランペットを、構える男の子。

「奏者として無上の喜びよ。感謝する」


なんだ?この人は?

生まれてくる時代を間違えてはいないだろうか?と心配する程、変わった口調をした男の子だ。


彼は、片岡翔馬。中学2年生だ。

「こらこら、片岡、メイちゃんが、ドン引きするでは無いか」

と音乃葉が、翔馬の頭をポンと叩いた。


それにしても、彼はやたらイケメンだ。口調さえ変でなければ、普通にモテるのではないのか?


「コイツは、片岡翔馬。私の後輩さ」

「宜しくお願いします」



聞けば、彼は集中力を上げるべく、無駄な会話を極限まで減らした結果が、このような侍のような話し方になったらしい。


しばらくすると、阿櫻と燐火も、戻ってきた。

その後、本日2度目の合奏が、始まった。


翔馬のトランペットも上手かった。部長の雨久と競り合えるくらいに。

「いやぁ。幸せだ」

トランペットを磨きながら、音乃葉は笑った。

「上手いなぁ。私、びっくりしたよ」

燐火も、茉莉沙を褒める。

「どうもぉ」

茉莉沙は、控えめにそう言った。言われ慣れていることだが、プロに言われると恥ずかしい。


「良かったら、少しだけ演奏見ていくかい?」

すると、音乃葉がそう言った。

「いいんですか?」

今後のためにも、トロンボーン奏者を見ておきたい。

「いいんだいいんだ!今はまだ3時だし!」

「では、お言葉に甘えて…」


こうして、30分程、彼女たちの演奏を、見ることにした。


「冬樹くん、相変わらずだなぁ」

監督の速水にも、事情を伝え、見学することにした。

それにしても、まさか音乃葉たちと吹けるとは。貴重な体験だな、と思った。


そして、帰ろうとしたその時。

「あなたが、元最強ですか?」

誰かが、話しかけてきた。


茉莉沙は「はい…」と振り向いた。そこにいたのは、自分よりも小さな男の子。

「沢柳先輩から聞きました。あなたは、すごい人と」

「誰?」

「僕の名は、指原莉翔。彼の下で学ばせてもらっているパーカッション奏者です」

莉翔という男の子も、個性的だ。和装に、小さく髪を結んでいる。女の子のような人物だ。

しかし、彼が、とある人物へ悲劇を引き起こす。



「…はぁ」

自分の部屋。

田中美心は、ため息混じりに、アルバムを見ていた。

「お母さん、お父さん」

美心は、そう言って、幼き日の写真を、引き出しへ静かに仕舞った。


これが、危険なサインとも知らずに。


指原莉翔…。指原?どこかで聞いたことあるような?

それと、美心のシーンは、伏線です。



ありがとうございました!

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[次回]

瑠璃と指原…の話



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