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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
立ちはだかる脅威 文化部発表会編
224/229

150話 優月の暴走!

文化部発表会が始まった――。

『それでは、次は美術部の発表です。どうぞ』

『はい!』

部ごとに活動の方針などを報告後、スライドなどで絵を披露していた。

「想大くん、緊張してきたー」

「何がだよ?あ、吹部か」

想大はフフッと不敵に笑う。

「楽しみにしてるからな。2年になった君の演奏は初めて聴くから」

「あ、そっか…。頑張る!」

着々と進み、箏曲部が終われば休憩だ。その間、早急に準備となる。



「ゆゆ、久遠使ってパーカッションセット準備しといてよ!」

「使って…って、あ、筝馬くん!」

「はい!」

やはり動きが速い。筝馬も優秀な部員となってきた。スピーカーの接続を確認後、すぐに始まる。

『優月くん、緊張するねー』

『そうだね…』

咲慧の言葉にも、優月はピクピクと震えていた。今ステージの中心には誰もいない。ただ真っ暗な闇の中である。

その時、

『次は吹奏楽部の発表です。どうぞー』

誰が言うと、唐突に音楽が流れる。


この音楽が入場の合図だ。約19人は静かにステージへと集まった。

『…くらいね』

『何やるんだろう…』

客席からは期待と不安の混じった雰囲気が漂っていた。優月も静かにスティックを構えて楽譜を見つめる。


【月に叢雲華に風】

突然に、オーボエとクラリネットの音が鳴り響いた。静かなメロディーに辺りの空気が揺らぐ。イントロを吹き終えると、唐突に全ての音が鳴り響いた。全ての楽器の音が迸る。最高の音だ。

(よし…)

優月自身も安心しながらAメロを迎えた。静寂を表すようなクラリネットの音。そこへむつみのオーボエが乗っかった。

そんな静寂を破るように、優月はタムタムを叩く。その音を食い破るように、様々な管楽器の音が飛び出してくる。安定した心地よいリズムに、目の前の観客たちは手拍子をする。

(盲目、消えた安らぎに…)

音に合わせ、スネアとタムを同時に打つ。振り下ろしたスティックが、流れるリズムに重なるように弾ける。シンバルを何度も連打すると、お待ちかねのサビだ。

ここが1番盛り上がる。茉莉沙のトロンボーンが跳ね上がる。少し嬉しそうな彼女は、いつにもまして音が大きい。きっと皆に見てもらえることが嬉しいのだろう。ホルンの旋律に重なるようにして、音は再び静寂へと包みこまれる。むつみのオーボエが感情豊かに響いた。彼女の白い髪がスポットライトを受けて、誇らしげに(きら)めいている。

少しの空間を開け、再びスネアを乱打する。その動作から流れるように、両足を慌ただしく動かす。ぱしん!という金切り音と共に、再び管楽器の豪奢な音が寄り添う。再びシンバルの連打を越えると、2Aへと突入する。

孔愛と氷空のトランペットが甲高く吠える。その音は耳へ残るほどに心地よい。2番も難なく突破できた。そして最後のサビ。

(…ふふ)

成功ばかりしてるので、優月は何だか楽しくなってきたのだ。だが思い切りたたいていると、腕にじんわりと痛みが走る。

(…やばぁ、腕が痛い。でも楽しいから)

だが、アドレナリンなるもので、優月は一気に巻き返す。最後の一音も容赦なくたたくと、トランペットのソロへと入った。


ドラムをたたいて興奮状態に入った優月は、マイクを手に取る。そして音が完全に切れると同時、スポットライトが彼へ当たる。

『みなさーん!楽しんでますかぁ!?』

次の瞬間、優月は本能のまま叫んだ。

『はぁーーい!!』

すると3年生の方から、やや大きめな声が飛ぶ。しかし優月は目の前の台本通りに、

『聞こえませんよ!?楽しんでますかぁあー!?』

再度叫んだ。

『はぁーーーーーーいっ!!!!』

すると全学年が一斉に叫んだ。どうやら優月の熱が伝染したようだ。

『皆さん、手元のペンライトで楽しんでいってください!さて、先ほどの曲は「月に叢雲華に風」でした。この曲は東方好きなら知ってる曲かと思います。さて、ご好評につき僕もメイド服です』

そう言って優月は、白いスカートをわざとらしく揺らした。

『東方好きだぁーーー!』

『メイドだぁー!!』

するとオタクであろう男子たちが口々に叫ぶ。

『それでは、次の曲にいきましょう!』


優月の動きで全員が楽器を構えた。優月はマイクを即席ステージの上へと置いた。


【恥ずかしいか青春は】

次の瞬間、井土のギターが不意打ちのように響く。そしてゆながシンバルをたたいた。次の瞬間、心地よいメロディーが響いた。

『みなさん、拍手する所があります!ご一緒にどうぞ!』

井土がギターを弾きながら、スタンドマイクへ叫んだ。 

『っいぇええーいっ!』

すると井土が大好きな男子生徒が叫ぶ。まるで男子校か、と優月はマレットを構えつつ苦笑した。そして早打ちを見せる。ビブラフォンの綺麗な音が響き渡った。少しミスしてしまったが。

それでも音は止まらない。まるでミスを帳消しにするかの如く、茉莉沙のトロンボーンが唸る。志靉のチューバの低音に乗るように、様々な楽器が音を鳴らす。

拍手の時は突然に訪れる。優月はタンバリンを上段に構えた。皆に見える位置でたたく為だ。

たん、たん、たたんたん!

原曲に沿った手拍子を、優月と井土が打ってみせる。筝馬も手が空けば手拍子に回った。そして、サビが唐突に襲う。ゆなの激しいドラムのリズムが響き渡る。ゆなの技術は規格外だ。どんなに激しいリズムでもやり切る。そんな安定した音楽のまま、音はクライマックスを迎えた。

『有限だから最高だ♪』

優月は頭の中で、音楽をそのまま流すことができる。だからこそ、アドリブを交えたリズムも息を吐くようにこなしてしまう。

ゆなのロールと同時、咲慧のアルトサックスと颯佚のテナーサックスが煌めいた。音は急降下し突然にギターへと引き継がれる。そしてドラムのリズムで曲は終わった。


そして次にめくった楽譜の面にあったのは…

【私は最強】

この曲は春isポップン祭以来だったか。それでも何度も練習したので、音自体全く褪せることはない。

井土のギターが止まると、ドラムと金管楽器のきらびやかな音が手拍子を誘う。優月はビブラフォンをたたきながら、タンバリンをたたく筝馬を見守る。メロディーはサビへと猛進する。チャイナシンバルの華やかな音が、ゆなのロールへと引き継がれる。苦しい顔ひとつしない彼女はやはり凄い。悠良之介と美羽愛のユーフォニアムの音も豊かに聴こえる。いつもは美羽愛を真似る悠良之介だが、昨日のことがあってか今日の演奏は全力さが伺えた。

軽快なドラムのリズムとトロンボーン、そして咲慧のアルトサックス。この3つが音を形作っていたのだった。咲慧は全力で音を吹き付ける。指をひっきりなしに動かす。そのメロディーは段々と終幕へと向かってゆく。スネアが吠えると拍手も白熱する。その音はやがてシンバルへと変わった。ようやく終わった音は心地よいものであった。


【UNDEAD】

そして音は突然、激しいものへ。何度も歌詞を繰り返す。ゆなのツインペダルが鳴ると同時、音がAメロを奏で出る。井土のボーカルと共に、音は強調されていく。

『なーぜ、消えないレッテル、イェス、要はコンプレックス♪』

優月は鳴らされるカラオケ音に、原曲と重ねながらスティックを振っていた。スプラッシュシンバルが小気味良く響いた。そしてチャイナシンバルを打つと、あっという間にサビだ。サビは咲慧と颯佚、トランペットは氷空と孔愛の音が特に目立つ。そして音はアウトロメロディーへ入る。

(Parse&Future"AntitheParse♪)

ユーフォニアムの音が弾けたかと思うと、更に音は高潮する。2番も難なく突破しサビを繰り返せば、残りはアウトロだ。優月は最後の伸ばしでチャイナシンバルを連打した。その後すぐに、優月はマイクを手にする。


『皆さん!次で最後です!最後はーぁ』

すると背後から男の子が現れる。

『どぅーもぉ!祇桜(しおん)でーす!元吹部で井土先生から、一緒に歌おうと誘われましてね〜…』

すると、どっと笑い声が沸いた。彼は井土とサプライズ出演であった。故に部員からも聞かされていなかった。

『では、百花繚乱いきましょー!!』 

すると唐突に、スピーカーからカラオケ音が鳴り響く。ゆなは笑いながら右足を踏む。

(この人いなかったら、もっとドラムやってたのに…)

そう、降って湧いたこのボーカル。

しかし彼が定期演奏会で助っ人に入るというのは後の話しだ。



「あー、疲れたぁ」

午前の部が終わり、吹奏楽部員と祇桜という少年は、井土に集められた。

「はい、お疲れ様でした。良かったと思います」

「な、咲夜ちゃん」

「うっ…」

篤之助はただケラケラと笑っていた。

「さて、彼は元吹部の祇桜くんでございます。元々やってた楽器はー?」

すると祇桜は、

「チューバです!!」

と元気はつらつな声で答えた。


「!?」

志靉が即座に反応した。彼女は10月で辞めるから、当てつけのように思ったのだろう。しかし美羽愛は彼女の固まった拳に手を重ねた。

「…まぁ、彼は定期演奏会の手伝いを、裏でやってくれるそうです!メイさん」

「宜しくお願いします!」

「よろしくお願いします!!」

「あわあわ、よろしくっす!」

そんな彼との邂逅。この存在が定期演奏会にて暗躍するのだった…。



「先生、ドラムの練習していいですか?」

「あ、メイさん!大丈夫だけどお昼食べといで」

「はい!」

「私、鬼の衣装持ってくる!」

「早く持っといでー!」

そして…午後の部も想像以上に凄いことになるのだ…。


【宣伝】

『さてさてー、打楽器ソロコンテストの章は、どれくらい認知得られてるかな?』

『楽しみー。優月先輩、早く』

『はいはい、え?』

しかしスマホを見て、優月と瑠璃は驚愕した。

『待って、108PV (ガチ)なんだけど…』

『…私、悪いことしちゃったかな…』

『瑠璃ちゃんは悪くないよ!』

まずい。思ったよりPVが増えない―――。


『まだブックマークも1件なんだあ…』

瑠璃は落ち込んでいた。

『ま、まぁ、瑠璃ちゃん!頑張って宣伝し…』

『ブックマークくださぁあいいっ!!!!』

その時、瑠璃が思い切り叫んだ。

『…う、うう』

肝心なところを取られた優月は、少し落ち込んでしまった。

(…あまりに不評だと、打ち切りとかになっちゃうからなぁ)

それだけ不安をこぼした。



【次回】 白鬼が暴れ狂う…。日心の本性…

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