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吹奏万華鏡 【1周年記念制作中!】  作者: 幻創奏創造団
ポップル THE フェスティバル編
293/314

第16楽章 自己紹介 [後編]

「…鳳月(ほうづき)ゆなです。楽器はパーカッションです。今まででいちばん印象に残ったあだ名は…ゆなっ子くらいですかね」

そんな彼女に、咲慧が大きく反応する。

「ちょ…!ゆなっ子!それつまんない!」

「それしか呼ばれなかったでしょ?」

「…じゃ、中3のとき、何て呼ばれてたっけ?」

「あ?」

するとゆなの表情があからさまに変わる。

「…?」

優月が興味ありげに前へ乗り出す。ゆなの表情はいつになく、赤くなっていた。

「…そ、それは…」

「言っちゃいなよ」

「……クソすぎるあだ名だし、対面で1回も呼ばれたことないぞ?」

「いいじゃん」

(そんなに言いたくないあだ名なのか?)

ゆながここまで拒絶する。それは何だか珍しい。

「私が中学の時、言われていたあだ名、それは…」


ゆなが『知られざるあだ名』に、ここまで躊躇う理由。

それはかつての過去だ。


「…鬼女(きじょ)

そして…彼女はやっとの思いでそう言った―――。



「き、鬼女?どうして?」

当然、何も知らない外野たちは疑問を唱える。

「…それは、私が元々付き合ってた彼氏に裏切られたとき、怨念で…ちょっと…まぁ…ね!」

そう言って、ゆなは有耶無耶にするように、可愛らしい笑みを浮かべてきた。

「!?」

発言含め、明らかにまともではない。後輩一同は当然の如く、沈黙を頭に被る。

「…ま、まぁ、何をしたかはしりませんが…次は2年生ですね!」

広一朗はそう取り仕切るが、ゆなの表情はニヤニヤと笑っていて…悪魔を潜めたような笑顔をしていた。



「次は2年生です。2年生は前に立ってくださーぃ」

広一朗の指示で2年生の数人が立つ。ふたりもいなくなってしまったからか、更に少ないように感じてしまった。

「3年生と一緒じゃ、つまらんからなあ。2年生は…名前、楽器、最近はじめたことでいいかな」

さすが井土先生、と優月は思う。

「まずは國井くんから」

「はい、國井(くにい)孔愛(こうま)です。楽器はトランペットです。最近はじめたことは…寄生大戦FPSゲームです」

「まじでゲームしかないな。それにあの気味悪いやつか」

そんな孔愛に冬一がツッコんだ。

「悪かったな」

孔愛が不満そうに言うも、冬一はふんと前へ向き直る。


(これか、グロいやつか…)

優月はネットで見てみたが、何だか気持ち悪い。銃で寄生モンスターを倒すらしいが、かなりグロく難易度も高いらしい。


仕切り直して、次は冬一だ。

諸越(もろこし)冬一(とういち)です。パートはクラリネットです。最近はじめたことは…ネットでフィットスポーツですね。よろしくお願いします」

運動不足か、と優月は思ったが、孔愛の趣味丸出しの答えよりは、全くマシな気もしてきた。

次に美羽愛が前に立つ。

海鹿(うみしか)美羽愛(みはね)です。パートはユーフォ…ユーフォニアムです。最近始めたことは…インスタはじめました」

よろしくお願いします…そう言った瞬間、広一朗が話しを切る。

「はい!高津戸さん、少し待って!」

広一朗が突然、乱入してきたのだ。 


「…えっと、ここの吹部。実は数ヶ月くらい前からインスタはじめまして!」

「へ?インスタ?」

そこに見知らぬ男子生徒が反応した。1年生なのは確定だ。

「それで、撮影しても良いか、許可を取りたいので、あとで書類も渡しますね!」

そう言って、彼は日心に視線を向ける。

「高津戸さん、どうぞ」


…と言われた日心が前へ立つ。

高津戸(たかつと)日心(にこ)です。パートはホルンだけど…新しく何か楽器をはじめたい、と近頃は考えてます。それで、最近始めたこと…それは…」

そこで途端、日心が黙り込んだ。

「……」

しばらくすると、日心は大きく口を開く。

「剣道をはじめました」

それを聞いて、2年生全員が驚きの声をあげる。

「ふぁっ!」

「それで天龍早退してたん?」

「そういうことよ」

日心は天龍メンバーに詰められようが、全く表情を崩さない。なんだか、ゆなに似てきた気がする。


「え、私は知ってたよ」

その時、少女の明る気な声が、2年生を突き刺す。

「…い、巌城!」

巌城美乃禀だ。彼女はそう言って愉しそうに笑う。

「なんなら、日心さんが剣を振ってるトコ、いっかい外から見えたし」


天龍の練習するホールと、町民体育館は併設している。道場はホールの外からでも見れるくらい近いので、普通に美乃禀からは目撃されていた。


「お、驚かせる作戦が潰えた…」

落ち込む日心に、孔愛が呆れたような視線を向ける。

「日心は多趣味過ぎるだろ。茶道に、太鼓に、剣道って…」

「そりゃー、私は日本文化が好きだから!」

これが高津戸日心という人間だった。



「最後に1年生かな。とりあえず、名前、やってみたい楽器、出身校、あとは特技なんかをお願いします」

そう言って、1年生がぞろぞろと並ぶ。優月は瑠璃を凝視する。やはり、身長が低いので何だか、埋もれているように見えるが、可愛さだけは群を抜いている気がした。

「これ、俺等の年の時より、ぜんぜん当たりだろ」

「だね」

颯佚の言葉に、優月はさり気なく同意した。



「…月館(つきだて)紅愛(くれあ)です。パートはアルトサックスにしょうかと考えてます。」

そう言って前へ立っているのは、青みがかった髪をした大人びた女の子。抱擁するような顔立ちは、なんだか優愛を強く思い出させる。

「出身校は東大内中学校です。それと得意なこと、それはやっぱりバイオリンです。小学生のときからやってて、正直言ってプロとも演奏したことあります」

その自慢とも取れる言葉に、辺りはザワザワと反応する。ちなみにそれを知るのは、元々同じ中学だった美羽愛だけだった。

「よろしくお願いします」

そう言って、王女のように静かな仕草で後ろへ消える。お嬢様か?と一瞬は少女を疑う。


次に前へ歩んだ人物。それは白い髪をまとい、赤い瞳をした少女だった。

東雲(しののめ)抹月(もつき)です。パートはフルート一択です。というか、去年は部長をやってました」

その輝かしい経歴に、優月はここに居ることが恥ずかしくなる。

「得意なことは、持久走ですね。走りながらジャンケンがめちゃくちゃに好きです。よろしくお願いします」

そう言って後ろへ下がる。ヤバすぎるだろ、辺りから驚愕の声が湧いた。


「…久城(くじょう)美心乃(みこの)です。パートはトロンボーン希望です。出身校は茂華中学校です。得意なことは…バドミントンです」

(そーいえば、小学校の校庭でこの人、バドミントンよくやってたなぁ)

懐かしむように優月が思う。

ちなみに、優月と美心乃は同じ小学校だ。

「よろしくお願いします」

そう言って、礼儀正しく腰を折った。さすが茂華中学校出身、と言わせる礼儀だった。

(バド…、私に負けてたけどな)

しかし抹月は、ひとりあくどい笑みを浮かべていた。


隼乃(はやの)駿佑(しゅんすけ)です。パートはまだ決まってなく、バイオリンかチェロを……」

そんな言葉に、広一朗が話しを切る。

「ここ、バイオリンとかチェロは固定してないんだよ。ギターとかベースも、弾けるようになってほしいんだけど、大丈夫かな?」

「…わお、そうですか」

気まずい空気になってしまった。どうやら、駿佑はギターは弾けないようだ。

「それは、まぁ…、検討しまして、出身中は隼嶋中学校です。得意なことは、んーっ…」

再び沈黙が訪れる。

「…ゲームがめちゃくちゃに特技です」

そう言って彼は「よろしくお願いします」の言葉を残して、後ろへ引き下がった。


(…困ったねぇ)

しかし広一朗は、ひとり困っていた。


すると今度は瑠璃が前に立つ。

「えっとー、古叢井(こむらい)瑠璃(るり)です。パートは打楽器をやりたいなと思ってます。出身の中学校は茂華中学校です。特技は…」

(やばい、何も考えてなかったぁ)

瑠璃は焦る。特技など特にない…というか、中学では太鼓しかやってこなかった。

「…特技は…ダンスをすることです」

そして無難な答えがこれだった。


((確かに))

優月と美心乃はそれで納得ができた。なぜなら、文化祭で踊っていたのだから。


「よ、よろしくお願いします。仲良くしてね」

そう言って、瑠璃は中途半端に小さな手を開閉する。それだけで女子からは騒がれていた。


次は脇にいた女の子だった。とも言える顔をした彼女は、恥ずかしそうに口を開く。

「…こ、小皷(こつづみ)那珠葉(なずは)です。パートはまだ…決めてないです。出身校は水戸内原中学校です。特技は…アイスの盗み食いです」

(嫌な特技だなぁ)

颯佚が心の中で呆れる。しかし美羽愛や日心などの2年女子は楽しそうに笑っている。

「よろしくお願いします」

やはり、那珠葉はシャイなのか、すぐに自己紹介が終わってしまった。


最後に、髪を長く縛った女の子が来た。太い眉の下、細く可愛らしい瞳の形をした彼女は、自信満々と自己紹介をはじめる。

巌城(いわき)美乃禀(みのり)です。パートはトランペットをやります。出身は西大内中学校です」

特技は…、次の瞬間、彼女はとんでもないことを言う。

「和太鼓を小さい時からやってます。他にも特技はあるけれど、これだけは絶対に負けないものです」

その声には確固たる自信が込められていた。そしてその特技を、この空間で言う事がどれだけ凄いことか、彼女はきっと熟知している。

「…この部含め、この学校のひとたちの中でも、和太鼓なら"いちばんうまい"つもりです」

そして…こう宣言した。この部内にも、かなりの太鼓奏者がいるはずなのに、まだ未確認の奏者をも超えていると、そう宣言したのだ。


それに辺りが沈黙した。バイオリンが誰よりもうまい、という紅愛の意趣返しなのか、本気の発言なのか分からない。だが、新1年生が皆の前でプロを気取るなど、中々の技術でできるものではない。

当然、承認欲求の強いゆなの怒りに火をつけた。

(…そんなに、うまいんだぁ)

ゆなは自身の経験と実力に自信を持っている。中学の時、和太鼓部で鍛えた能力があるから。


その時、日心が静かに口を開く。

「巌城…」

てっきり口留めさせるつもりかと、優月は思っていた。

「確かに…。あなたがいる間は、私がどんなにうまくなっても…副将止まりであろう」

しかし彼女は、あろうことか進言してみせた。

「…よろしくお願いします」

強い意味を含めた雰囲気のまま、1年生の自己紹介は終わった。


「…さて、ではでは…このあとのことについて、話していきましょか〜」

広一朗が次の指示を飛ばそうとする。



そして…美乃禀の本当の能力は、部員を絶望させることになる―――。





最後まで読んで頂きありがとうございました!

作中で使用する曲のリクエストだけでなく、アドバイスや感想は大きなモチベーションになります!総合ポイント100point 目指しております!

良ければ、リアクション、ブックマーク、感想、評価をお願いしたいです!

 また吹奏万華鏡では、個性的な奏者たちの物語や、他では絶対に見られない日常、様々な目標に向かう物語を日々更新しております。

多面的に見られる物語を、これからも楽しんで頂ければ嬉しいです。

 次回もお楽しみに!


【次回】

ピアノが導く…。 心音の過去。

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