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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]地区コンクール大会 本編
30/209

仲間団結の章

こんにちは!

今回は、バリバリ吹奏楽やっていくよー、のお話しです!

最後まで読んでくれると嬉しいです。





キャラクター紹介


古叢井瑠璃(こむらいるり)

茂華中学校編主人公 2年生 打楽器パート


伊崎凪咲(いさきなぎさ)

2年生 クラリネットパート


香坂白夜(こうさかはくや)

3年生 フルートパート


榊澤優愛

3年生 打楽器パート


指原綺羅莉(さしはらきらり)

1年生 打楽器パート


陵セルビア

1年生 ユーフォニアムパート



この物語はフィクションです。

人物、学校は全て架空のものです。


また、実際の曲を使う場面が、ございます。


メトセラⅱ〜打楽器と吹奏楽のために〜

茂華中学校。

6月の中旬、いよいよ合奏が、始まった。

自由曲は、『メトセラⅱ』だ。


「オーボエは、もう少し、音程上げてください!」

「はい!」


「ペットも、ハリを強くしてください!」

「はい!」


各パート、顧問の笠松による指導が、続いていた。



「はぁ…」

瑠璃は、結局、鍵盤楽器や小物専門で、優愛とは別れてしまった。優愛は、例年通り、ティンパニやスネア、和太鼓など、扱いが少し難しい楽器だ。


それでも、瑠璃は優愛と同じ楽器を、やりたかった。



先月、入部した指原綺羅莉(さしはらきらり)も、タンバリンやボンゴ等の、小物楽器を担当している。



「はい!では、もう一度、合わせます!」

大会は、1ヶ月後。瑠璃達は、既に、合奏を始めていた。




マレットを持つ瑠璃の手が、少し震える。

「おねえちゃん」

その横には、真剣な表情で、スティックを構える優愛。



その時、1年前のある会話が、脳裏に甦る。

『私、優愛ちゃんとおんなじ楽器をやりたい!』

『いいよ!』



入部する前に交わした約束を、彼女は覚えているのだろうか?







練習終わり、瑠璃が笠松に呼び出される。

「古叢井さん、打楽器のソロなんだけど」

「はい…」

「今年は、古叢井さんもやってもらおうと思いまして…」

そう言って、笠松が、楽譜を渡す。


「おぉ…」

それを見た瑠璃は、目を光り輝かせる。

渡された楽譜は、和太鼓のソロだ。優愛1人では足りないのだろう。



実は、曲中に、和太鼓を数人がかりで打つソロが、あるのだ。徐々に激しくなっていくところが、特徴らしい。


「古叢井さん、できそうですか?」

その問に、瑠璃は静かに頷く。

優愛と、ようやく同じ楽器が、できる。

そう思った。






その日の翌日。

「瑠璃ちゃん、和太鼓やったことあるの?」

事のあらましを聞いた優愛が、そう訊ねる。

「ないよ。だから、分かんなくて…」

「そっかぁ」

すると、瑠璃に、少し太めのバチを渡す。

渡された彼女は「ありがとう」と言うと、和太鼓の方へ歩き出す。


目の前にあるのは、長胴太鼓と呼ばれる大きな太鼓。皮や淵を叩いて音を出す。



「それで?」

瑠璃は、満面の笑みで、彼女を見つめる。

「えっとぉ」

しかし、優愛も、人に教えられるほど知識が、無いようだ。



助けを求めようとも、笠松は、締太鼓という太鼓を、指原に教えている。



仕方ない、と優愛は我流を教えることにした。

「バチが重いから、まずは、手首と腕を使ってやってみよ」

「はーい」

瑠璃は、そう言って、バチを腕いっぱいに、振り下ろした。

ドン!!と厳かな音が、音楽室の空気へ、染み渡る。


「大きいかな」

優愛は、困ったように笑うと、彼女と同じバチを手に取る。

「この部分は、音が少しずつ大きくなっていくから、最初は手首を使って振ろう」

元より優愛は、人に教えることを、想定して、練習しているわけでは無い。

今教えているアドバイスすら、自信があるとは言えない。


「じゃあ、こう?」

瑠璃は、手首を振り、トコトコと皮を震わせる。

次第に、腕に力が入ったようで、バチが大きく振り下ろされていく。

ドコ!ドコ!ドコ!ドコ…!!


先程とは違う、どこか賑やかな音が、こだまする。

「うまいね」


それを見た、笠松がこちらへ歩み寄ってくる。

「えへへへ…」

瑠璃は、照れながら笑った。


「でも、もう少し、音を小さくしたほうが…」

笠松が、苦笑しながら、そう言った。


「あ」

手首が無意識に動く中、彼女が見たものは、笠松に、話しかけようとした他パートの生徒だった。


「あっ、ごめんなさい」

瑠璃は、恥ずかしそうに俯いた。




翌日。木管パートの教室。

クラリネットパートの伊崎凪咲が、オーボエパートの友達と話していた。

「ソロが、難しいよぉ」

そう言ったのは、オーボエパートの3年生、新村久奈。


「先輩、オーボエの腕、凄いじゃないですか!」

そんな彼女に、凪咲が褒めるように言う。

「そう?」

「はい!」

「でも実際は、東藤高(とうこう)の、オーボエの人と同じくらいなんだよね」

「えっ?あの…白髪の女の子ですか?」

新村久奈のオーボエは、部内でも評判が、高いのだ。

「うん。何が言いたいって、そんなに実力が、高いって訳じゃないってこと」

「そんな…!弱気にならないで下さい!」

凪咲が、そう言うと「ごめん」と彼女は、オーボエを吹き始める。


どこまでも続く伸びやかな音。

きっといい結果が出せる、凪咲は、そう思いながら、リードを噛んだ。

少し苦い。



そして、クラリネットを吹く。優しい音がした。

木管パートの教室に、クラリネットやオーボエの音が、次々と響きわたった。



そして、合奏の時間。

「はい、そこの入り!もう一度!」

笠松が、手で、久奈を示す。

「フーッ」

久奈は、繰り返し、もう一度、オーボエを吹き出す。


少しづつ安定してきているな、と部長の香坂は、思った。


「はい!全員で、もう一度!!」

『はい!』


伊崎も、スッとクラリネットを構える。コンクール大会が、近いからか、少し落ち着かない。


今年も金賞を、獲るんだ、と。




練習が終わり、下校の時間。


「瑠璃ちゃん、コンビニ行かない?」

帰り支度をしていた瑠璃に、優愛が話しかけてくる。

「えっ?優愛おねーちゃん、バスでしょ?」

「ううん。塾行くことになったから。30分も時間あるし…」

「じゃあ…行く!」

そういうことなら、と瑠璃は行くことにした。


「さっちゃんは?」

すると、優愛が指原の方を見る。

「私は、バスなので、お先に失礼します」

「そっかぁ。バイバイ」



校舎を出た2人は、並んで歩く。

「2人で歩くの久し振りだね」

優愛がそう言った。

「うん。ゴールデンウィーク以来だね」

「打ち上げの時にも同じこと言ってなかった?」

「言ってたっけ?」


コンビニは、緩やかな長い坂を上った先にある。

中学校から近いので、生徒にとっては、人気の場所だった。


「そうだ!」

すると、優愛が両手を前に出す。

「今日の合奏で、ちょっとミスってたじゃん?」

「あぁ…」

瑠璃は、恥ずかしそうに笑う。


すると、優愛が両腕を、太鼓を叩くように、振る。

「あれね、右右左の順で叩くんだよ」

「えっ?」

瑠璃も、彼女を真似るように、腕を振る。

右、右、左…と腕が、空を切った。


「そうそう!」

「ちょっと難しいや」

すると、優愛が「駄目だよ」と言う。

「金賞獲って、小林先輩と付き合うんでしょ?」


え、と瑠璃は思わず、両手で口を塞いでしまった。

「なんで知ってるの!?」

「えーっ、凪咲ちゃんから聞いたよー」

「凪咲からぁ」

瑠璃の全身から力が、抜ける。


「なんで、私に言わなかったの?お祝いにアイス奢ってあげる!」

「ほんと!?」

「うん」

「やったぁ!」

そんな2人の絆は、暁の淡い空へ、溶けていった。




「いただきます」

瑠璃は、チョコミント味のアイスを、舌で舐める。すーっとすっきりした食感に、チョコの甘さが丁度いい。

「おいしーっ!」

瑠璃は、目を猫のように、細め、頬を手で押さえた。

「瑠璃ちゃん、チョコミントが好きなんだね」

優愛は、そう言って、購入したおにぎりを、口に入れた。


「私の家さ、妹がいるんだけど、全部食べられちゃうから…」

「へぇ。瑠璃ちゃんは、大変だね」

「うん」

コーンを口に放り込んだ瑠璃は、優愛を見る。


「優愛おねーちゃん、文化祭でさ…」

「茂華祭ね」

「今度こそ、皆の前で、ドラムやりたい」

瑠璃が、そう言った。

「…そっか。ドラムかぁ。2年生だから…」

「さっちゃんに、負けたくない!!」

そう言って、瑠璃は、少年のように笑った。



「負けないよ。瑠璃ちゃん」

しばらくして、優愛はそう答えた。


「それよりも、まずはコンクールだよー」

「うん。ソロと鍵盤、頑張る!」

瑠璃は、そう言って、大空を見上げる。少し赤みがかった雲。


絶対に、良い結果を叩き出す。絶対に。

次回

茉莉沙と沢柳再会。トロンボーンとパーカッション…



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