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吹奏万華鏡 【1周年記念制作中!】  作者: 幻創奏創造団
ポップル THE フェスティバル編
295/312

第18楽章 初練習は教室で…

――翌日。

練習の正式な1日目を迎えた。

「…隼乃くん、小皷さん、高津戸さん以外の愉快な仲間たち!各教室で基礎練習をやっていただきたいです」

広一朗はそんな部員たちに、開口一番こう言った。

「略してイカ焼き」

その言葉に、颯佚と心音が頷いた。


「1年1組は打楽器とトランペットとフルート」

どうやら打楽器も入るらしい。

「1年2組は残りの皆様で!レッツゴー!」

広一朗の指示が終わったタイミングで、優月が指摘の声をあげる。

「井土先生、打楽器はなにを?」

「えっと…基礎練習してください。パッド使って!基礎合奏で茂華ふたりにやらせますから」

それを聞いたふたりは頷くと同時に、気合いが入った。



1年1組教室。

「…瑠璃ちゃんって1組だったんだ」

「そうなんですー」

基礎打ちの為、メトロノームの音がスマホから響く。カッカッと無機質な音が、スピーカーを介して耳へと届く。

「優月先輩、肩に力を抜いてください」

「え…っ?」

「普通にリズムキープはできてます。だけど、このままじゃ疲れちゃう」

「あ、うん」

優月は強張らせた肩の力を、一気に脱力へと持っていく。するとパッドの上を上下するスティックの動きは、より流麗となった。

「おぉ…」

何だか、少しラクになったような気がした。


「私と同じですね」

すると瑠璃はそう言った。

「肩に力が入るから、動きがぎこちなくなって、更にテンポが狂う所が」

それを聞いて、優月は、はぁ…とため息を吐く。

「確かに、そうだね」

と言いつつ、瑠璃の方を見る。彼女は何だか必死そうだった。


「瑠璃ちゃん、ひとつ気になったんだけど…」

「ん?はい?」

「…敬語慣れてないよね?」

「えっ?」

優月が訊いた瞬間、瑠璃は頬を赤くした。

「……」

そして黙り込む。何だか恥ずかしそうな顔をしていた。

「大丈夫?」

それを心配して、優月は追及の言葉を投げ掛ける。

「…だ、大丈夫です」

しかし声も言葉も不自然極まりなかった。

「…もう僕にだったらタメ口で大丈夫だよ」

見かねた優月が、こう言葉を投げ掛ける。

「…ほ、本当?」 

「うん。優愛…ちゃんからもタメ口だし」

「やったぁ!」

そう言って彼女は喜んでいた。その高ぶった声を聞くに、許可されたことが、よほど嬉しいのだろう。



(…瑠璃、まさか…)

しかし、それを遠目に見ていた紅愛が違和感を感じる。

「紅愛ちゃん?」

「あっ?」

そんな表情に気をかけた咲慧が訊ねる。

「どうしたの?」

「……」

(この人、小倉先輩のこと好きなのかな…?)

しかし紅愛は無視して、咲慧のことを考え始める。紅愛は、優月と咲慧の仲がよいことを既に知っている。


「…加藤先輩」

「ん?」

すると紅愛が、咲慧の耳元まで近づいた。

「加藤先輩って…小倉先輩のことが好きですか?」

「えっ?」

当然、咲慧は困惑の声を上げた。

「ど、どうして…?」

「いえ、なんとなーく気になりまして…」

紅愛の声に、嘘を返す隙はない。恐ろしい後輩だ。

「…優月くんはただの友達だよ」

だが、彼女は真実のみを返した。

「……」

咲慧の眼を紅愛はジッと見る。その瞳の中には、焦燥も濁りも何もない。

「…そうですよね」

だから紅愛も自然に返した。


「き、急にどうしたの?」

咲慧が思わず、質問の意味を問う。

「いえ。少し気になったので」

その佇まい、口調からも、これ以上追及する隙がない。そして、なぜか彼女の前では嘘はつけない。そんな異質な存在こそ、月館紅愛だった。


そして、この時から紅愛は見抜いていた。

優月と瑠璃の未来と運命を――……。




 その頃、休憩室は日心と広一朗が話していた。今後、変える楽器について、相談をしていたのだ。

「…私は金管であれば助かるのですが」

「高津戸さんが金管ねー…」

広一朗は1枚の紙を取り出す。

「去年は井上さんが抜けオーボエが、明作さんが抜けて久城さんがボーン、ユーフォは河又くんが抜けても海鹿さんがいます。その中に入るのも良いですが、チューバとかも助かりますね」

「志靉の務めだったものか」

日心が鋭い声で言う。大橋(おおはし)志靉(しあ)は今は退部してしまったものの、チューバ奏者であった。

「ええ、ほかには…」

そう言って、彼は少しの間考え始める。

(チューバは'アテ'がいるし、去年いなくても成立はした。ポップス中心なら、こちらを優先するべきか…)


そう言って彼が出した答え。

「…バリトンサックスの可能性もあります」

しかし予想外の言葉を受け、日心は「えっ?」と驚く。

「何ですか、それ?」

「大型のサックスで学校に2台だけあります。ホルンよりは高い音域を担いますが、音は非常に目立ちます。それに、あなたはずっと太鼓をたたいてても、疲れない体力もあるので、恐らく天職ですね」

そんな進言を受けて、とりあえず日心の楽器は、ホルンからバリトンサックスへジョブチェンジとなった。



 次に広一朗は駿佑を呼び出した。彼は弦志望の予定だったが、バイオリンやチェロ、コントラバスしか弾けないとのことで、再度楽器は考え直しとなったのだ。

「隼乃くん、隼嶋中ではバイオリンしかやってなかった?」

「はい。ギターとかジャンジャン弾くの、あんまり好きじゃないんですよね…」

躊躇うように駿佑は言う。

「…なるほど。なにか希望はありますか?」

そんな彼に、広一朗が訊ねる。

「希望……」

駿佑が考え込む。

「…やはり低音がいいです」

「ほんとう?」

「はい」

それを聞いて、広一朗は安心した。

「低音がいいなら、チューバとかは?」

「チューバ…。小学生のときに楽団で吹いてました。それなら、少し練習すれば戦力になれると思います」

彼の言葉は渡りに船だった。

「ほんと!大丈夫?」

「はい。低音ならお任せください」

「それなら、好きなチューバを選んで練習してくれる?」

「はい!」

(やっぱり、コンバスとかチェロなら、低音やりたがるだろうね)

ちなみに、広一朗は彼の返答を予想していた。


 最後は那珠葉だ。彼女は短髪を揺らしながら、広一朗へと歩み寄る。

「えっと…やりたいパートはありますか?」

広一朗は当たり障りのない優しい声で問いかける。

「…えっと、」

優月にも似た低身長。天邪鬼混じりな顔がしおれる。

「?」

広一朗が首を傾げつつも、彼女の問いを待ち続ける。

「…ギター、弾きたいです」

「え?」

しかし返ってきた問いは、驚きのものだった。

「ギターおもいっきり弾きたいです」

「えっ…?フルート…じゃないの?」

広一朗はつい、我を失いそうな顔をする。

「…はい。フルートは抹月ちゃんがいるし、岩坂先輩が何だか怖そうだし…」

(あはははは…)

その理由に、何だか広一朗の肩の力が抜けた。

「…それで、おウチにエレキギターとベースがあったから、それならおウチでも練習できるかなぁ、って」

那珠葉は細い指を上下へ動かす。はやく弾きたい欲に掻き立てられているのだと分かる。

「…なるほどね。大丈夫だけど、ギターの出番なかったら、パーカッションに回っちゃうよ?」

「全然もんだいないです。雅楽(ががく)で太鼓やってたので」

「雅楽…。そう」

何だか今年は、異色の能力を持つ1年生が多いな、と広一朗は思った。


「…取り敢えず、全員の楽器が決まったし、明日からは基礎合奏やらせますか…」

那珠葉が出たあと、広一朗は静かに言った。



一方で、基礎練習を終えた優月たちは雑談していた。

「…えっ?瑠璃ちゃんって鍵盤できるの?」

「はい」

「意外…」

「1年のとき、ずっとやらされてたもんねー」

「ちょ、みこちゃん!それは言わないで!」

「えーっ、鍵盤できる子いるの助かるー」

金管パートと打楽器パートはお互い、仲良くなれそうだ。


その時、日心が教室へと入ってきた。

「私、ホルンからバリトンサックスへ鞍替えとなりました」

「おーっ、バリトンか…」

日心の宣言に、颯佚が反応する。

「この学校にもあったんだな」

「2台しか存在せぬようですよ」

「ふーん…」


すると今度はトランペットの孔愛が反応する。

「あ、ボクはバリトン吹けるよ」

「……は?」

なんで?と日心が訊ねる。

「中2のコンクールで、退部してしまった子の代わりに吹いてたから」

「虚妄だろ?」

「ひでぇ」

そのやり取りに、美乃凛と瑠璃が苦笑した。

「教えてあげよっか?」

「…嫌だけど頼む」

日心が素直に頼むと、孔愛が「オッケー」と嬉しそうに頷く。


(……こっちもか)

会話を聞いた紅愛は心の中で、静かに呟いた。





最後まで読んで頂きありがとうございました!

作中で使用する曲のリクエストだけでなく、アドバイスや感想は大きなモチベーションになります!総合ポイント100point 目指しております!

良ければ、リアクション、ブックマーク、感想、評価をお願いしたいです!

 また吹奏万華鏡では、個性的な奏者たちの物語や、他では絶対に見られない日常、様々な目標に向かう物語を日々更新しております。

多面的に見られる物語を、これからも楽しんで頂ければ嬉しいです。

 次回もお楽しみに!


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