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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]地区コンクール大会 本編
29/208

新入部員 強化教育の章

今回も、瑠璃メインの話です。

今回は、少し切り替えが下手に、なったかもしれません。ごめんなさい。



この物語はフィクションです。

人物、学校名は、全て架空のものです。

茂華中学校。


2年3組の教室で、古叢井瑠璃(こむらいるり)は、伊崎凪咲(いさきなぎさ)と話していた。

「えっ?新入部員?」

すると、凪咲が「そうなの!」と両手を、ぽんと叩いた。

「どこで、そんなの…」

「職員室で、笠松先生と中北先生が、話してた」

「へぇー」


誰だろう?上手いのかな?と瑠璃は、心のどこかで思っていた。

しかし、この人物こそが、瑠璃へ悲劇を、呼び起こすことになるのだ。


「それよりも、瑠璃は好きな人とは、どうなの?」

凪咲が、何気なくそう訊いた。

「両思いだった」

だから、瑠璃も自然と、答えてしまった。



「あ」

瑠璃は、両手で、口を覆う。

「言っちゃったぁ…」

その赤い瞳が、微かに揺れる。


「良かったじゃん!小林想大先輩でしょ?」

「う、うん…」

しかし、凪咲は、そのようなことは、すぐに忘れるだろう、と瑠璃は思った。

凪咲は、忘れっぽい。


「それよりも、いい加減、太鼓やらせてもらえないの?」

凪咲が、そう訊いた。

「うーん。そろそろ先生に、言いに行こうかな?」

「おお…直談判か」

瑠璃は、去年に『ティンパニ破壊事件』から、太鼓を触らせてもらうことが、なくなったのだ。


当時、大人しくて、妖精のような彼女が、突然の破壊行為に、みんなが震えたに違いない。



「そういえば、新入部員は、2人らしいよ」

「2人もいるんだね」

この時の瑠璃は、どうでも良さそうな気持ちだった。

何故なら、先輩の榊澤優愛と、同じ楽器を、やらせてもらえれば、何でもよかったから。






東藤高校の放課後


「氷空ちゃん、楽譜!」

部長でトランペットパートの雨久朋奈が、1年生の黒嶋氷空に、楽譜を渡す。

「わぁ…すごい」


渡されたのは、今年の自由曲だ。曲名は『百年祭』。茉莉沙が、全員の個性を考えて、選んだものだ。


一方、パーカッションパート

「和太鼓、以外と少ねぇな」

1年生の、鳳月ゆなが不満げに、言う。

「こっちに、少しある」

小倉優月が、そう言って、楽譜を見せる。


「譜読みからかぁ」

田中美心も、そう言って、鍵盤を使う楽器の譜読みをしていた。

美心は、鍵盤楽器しかできないという理由で、他の楽器は、優月や、ゆな、茉莉沙に、任せている。



「井土先生、私もパーカッションやるんですか?」

トロンボーンパートの、茉莉沙が不満気に言う。

「うん。明作さん、切り替え上手いし…」

褒められた茉莉沙は、「分かりました」と頬を、赤く染めた。

茉莉沙は、元プロレベルのパーカッション奏者だ。

優月たちも、コンクールへ向けて、動き出していた。








一方の茂華中学校。


「はい!皆さん、新入部員が、2人来ました!」

大きな声で、顧問の笠松明奈が、そう言った。

その言葉に、音楽室が騒然とする。

「誰だろうね?」

「うん」

優愛と瑠璃も、その新入生を、多少は気になっているようだ。

「でも、優愛ちゃんなら、誰とでも仲良くなれそうだけど…」

笑いながら、瑠璃が言う。

「…そんなことないよ」

優愛は、そう言って俯いた。


「だって、優愛ちゃんが、誰かと喧嘩してるとこ見たことないよー」

と彼女が、そう返すと、2人の生徒が、前へ来る。



「あ…」

すると、1年生の方から、ざわめく声がした。



前に立ったのは、2人の男女。 

「陵くんと指原さんです」

笠松がそう言って、手のひらで、2人を示す。


『セルビア…』

誰かがそう言った。

「セルビアってなに?」

瑠璃が訊ねる。

「分かんない」

しかし、小学校が違うので、優愛が知るはずもない。








「こんにちは」

指原と呼ばれる女の子が、瑠璃に話しかけてくる。

「こんにちは」

彼女も、何気なく返す。


陵セルビアと言う、名前のインパクト強めの男の子は、ユーフォニアムパートに、決定したそうだ。



「指原さん、なんて呼べばいいんですか?」

「えっ?」

「いや、お名前お聞きしていなかったので」

「私は、1年2組の指原綺羅莉。指原だから、さっちゃんって呼んでください」

指原綺羅莉(さしはらきらり)は、そう答えた。


「さっちゃん…」

すると、今度は優愛が話しかけてくる。

「さっちゃん、や!」


「2人は、仲が良いんですか?」

瑠璃が、そう訊ねる。

「瑠璃ちゃんと同じ、転校生なんだけど、よく図書室で、喋ってるんだー」

優愛は、そう答えて笑った。

次に、指原が瑠璃を見る。

「お名前は?」

その言葉に、

「古叢井瑠璃」

と彼女は、答えた。



「さっちゃん、いつ転校してきたの?」

「えっと…つい3ヶ月前」

「へぇー」

「ここ、修学旅行が楽しいみたいで、早く行きたいの」

修学旅行か、と瑠璃は、口の中で、その言葉を転がした。



「えっと、前の学校では?何部に?」


「吹奏楽部です!」

「…楽器は何をしてたんですか?」

「打楽器です」

 

指原のその言葉に、瑠璃の目が見開かれた。

「えっ…?せ、専門は?」


答えによっては、優愛と同じ楽器が、できないかもしれない…。


「タンバリンでした」

指原は、人差し指を立てて、答えた。


「っえ!!」

瑠璃は、ショックを受けたように、よろめいた。


「だ、大丈夫?」

優愛が、心配して駆け寄る。



優愛のパートは、太鼓などの皮楽器類だ。優愛と一緒に、演奏したいという気持ちは、『あれから』も変わらない。



「えっと、綺羅莉ちゃんは、何の楽器を、やりたいの?」

「えっ…?何が、あるんですか?」

予想外の答えに、優愛は困りながらも「全部」と答えた。

「うーん…。じゃあ」

優愛は、瑠璃をチラリと見る。それは、何か合図をしているかのようだった。



その刹那、

「け、鍵盤!グロッケンやらない!?」

瑠璃が、叫ぶように言う。

「い、いいですよ」

指原は、そう頷いた。急にどうしたんだろう、と思いながらも、瑠璃に、ついていくことにした。



グロッケンシュピール。鉄琴のような楽器をしていて、音階は、ピアノと、ほぼ同じだ。


ドドソソ…ララ…ソ…


瑠璃は、手慣れた要領で、きらきら星を叩いた。


「さっちゃんも、やってみて」

とバチであるマレットを、彼女に、渡した。


しかし…


ドドファファ…ララ…ファ…


音が、ズレている。前の小学校では、何をやっていたのか?鍵盤は、壊滅的に下手だった。



「あんらら…」

優愛は、少し残念そうに、言った。しかし、瑠璃の目は、死んだ魚のようだった。


「次は…」

優愛はそう言って、パーカッションセットと呼ばれる打楽器の群を、指さす。


ティンバレス、ボンゴ、シンバル、ウッドブロック等、合奏で使う打楽器が、集合している。



「えっとね…」

瑠璃が、譜面を広げ、スティックを手に取る。

「何から、やりたい?」

「えっ…と」

瑠璃が、ボンゴという楽器を指さす。


ボンゴとは、手で叩く太鼓が、2つ並んでいる楽器のことだ。皮を打つ場所によって、音が変わる。



すると、瑠璃が、スティックを振り下ろす。

ポン!と甲高い音がした。


「本来は、手で叩くんだけれど、手が痛いだろうから」

そう瑠璃が説明した。


その時、

「私、やったことあります!」

そう言って、指原は目を輝かせる。


「ほんと!」

「私、合同演奏で、任されたことがあって…」

合同演奏という言葉に、優愛が少し反応する。


そういえば、最近、優月に連絡していないな…と。



「やってみる?」

瑠璃は、初めての後輩が、できたことが、嬉しいようで、随分と張り切っている。


ポポンパポンポンパンポンポン!


指原という人は、器用な連打は、打てるらしい。


あまりにも、正確だったものだから、瑠璃は、少し取っ掛かりを覚える。

「なんか、この曲、聴いたことある…」

「ですよね!」


瑠璃と指原が、話に花を咲かせる。

優愛は、それを邪魔することなく見守った。

 


優愛は、10月の文化祭 『茂華祭』での演奏会が終われば、引退だ。

今は、5月の最後。



最後に、瑠璃と同じ楽器を演奏したい。

優愛も、同じくそう思っていた。






しかし、そんな絆の吹奏楽は、彼女によって、打ち砕かれる。

文化祭で…。

次回

コンクール練習![茂華中学校編]


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