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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
古叢井と矢野… 全日本吹奏楽コンクール編
205/209

【特別篇】 天龍の章

…本来、今日は投稿日ではないですが、長編版に繋がるストーリーを描いてみました!!

11月21日に公開される『打楽器ソロコンテストの章』是非読んでみてください!!


【※明日投稿  雄成に迫られる究極の選択とは…? 】

ドォン!ドドン!!

『はっ…!』

ホールへ、人々の掛け声が響く。

欅で作られた幾つもの和太鼓。まるで唸りを上げるように響いていた。

筝馬たちの締太鼓に追従するように響く太鼓の音。

『…そ~〜〜れ!!』

次の瞬間、ばん!!と音が弾けた。


練習はいつも8時30分に終わる。

『お疲れっした〜』

『お疲れ様でした』

筝馬と孔愛は、まだ練習している日心に話し掛ける。

「意気揚々。頑張ってるな」

「あ、筝馬!まぁな」

日心はフフンと笑い、丸太に近いばバチを掲げる。

「そりゃあ、茂華中学校への公演、決まったんだから、頑張らねば無作法と云うもの」

「瑠璃ちゃんか」

「ああ。もう1回、天龍に戻ってきてほしいなぁ」

日心は頰を赤らめ、何やら夢見ている。

「無理でしょう」

そこへ、孔愛は律儀にツッコんだ。

「なぜ故に?」

「茂華から東藤は、大内みたく近くないからね」

「それは…そう」

日心はガックリと肩を落とした。

「…確かに、瑠璃ちゃん戻れば、トウモロコシが戻るかもな」

筝馬の言葉に、孔愛が「はぁ…」と顔を渋めた。ちなみに、トウモロコシとは、クラリネット奏者の諸越冬一のことで、何故か2人は不仲だ。

「…瑠璃のこと、好きだったもんね」

日心が言うと、孔愛と筝馬は息を合わせたように頷いた。


そして、日心はこう訊ねる。

「…ねぇ、筝馬と孔愛は…大人になったら天龍やめる?」

「…」

孔愛は分からない、と言った。

「…俺はたぶんやめる」

そんな中、筝馬はこう言った。

「生者必滅。どんな活動にも終わりは必ず来る。その時が、いつかは分からない」

「…」

深い話しをされそうだったので、日心は、

「いつまでかかるの?その話」

と話題に冷水を掛けるように問う。

「…知らないな」

しかし、筝馬も首を横に振り返す。

「…はぁー」

孔愛は、早く帰ろうと歩を進めた。

「じゃあね、筝馬。銀之進を1人にできないでしょ?」

「大丈夫だ。母がいるから」

「そうか」

それ以降、この2人は何も話さなかった。


(…瑠璃)

バチを大きく規則的に振りながら、日心はあの日のことを思い返す。

『…じゃあ、あれやってみたい!』

3尺余りの大太鼓。手が血まみれになろうと、黙って練習していた彼女は、今に考えても異常だったと思う。

でも、今は違う。

『もう少し譜面を意識して、音量のバランスと基礎練をすれば上手くなれますよ』

先輩の孔愛に、なんとこう言ったのだ。

あの時からは大きく変わってしまった。

(…人って何があるか、分からないな)

その理由を、日心はまだ聞けていない。


筝馬は、夜道を歩きながら誰かと連絡を取り合っていた。

信号の目前で、彼はその相手に返信する。

《瑠璃ちゃん、楽しみにしてるんだ》

瑠璃だ。

《うん!また私、和太鼓やってみたい》

《そうか》

筝馬は少し嬉しかった。

あの時…彼女の本音が聞けたあの瞬間が懐かしい。

『…私おっきいたいこ、やってみたい!』

『…えっ』

それが、彼女が初めて発した言葉だった。




数年前…

ドォン!!ドドドーン!!ドドンドドン!!

ホールに響き渡る大きな音。

それは、瑠璃の大太鼓の音だった。

『…やっ!!』

『瑠璃ちゃ…、いや、いいか』 

狂ったように叩く瑠璃には、誰も近寄れなかった。どんな事があっても叩き続ける彼女だからだ。

『…!!』

べちゃ!という拳と皮が弾けるような音。手に擦り傷を負おうと、瑠璃の手は全然止まらなかった。

『…瑠璃ちゃん、止めようか?』

『…うーん』

狂気に落ちた彼女の演奏は、誰も止める気にはなれなかった。幼くも彼女の成長を止めたくないから。


一方の瑠璃は、太鼓が楽しくて仕方がなかった。叩きつけた時に生じた音圧が、瑠璃の髪をゆらりと揺らす。お腹に響く感覚が気持ち良い。

だが、その一方で少し寂しかった。誰も話してくれないから…。

誰かに振り向いてほしい、そんな気持ちで、彼女はバチを振るっていたのだった。





…そんな太鼓は、今、大人の部(高校生〜大人)が使用している。あの大太鼓を使用したのは、子供だけでは、瑠璃だけだろう。

「…瑠璃ちゃん、また一緒に演奏できるかな…?」

日心はそれだけ言って、太鼓のバチを自分のケースへ入れる。かちゃん!と木材の心地よい音が響き渡る。

そして日心も、ホールを去った。



…一方の瑠璃は、忘れていない。

少し太いバチを振り、心地よい音に目覚めたあの時の記憶を…。 

それが、『全てのはじまり』だと言うことも…。


       【長編版に続く】

あの日…、ついに明かされる瑠璃の正体。

優月が、吹奏楽を始めた切っ掛けが描かれる。

優月と瑠璃。過去と現在、ふたつの物語が描かれる。




         長編版

        吹奏万華鏡0

      打楽器ソロコンテストの章


        11月21日 【FRI】


     □小説家になろう #吹奏楽 にて

     □吹奏万華鏡 特別ページ


        ー公開決定!!ー

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― 新着の感想 ―
過去編告知キタ――(゜∀゜)――!! 私共々、長々とお待ちしておりますので、どうかお体に気を付けつつ、どうかこれからも頑張ってくださいな
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