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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
[1年生編]血迷う迷宮の楽章編
22/208

血迷う迷宮の楽章 【序】

こんにちは!


今回から、明作茉莉沙が主軸の話しが、4章続く予定です。茉莉沙は、いわゆる作中最強格の存在です。

そんな彼女に何があったのか、何故、トロンボーンを始めたのか?

最後まで見守っていただけると幸いです!


※この物語はフィクションです。

※人物、学校名、団体名は全て架空のものです。

ご了承下さい。




キャラクター紹介


【明作茉莉沙】

中学生。トップレベルのパーカッションパート

【初芽結羽香】

茉莉沙の親友。吹奏楽部でフルートパート

【沢柳律】

茉莉沙の教育係。将来有望のパーカッションパート

【港井冬樹】

小学生ながら、トロンボーンのトップ奏者

【速水玲芽】

御浦ジュニアブラスバンドの顧問

【阿櫻克二】

御浦ジュニアブラスバンドの副顧問

優月は、ひとり泣く茉莉沙に、駆け寄る。

「…大丈夫ですか?」

「きもち…わるい…」

優月に聞かれても、茉莉沙は肩を震わせ、泣くばかりだった。

しかし、何故、こんなにも大人しかった彼女が泣いているのか?


しばらくすると、茉莉沙が2人へ、

「ごめんなさい…」

と謝る。

大丈夫…と言おうと思ったが、これは帰宅時間は8時を過ぎるな、と優月と想大は覚悟した。


原因は、彼女のフラッシュバックに、あった。



茉莉沙は、優月と想大に、自分の過去を話すことにした。





ーー明作茉莉沙が、中学1年生の時ーー



「吹奏楽…かぁ」

図書室で、とある小説を読んだ、明作茉莉沙は、本を本棚へと、返そうと、手を伸ばした。


その時だった。

「…あの!!」

茉莉沙に、誰かが、話しかけてくる。その拍子に伸ばした腕が、ピタリと止まる。

「はい、」


すると、そこにいたのは、凛々しい瞳に、薄い唇をした女の子が、いた。

「…私も、その本、読みたいなぁ…」

「えっ?」

茉莉沙は、目を丸くする。


「…この…本ですか?」

シューズの色が黄色だ。同じ1年生だろう。

「そうそうそうそう!」

すると、丁寧な仕草で渡された女の子は、ニコッと笑う。

「…ありがとう…!…えっと…名前は?」


すると、茉莉沙は、

明作茉莉沙(めいさかまりさ)です」

と答える。

「…まりさ…ちゃん…、いい名前だね!!」

「ありがとー」

茉莉沙は、軽い口調で、そう言葉を吐く。


「私はね、初芽結羽香(はつめゆうか)って、言うの。よろしくね!」

「よ、よろしくね…」


初芽…良い苗字だなと、茉莉沙はふと思った。

昔、読んだ絵本に、そんな名前があったなぁ、と

思い出しながら。


「ねぇ、茉莉沙ちゃんも、吹奏楽、興味ある?」

「えっ?」

初芽が、茉莉沙から手渡された本を、見せる。

「いや、この本読んでたから」


彼女が読んでいた本は、吹奏楽部の、超強豪校が、全国大会金賞を、目指す話だ。


「…私さ、この中学校の吹奏楽部に、入ってるんだけどさ、コンクールの実績が薄くて…」

「ここら辺だと、茂華が強いらしいけど」

「詳しいね…」

初芽が目を丸める。驚いているな。


「…私は、御浦の吹奏楽団に、入るの」

「へぇ、パートは?」

すると、茉莉沙は「何にしたんだっけ?」と首を傾けた。


おいおい、覚えていないんかい!と初芽は、心の中で、突っ込みつつも、茉莉沙を羨ましい、と思う。


「…まぁ、いっか…」

そう残し、茉莉沙は、図書室を出ていった。



しかし、茉莉沙は、これが、地獄の門の入り口だということを知る由もなかった。




御浦ジュニアブラスバンドは、県で、1、2を争う御浦市の、吹奏楽の強豪クラブだ。

小学4年生から高校3年生までが、在籍していて、各方面から来る子供が、多い。

コンクールは、毎年金賞、アンサンブルコンテスト、略して『アンコン』は、各パート恐ろしいくらいの高成績を叩き出している。


そんなクラブに茉莉沙が、入った理由は、茉莉沙の両親が、そのクラブの指導者と、縁があったからだ。




それから、1週間後、茉莉沙は、御浦市の大きなホールに足を運んだ。


「こんにちは」

ホールのロビーで、受付を終えた茉莉沙は、ひとり、大ホールへ入る。

「…わぁ」


普段は、冷静沈着な茉莉沙も、目の前の景色には、驚きを隠せなかったようだ。

「…すごい」


今、まさに、ホールで合奏の最中だったようだ。

トランペットや、クラリネット、サクスフォンに、ユーフォニアム、ピッコロ等の、見知った楽器は勿論、ハープやコントラバス、そして、1人には多過ぎるくらいの、太鼓や、マリンバ等、目を輝かせる程の楽器が、ずらりと並んでいた。


様々な音が、一体化して、それは、もはやひとつの生き物だ。

音が生き物、と言っても過言では、ないくらいの演奏だった。



『おや、来たみたいですね!』

すると、指揮者の男性が、気配を察したように、振り向いた。

『明作茉莉沙さん、ですか?』

「はい!」

茉莉沙は、驚きつつも、声を張り上げる。


うん、と頷いた指揮者は、速水玲芽(はやみれいが)。ここの指導者、部活動で言えば、顧問、という立場だ。

「…監督の速水です」


すると、今度は、タムが鳴り響く。

ドォォォン!!と怪獣が地面を踏みつけるような轟音。茉莉沙は、ビクッと震えた。


どうやら、パーカッションパートのソロのようだ。



「…はぁぁぁ…」

シング・シング・シング、と、驚く茉莉沙をよそに誰かが、言った。

「…私は阿櫻克二(あさくらかつじ)と言います」

茉莉沙が、視線を横に向けると、50代ほどの男性がいた。

彼も、指導者のひとりらしい。


「阿櫻…さん…。よろしくお願いします」

すると、阿櫻が、彼女を一瞥する。

「明作さん、やってみたい楽器とか、あるかな?」


彼の言葉に、茉莉沙が、落ち着きを、失う。

「あっ……決まって…ません…」

実は、何の楽器を、するか、決めかねていた。

内心、トランペットでも、フルートでも、クラリネットでも何でも良かった。


「では、打楽器…パーカッションは、いかがでしょう?」

「…は、はい」

阿櫻の、何か含みのある瞳に、茉莉沙は、思わず押されてしまった。


しかし、後に、彼の判断は、彼女を狂わせることになる…。



見学後、実際に練習が始まった。


「…こんにちは。明作さん。私は、佐野玲那って言います。よろしくね」

少し、気の弱そうな女の子に、話しかけられた茉莉沙は、「よろしくお願いします…」と返した。


「佐野先輩って、どういう楽器をやってるんですか?」

茉莉沙が訊くと、玲那が、鉄琴を指差す。

「ビブラフォン…っていう楽器だよ」

「…へぇ」


ビブラフォンは、ペダルに付いている鉄琴のような楽器だ。

ペダルを踏むと、音が美しく響くのだ。

「…はい」


先端がフワフワのマレットを茉莉沙に渡す。

「ありがとうございます…」


茉莉沙も、ビブラフォンは、小学校の音楽の、授業で、何度か叩いたことがある。

ぽぉん…ぱぁん…と、鉄を叩いたとは、思えない優しい音が、響く。

「…あぁ」

懐かしさを、感じてくる。

「…たのしい」

茉莉沙が、そう言うと、玲那は「良かったね」と微笑んだ。


「…じゃあ、次は、あっちの方で…」

すると、玲那は、ドラムのある方へ指差す。


ドラムは、バスドラの上に2つのタム、ハイハット、スネアドラム、フロアタム、そしてクラッシュシンバルとライドシンバルが、付いているのが、本来のセットだ。


しかし、ここのドラムは、効率化の為か、タンバリン、スプラッシュシンバルやチャイナシンバル、ロータムという太鼓が、付属されていた。



「…たくさん」

茉莉沙は、思わず、そう言ってしまった。

全ての楽器を操るなら、相当な技量が要されるのだろう。


「…わぁ」

その時、男の子の朗らかな声が、聞こえてきた。

「…あっ」

茉莉沙は、深紅の瞳を、彼へ向ける。


『はぁ…、つれないなぁ。メイちゃん…』


「…!!」

茉莉沙は、男子の顔を見て、体が震えた。

冷静さを欠いてしまうほどの悪寒。


『はじめまして。俺は、沢柳律(さわやぎりつ)ってんだ。小学6年だ』

「私よりも…年下…なんだ…」

「何言ってんだ?無知な先輩なんて…後輩と同義だろう?」

「…!」

茉莉沙は、すぐに分かったらしい。この少年が、ただ者では、ないことを。



沢柳律(さわやぎりつ)

彼との出会いで、茉莉沙は、大きく狂っていく…。 

続く

読んでくれて、ありがとうございます!

次回も、この話の続編を載せる予定です。

良かったら、感想とブックマークをして、楽しみにしてくれると嬉しいです!


次回……沢柳律の恐ろしさ 編

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