表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
ポップル THE フェスティバル編
301/304

第24楽章 ポップル THE フェスティバル

――ポップル THE フェスティバル当日

 優月たち吹奏楽部は、朝から楽器をトラックに詰め込みはじめた。

「アドレナリン過多でも、これはキツイ」

「その体質は関係ねーだろ」

「エヘヘ…」

瑠璃はゆなと様々な機材を運んでいる。


「あーーーっ!終わったぁ!」

「終わってないです。ゆな先輩、頑張りましょう!」

「いえー、瑠璃は鬼!」

「鬼だったら吸血鬼がいいなぁ♡」

「…うぐ!」

瑠璃は持ち前の純粋さで、うまくゆなを扱っているようだ。


「むつみさんに見せてやりたい…」

「そうだね」

心音と広一朗は、ふたりをただ見守っていた。

「心音ー!手伝えー!この副部長!」

「ったぁく、古叢井ちゃん!代わるよ」

「あっ、すみません!」

女子も頑張っているが、男子も負けてはいない。


「…なるほど」

隼乃駿佑という男の子は、モノ運びに慣れているのか、着々と進めていく。指示通りに運ぶその姿は運送屋のようだった。

「抹月ちゃん、それお願い」

「ふたりで持つぞ、月館ー」

「わかったー」

紅愛と抹月も吹部経験者だからか、そそくさと楽器をトラックへ持っていく。


「…高津戸さん、持っていきましょう」

「あの、ビブはひとりじゃ難儀だ。ふたりで送り届ける」

「はいっ!」

美乃凛は威勢のよい返事で、楽器を軽々と運ぶ。孔愛にも似た剛力は、和太鼓で培ったものなのだろう。

「…今年は終わるの早いな」

優月は那珠葉と、小物楽器やドラムの脚を運んでいく。

「那珠葉さん、重くない?」

「重くないです」

那珠葉も意外と力持ち…ということはなく、普通にのしかかる重力に苦心していた。

「わっ、小倉先輩!」

「あ、久城さん」

「那珠葉!そこ代わって!」

「ええ?うん」

美心乃は腕に力を入れて、優月をアシストする。

「先輩、も少し上げてくださーい」

「え、まじ?」

(握力と身長が足りな…い〜〜〜!!)

優月は思い切り苦労しながらも、すべての楽器と機材を運び切る。


「海鹿さん、トラック出るから下がって」

「あ、はい!」

優月は美羽愛を後ろに後退させる。

(…2年の方が扱い大変かも)

彼はそう思いながら、バスに乗り込んだ。


「いない人、いませんか?」

「いないよ」

「挨拶します!お願いします!」

『お願いします!』

颯佚と心音のレスポンスの直後、バスがゆっくりと動き出す。

そして…道の駅 色桜(しきおう)へバスが動き出した。



 優月は3回目だな、と思いを巡らせる。イヤホンからは数年前のバラードが流れている。普段はポップスや東方ソングを聴いているが、何だか今は落ち着きたい気分なのだ。

(…来年はもうないのか)

落ち着いているからこそ、深い考え事ができる。

それは…卒業後、間もない未来のことだ。

もう引退まで1年もない。

楽器に触れられる時間も…もう残り僅かなのだ。


今まで吹奏楽部での2年間の思い出が、万華鏡のように蘇ってくる。どれも大変だったが楽しかった。

しかし…同じ本番にはもう2度と出られない。

そう考えると、少し寂しくも思った。



――道の駅色桜

 道の駅色桜は、色鮮やかな桜が見られる桜の名所として有名だ。その広場には少し大きな舞台がある。そこでは既に茂華高校の演奏が始まっていた。

「…重いなぁ」

「瑠璃ちゃん、持つの手伝うよ!」

「優月先輩、ありがとうございます」

優月と瑠璃が機材を運んだ時だった。


「やってんなぁー」

「だなだな」

日傘を差した白髪の女性と、男性にすれ違う。

(…えっ?)

優月は思わず、視線をその2人へ向ける。

(…日傘?白髪?あの声?)

ひとりだけ心当たりがあった。


その人物の正体はすぐに分かった。

「おやおや、ゆなったら苦労してんね」

「…むっつん」

トラックから物を吐き出させているゆなは、その人物に目を大きく開いた。

「やっほ!井土先生はどこだ?」

何故ならその人物が…井上(いのうえ)むつみと河又(かわまた)悠良之介(ゆらのすけ)だったからだ。

「…広一朗?知らない」

「そっか」

むつみは他の部員たちを見下ろす。

「めっちゃ部員入ったな。手伝おうかと思ったんだが、井土先生に許可取らないとだよな」

するとゆながトラックの荷台から飛び降りた。

「いや、手伝え。ゆらも手伝え」

とても後輩と思えない態度を取るゆな。しかしむつみも悠良之介も慣れっこだ。

「…分かった。日傘さしてくれた恩を返してやる」

そう言って、むつみはトラックの荷台へと転がり込んだ。

「新1年生と新2年生〜!私が下ろすの手伝うから、受け取ってね」

むつみが叫ぶように言うと、

『ありがとうございます!』

後輩たちがお礼の言葉を投げ返してきた。


「…よし、悠良之介!お前はブースまで楽器を運んでいくれる?」

「全然構わない」

悠良之介はそう言って、楽器たちを運び出す。

卒業後なのに、ふたりの連携力は以前よりも増している。それを見たゆなの頭の中で、ひとつの仮説が立てられた。

「なぁ、むっつんとゆらって付き合った?」

ゆなが無神経に訊ねる。

「…黙ってやれ!」

しかしむつみが慌てて誤魔化した。


そうしてOBOGカップルに救われながら、楽器や機材をステージ裏まで持っていけた。



こうして、取り敢えず楽器の運び出しが終わると、次は演奏の合間にチューニングだ。

「抹月、もう少し音を高く」

「いや、これが正常。私をいじらないでください」

「へへ、バレたか」

抹月とむつみは知り合いで、テントの中で仲良く話していた。

「…にしても、何人入ったんだ?」

「7人だった気がする」

「すごい入ったな」

抹月はそれを聞いて、小さく頷いた。まだ一桁といえど、弱小校は人数が少ない傾向にあるので、当然の原理なのだが。


その時、私服の広一朗がやってきた。

「おー!むっつん」

「井土先生、お疲れ様す!」

「ゆらくんにも会ったよ?もしかして…付き合った?」

すると彼は頬を赤らめ、核心を突くが如く尋ねた。

「…アハハハハハハハハハ」

それを聞かれ、むつみは突然、笑い出した。

「逆にそれ以外の何で、彼といるんです?」

そしてこう答えたのだ。

この答えで広一朗は何となく察した―――。



 一方、瑠璃と優月は打楽器の組み立てを終えて、茂華高校の演奏を聴いていた。

「かわいいだけじゃだめですかー?」

「……」

流行りのフレーズに、瑠璃のみならず、美乃凛も便乗していた。

(このふたりなら…なんか許せちゃう)

マジレスする優月は、そのまま美玖音の方を見る。やはりうまいな、と思う。ハイハットの処理ひとつひとつが完璧だ。

そんな茂華高校の演奏は、あっという間に終わった。


次は茂華中学校吹奏楽部の演奏だった。

(…やっぱり堀江くん、すごい)

玖打は打楽器なのだが、鍵盤楽器も自在に演奏している。隣の瑠璃を見てみれば、うまーいと褒めていた。

(…流石全国レベルの奏者)

優月は、玖打が有名であることを知っている。

 だが、何かが足りない気がした…。



そして時間は矢のように過ぎ去り、東藤高校だ。

『優月先輩、頑張ろうね!』

『瑠璃ちゃん…』

(全然緊張してないの凄いなぁ)

いよいよ、楽器を構え本番が始まる――。






最後まで読んで頂きありがとうございました!

作中で使用する曲のリクエストだけでなく、アドバイスや感想は大きなモチベーションになります!総合ポイント100point 目指しております!

 良ければ、リアクション、ブックマーク、感想、評価をお願いしたいです!

 また吹奏万華鏡では、個性的な奏者たちの物語や、他では絶対に見られない日常、様々な目標に向かう物語を日々更新しております。

多面的に見られる物語を、これからも楽しんで頂ければ嬉しいです。

 次回もお楽しみに!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ