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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
ポップル THE フェスティバル編
299/304

第22楽章 合同練習での再会

1週間後――

「…茂華高校」

優月は1人で校門前に佇んでいた。

「…確認確認」

そのまま吹部のグループラインを見ると、チャット欄に要項が書かれていた。

《朝9時に茂華高校の音楽室で集合》

今は8時30分。早く優月は来すぎてしまった。

 その時、メールの通知音が鳴る。彼は即座に反応して、その人物のある返信を呑み込む。

「…入るか」

それだけ言って、優月は音楽室へと入った。 



♬…音楽室…♬

「美玖音ちゃん、おはよう」

「優月くん、きたきた。おはよう」

優月は音楽室でくつろぐ美玖音を発見した。

「相変わらず早いね」

「親の送りが早かったんだ」

優月はそう言って、近くのスペースに荷物を下ろした。

「…そういえば、後輩は何人入ったの?」

その問いに、美玖音が嬉しそうに笑う。

「…ふたり!超優秀なふたりが新たに、我がパーカッションに加入してくれましたー!」

「…へ、へぇ」

意外といるなぁ、と優月は開いた口が塞がらなかった。


その時だった。

「…おはようございます」

無骨な少年の声が、優月の脳裏を深々と刺す。

「おはよう。茂華中学生だね?何パート?」

一方の美玖音は、容赦なく言葉を浴びせた。

「…打楽器だ」

「私たちと一緒だね」

「そうか。あ、下手くそなやつだ」

「…堀江くん」

失礼なことを平然という少年、その名前は堀江(ほりえ)玖打(きう)だ。玖打は優月のことをなぜだか、下に見ている反応をする。

「堀江くん?もしかして…ソロで全国に行った?」

「はい。そうですが?」

「へぇー。イケメンだね」

美玖音が取り敢えず褒める。

「俺、年上には興味ないんで。でも、あなたからのお世辞は有り難く頂きます」

「へ、へぇ。玖打くんは同級生がタイプ?」

「いえ全く。どちらかといえば年下。いわば、ロリコンみたいなやつですね」

「へぇ、意外」 

玖打の意外な本音に、美玖音が目を見開いていた。

(ロリコンねぇ……)

優月も意外だな、と彼を軽く睨んだ。


しばらくすると、他の部員たちで音楽室は溢れかえった。

「瑠璃せんぱーい!お久し振りでーす!」

「久し振り!秀麟くんとはまだ付き合ってる?」

「付き合ってるに決まってるじゃないですかー!彼とは絶対に結婚までするので!」

「結婚……いいなぁ…」

優月はそんな会話を聞いて、結婚かぁ、とありもしない可能性をこじつけて、妄想をする。

(僕も小さい時は、優愛をお嫁さんにしたいなんて思ったっけ……?)


「中学生からの交際で結婚まで続く可能性、約1%」

その時、誰かの低い声が、優月の妄想とふたりの会話をぶち壊した。

「えっ?」

瑠璃と希良凛に口を挟んだ人間、その人物は色黒でいささか、高身長であった。髪も少し白く瞳は銀。どう見ても、外国人のようだった。

「…私は絶対結婚します」

「どうだろうな、ギルティ」

その男子の名前は優次(ゆうじ)というらしく、美玖音直下の後輩であった。


(…変わった1年だな)

時間ギリギリに来たゆなもそう思った。



 そんな形で、まずはパート同士の顔合わせが始まった。パーカッションパートは当然、東藤高校のふたりに主導力がないので、美玖音が取り仕切る。

「…まずは茂華高校からでいいかな?」

美玖音の言葉に、数人の奏者が頷いた。

「……さて、自己の何を紹介しょうか…」

しかし彼女は、自己紹介のネタを考えている。確かにな、と優月も少し考えつつも訊ねる。

「…去年は『読んでほしい名前』だったよね?」

「うん」

彼の問いに美玖音は頷いた。

「…じゃあ、今年もそれにしよっか!」

「おー…」

「名前、学校、読んでほしい名前でいいかな?」

『はーい』

そう言って、パーカッションパート同士の自己紹介が始まった。


……というわけで美玖音から自己紹介が始まった。

「朱雀美玖音です。茂華高校ですが、出身校は神平中学校です。名前は美玖音ちゃんとか、親近感ある呼び方してください」

「田中碧美です。茂華高校で出身校は御浦中学校です。名前は何でもいいです。よろしくお願いします」

(…何でもいいか。こういうのが1番困っちゃう)

優月はそう思いながら、碧美の方を見る。

そのせいで、優次という男の子の情報を聞き漏らした。

「…優次(ゆうじ)と呼んでください。よろしくお願いします」

(優次ね…)

すると美玖音が手をたたいた。

「…今回は1年生で優次くんがいます。あと1人だけ1年生が入ってますが、茂華高校からは以上です」

美玖音が締めくくると、今度は東藤高校だ。


 優月が何も言わず、立ち上がる。

「小倉優月です。東藤高校で出身は茂華中学校です。優月かよく優々(ゆゆ)と言われますので、どちらかで呼んでください。よろしくお願いします」

早くもなく、遅くもないスピードで言葉を紡ぐと、次はゆなが立ち上がった。

「鳳月ゆなです。東藤高校で出身は冬馬中学校です。ゆなって呼んでください。よろしくお願いしまーす」

軽い声で自己紹介を終えると、瑠璃の方を見る。

「はい、古叢井瑠璃です。東藤高校で出身は茂華中学校です。瑠璃とか瑠璃ちゃんって呼んでください。よろしくお願いします」

すると、かわいい~、と美玖音が笑う。ちなみに美玖音と瑠璃は仲良しだ。

瑠璃は隣に座る那珠葉へ声をかける。

「那珠葉っち、いいよ」

「私も?」

「うん」

「分かった…」

すると那珠葉が突然、立ち上がった。

「小皷那珠葉です。東藤高校で出身は水戸内原第一中学校です。なずとかなずはちゃんって呼んでください。よろしく…お願いします…」

必要なことだけを言って、那珠葉は恥ずかしそうに黙り込んだ。


「最後は茂華中学校かな?」

「はいー」

すると希良凛が立ち上がった。

「指原希良凛です。茂華中学校で出身は御浦小学校です。さっちゃんとかさっしーとか、希良凛ちゃんって呼んでください」

(…私と小学校が一緒)

碧美は希良凛の顔をまざまざと見る。

(……そういえば、2つ下に希良凛ちゃん、いたな)

碧美と希良凛は以前、面識があった―――。


「末次秀麟です。茂華中学校で出身も茂華小学校です。秀くんと呼んでください。よろしくお願いします」

秀麟が終わると、ツンとした雰囲気を醸し出す少年が、突然立ち上がった。

「…堀江(ほりえ)玖打(きう)です。茂華中学校で出身も同じく茂華小学校です。呼び方は正直…何でもいいです」

すると彼は浅く頭を下げた。

「よろしくお願いします」

淡々と緊張もしない玖打。本番慣れしている故か。

「…では、練習をちゃちゃっと始めますかね」

『はーい!』

パーカッションパートは毎年、コミュニケーションを重視している。すべて美玖音の手腕だ。



「…那珠葉ちゃんは、カバサだっけ?」

「はい」

「瑠璃ちゃんは…合同だとコンガだよね」

「うん!」

1年生の那珠葉は当然の如く、目立たない小物楽器だ。優月と瑠璃はボンゴとコンガなのだが。


 一方、ゆなと美玖音は上級者ということもあり、去年のようにドラムを演奏している。自身が鳴らす音とは圧倒的に違う、高質な音になんだか気後れしてしまいそうになる。

「…ゆなちゃん、そこのリズムは四分だよ」

「いーよいーよ!どうせバレないって!」

美玖音とゆなはすっかり打ち解けているのか、もう適当に会話をしていた。


「ぐぅーっ、僕もドラムやりたーいっ」

優月が悔しそうに言うと、瑠璃も同意するように頷いた。

「私も。あとマレットで音でっかくしたい!」

「…ふふ、マレットを強奪してやろうか…」

優月が悪い顔で言う。だが冗談だ。

「いいね!やっちゃえー」

瑠璃もそれを分かって、思い切り便乗していた。



一方のドラムはやはり皆の目を引いていた。

「うまいな」

すると玖打が、ゆなと美玖音に話し掛ける。

「…私がうまい?当たり前でしょ」

褒められたと思ったゆなが鼻の下を伸ばす。

「…違う。ゆなさんじゃない。朱雀先輩の方だ」

しかし、その賞賛の先はまったく違っていた。

「あ、ありがとう。全国レベルの子に言われると、もっと頑張れちゃう」

美玖音は喜びつつそう言った。

「…ぐ、なんだと?」

「俺もできますよ。でも叩く強さが乱暴なんです。天性に頼り切りの典型的な例だな」

悔しがるゆなを置いて、玖打は希良凛たちの方へと戻った。


暇だな、と優月は、優次のところへ向かった。

「…ゆ、優次くん。大丈夫?」

もちろん瑠璃同伴でやってきた彼。その声は純粋な心配に満ちていた。

「俺ですか?」

「あ、うん」

地を這うような低い声。思わず優月は身震いしてしまった。

「何を言いますか?できねばギルティですよ」

しかし彼は余裕なのか、そんなことを言う。

(ギルティ…有罪(ギルティ)

すると、彼はマレットを自在に動かす。燃え盛る炎のような動きが、鍵盤を深く鳴らす。ビブラフォン特有の涼やかなメロディーが、優月の度肝を抜いた。

(…う、うう、うま!?)


(この子が…花琳ちゃんの言ってた…優次くん)

この優次という少年。のそっとしているように見えて、機敏な手首使い、そして鋭い勘の持ち主であった。


まさか…まだ美玖音並みに、驚かされる奏者がいたとは。

新たな発見と再会を繰り返しながら、午前の練習は終わってしまった―――。






最後まで読んで頂きありがとうございました!

作中で使用する曲のリクエストだけでなく、アドバイスや感想は大きなモチベーションになります!総合ポイント100point 目指しております!

良ければ、リアクション、ブックマーク、感想、評価をお願いしたいです!

 また吹奏万華鏡では、個性的な奏者たちの物語や、他では絶対に見られない日常、様々な目標に向かう物語を日々更新しております。

多面的に見られる物語を、これからも楽しんで頂ければ嬉しいです。

 次回もお楽しみに!


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