表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]地区コンクール大会 本編
31/208

好敵手再会の章

久し振りの東藤高校の話です!

今後の為に、根幹に関わる話を、書いてみました!

最後まで読んでくれた方は、

感想、ポイント、リアクション、ブックマーク

を、お願いします。



※この物語はフィクションです。

※人物、学校名、団体名は、全て架空のものです。

県立東藤高校の吹奏楽部。そこは、あまり実力がないものの、地元からは人気のある吹部だ。




「AメロとBメロは、クリア。今、課題点をあげるなら…」

そんな中、ひとりトロンボーンに、打ち込む少女がいた。

彼女の名は、明作茉莉沙。部内で唯一の、トロンボーン奏者だ。


彼女は、初めて1年とは思えない程の、実力者だ。

だが、その正体は、吹奏楽の強豪クラブ内でも、トップレベルのパーカッション奏者だ。

だが、今はトロンボーンと打楽器を、掛け持ちして練習している。


「Fメロ…、ここまでやってみますか」

茉莉沙は、スライドを引く。すると、大きな音を青空へ、響かせた。


(今年は、打楽器もあるから、うかうかしてられない…)

茉莉沙は、慎重かつ効率的に、演奏を進めていた。




その頃、小倉優月も、打楽器を、井土広一郎に、指南されていた。


「小倉君、ボンゴの打ち方が、ちょっと違うかな」

「そ…そうなんですか?」

優月は、幼馴染みの榊澤優愛に、憧れて、吹奏楽を始めた。楽しそうだという彼の予想は、もはや現実のものに、なっていた。


「うん。まず、右左右左で、叩くんじゃなくて、右右左で叩くの」

優月は、言われた通りに、手で皮を打つ。


「こうですか?」

「そうそう!」


すると、井土は、お手本を見せるように、ボンゴを叩いた。

「おお…」

優月は、すごいな、と思う。それと同時に、今すぐできるように、なりたいとも、思ってしまう。


「じゃあ、私はこれで。また分からないことがあったら…」

「ありがとうございました」

優月は、そう言って、楽器の前に立つ。

さて、もう一度やるか、と。




10分ほど練習をした後、優月が、休憩していると、美心とゆなが話していた。美心は3年生の鍵盤担当、ゆなは太鼓諸々を、担当している。


「全く!またゲームしてる!」

「ごめんなさい…」

「前も、言ったよね。それ」

美心の説教に、ゆながペコペコと頭を下げる。


これは、当然ゆなが悪いのだが、最近、美心も彼女に、厳しくなりつつある。

ここ1週間、この景色が、何度も見られる。



しかし、誰も気にする素振りは無い。

井土は、井上むつみに、話しかける。

「井上さん、メイさんに、電話かけてください」

「オッケーです」

井上むつみは、白い綺麗な地毛、深紅の瞳を際立たせる白い肌。まるで、アニメから出てきた美少女の、ようだった。


彼女は、別に、化粧やメイクしている訳では無い。祭典時は、黒髪に黒いカラーコンタクトを付けているので、学校には話を通してあるのだろう。



こうして、合奏が始まった。

個人練習を、しっかりしているからか、合奏は滞りなく進む。


「はい!齋藤さん!そこのクレッシェンド、意識して下さい」

「あっ…」

「夏矢君とは、そこ違いますよ」

「はい」

齋藤菅菜(さいとうかんな)は、自らのサックスを見る。テナーサックスと呼ばれる楽器だ。


「岩坂さん、初芽さんの運指を見てても、演奏に集中できませんよ。難しそうな所は、吹かないで大丈夫だよ」

岩坂心音。今年フルートを始めた1年生だ。

「はい」


「降谷さんも、無理しないで下さいね」

「は、はい」

降谷ほのかという大人しめな女の子も、中学までは、他の部活に、入っていたらしい。

そんな彼女は、優月やゆな、美心の方を、見ていた。敵対者のように。


「次は、Eメロですね。やっていきましょー!」

井土が、楽譜をめくりながら、そう言った。



優しくも面白い人だな、と夏矢颯佚(なつやそういち)は思う。指示も演奏の芯を食っていて、少し優秀だな、と思ってしまう。



(死ぬ前に、こんな先生に、会えて良かった…)

颯佚は、しみじみとそう思った。


「では…いきますよ!」

各々が、楽器を正眼に、構えた。

茉莉沙も、スティックを持ち直す。学校のものだからか、肌触りが、少し気になる。

自宅から持ってこようか?とも思ってしまう。



その日の練習終わり。

「茉莉沙、お腹空いたー!」

「コンビニ行きますか?」

フルートパートの初芽結羽香と茉莉沙が、話していた。


「でも、練習しないの?パーカスの」

「ふふっ。今日はいいかな〜」

茉莉沙は、いつもは硬い表情を、和ませる。


「あ…」

その時、優月が叩いているであろうドラムの音が、聴こえてくる。

ドコドコドコ…と、壁越しに、タムが鳴り響く。

日によって、音量が違う。

すると、ホルンの音も聞こえてくる。



「小林君かな?」

初芽が、そう言うと、茉莉沙は、

「先に下降りてて」

と言って、茉莉沙は、休憩室に、入ってきた。





「お疲れ様です」

茉莉沙は、ドラムを叩いている優月と、ホルンを手にした小林想大に、話しかける。


「お疲れ様です」

優月と想大は、そう言って返した。

「ドラム、やってたんでしたっけ?」

「い、いえ」


突然話しかけてきた茉莉沙に、優月は驚いた。

しかし、急にどうしたのだろう?


「あの、1個聞きたいことがあって」

「は、はい」

「私のパーカス用の楽譜は、どこにありますか?」

「えっ…?後ろのピアノの上です」


すると、言葉の意味を、呑み込んだ茉莉沙は、

「ありがとう」

と言った。



「小倉くん、タム回し、してる?」

「は、はい」


そうなのだ。

ゆなに追いつきたくて、練習しているのだが、中々突っかかる。


「貸してくれますか?」

茉莉沙は、そう言って、優月のスティックを、構える。

「すーっ」


刹那、茉莉沙の握るスティックが、激しく振り下ろされる。

手首の振りと、スティックの狙いが、正確であるが故なのか、突っかかること無く、音は進む。


ドコドコ…!!ドコドコ…!!ドコドコ…!!


勢いよく、タムが震える。

その音圧だけで、壁を破壊できそうだ。



「すげぇ…」

想大が、ホルンを抱えてそういった。

「ほんとぉ」

優月も、体中が無意識に、震える。


これが、トップレベルの演奏者の実力なのか、と思ってしまった。



茉莉沙も茉莉沙で、夢中で打っていた。

脳の中が、少しずつ覚醒していく。


(あ、まずい!)

しかし、彼女は、スティックの流れを止めた。


「危ない…」

そう言って、茉莉沙は優月に、スティックを返す。

「ありがとうございます。本当に凄いですね…」

「どうも。感覚でやっただけなんだけども…」

そう言って、茉莉沙は、はにかんだ。



お世辞なしに、この実力はエグいな…と思う。

この人物を超える、沢柳律とは、本当に何者なのだろうか?





その後、優月と想大は、コンビニへ歩いていた。


「ファミチキ食べたい」

想大が言った。

「高くない?300円もするから、買えないや」

優月も、悲しそうに言う。

「それにしても、明作先輩、本当に凄いなぁ。ゆなちゃんを超えてるんじゃないか」

「鳳月ね…。どうだろう?」


ゆなの、実力も折り紙付きだ。

井土からも、絶大な信頼を得ている程に。


「この時間のファミマ初めてだな」

優月が、そう言って、店内に入る。



「妹に、ポテチでも、買おう」

店内に入るなり、優月は、ポテトチップスの袋を、カゴへ入れる。


「あれ?」

すると、レジに、茉莉沙が並んでいた。


彼女もコンビニに来るのか、と優月は思った。

それより…想大はどこだ?



「お願いします」

茉莉沙は、日用品のタオルと、サラダとドレッシングをカゴに、店員へ話しかける。


本来なら、快く返される返事。

しかし、その反応は、冷ややかなものだった。

「あれれ…キミ」


その声に、茉莉沙の鳥肌が立つ。

「えっ?」


「見ない間に、腑抜けたんだねぇ…」

感じの悪い話し方。彼女は、睨みつけるように、店員を見る。


「俺なら、10回は気づいてるよ。元トップ演奏者さん」

その店員の名は、沢柳律。御浦ジュニアブラスバンドクラブの打楽器奏者だ。


こんな所でまさかの再会…。


「トロンボーンは、どうだ?」

沢柳は、そう言って、商品をレジに通していく。

「楽しいよ」

茉莉沙は、不遜な声で、そう返す。

「へぇ。でも、打楽器は下手になってそう…」

「そんなことないよ。こっちでも、そこそこ叩いてる」


すると、沢柳はレジに通した商品を、前へ出す。

「お会計、680円です」

「ありがとうございます」

そう言って、茉莉沙は、小銭を出す。680円きっかりだ。

「ありがとうございまーす」

彼の声を無視して、茉莉沙は、商品をリュックの中に、入れる。


「じゃあ、初芽待たせてるので…」

「ああ。夏のコンクールに、会おうな。その時は、君の演奏を見られるのかな?」

「去年みたいに、順番が近くなるかもね」

茉莉沙は、そう言って、自動ドアへ逃げて行った。





(ありゃ…相当嫌われてるなぁ…)

茉莉沙の事情を、知っている優月は、そう言った。

彼のせいで、茉莉沙は鬱病に掛かった過去があるのだ。茉莉沙が、あそこまで難色を示すのには、それ相応のことをしたのだと、分かる。





しかし、優月はそんなこと気にしない。

「お願いします!」

「はいー」

そう言って、彼はポテトチップスを、レジに通す。

「君、メイのお友達?」

「はい。先輩です」

優月は、そう返事した。同じ制服、同じ時間帯に来ているのだから、吹奏楽部と分かるのも、当然か。


「沢柳さん、茉莉沙先輩と、お友達なんですね」

優月は、敢えて、何も知らないフリをする。 

「そう。クラブでの後輩」

一切、悪びれず、年上を後輩と言える辺り、どこか、ゆなと似ついている。


優愛や瑠璃では、礼儀正しいのに。何だこの差は、と思う。




「音ノ葉ちゃんが、会いたいって言ってたのに…」

「音ノ葉ちゃんですか?」

「そう。ウラのトランペット奏者なの」

ウラ、その言葉に、優月は反応した。


以前、優愛から聞いたような。


「ウラって、何ですか?」

つい、気になり、聞いてしまった。


「ウラはね、特に優れていて、特別な大会に参加する人の事を言うんだよ」

「凄いんですね」

「俺やメイは、なれなかったなぁ。いつか、なってみせるがな」

そう言って、拳を握りしめた。


優月は、もしかしたら彼は向上心が、暴走しただけなのかな?と思った。

その時だった。

「それでウラって、他には、誰がいるんですか!?」

想大が、訊いてきた。

「うーん。あとは、鈴木燐火(すずきりんか)って、オーボエ奏者の子だな。メイに、訊いてみな」

「はい!」

想大は、威勢良く返事した。



しかし、この『ウラ』という存在が、茉莉沙の血を、凍らせていく。

この言葉の意味は、すぐに分かるよ。多分。

[次回]

沢柳を越える『ウラ奏者』現る…。

焔のオーボエ奏者 鈴木燐火。


ありがとうございました!

ポイント、リアクション、感想、ブックマーク

お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ