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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
想いよ響け!! 涙の東関東大会編
193/203

121話 東関東大会 [前編]

全国大会を決める大会。

東関東大会。

いよいよ始まる!! 


※最後、宣伝ありまーす by優月


では、物語をお楽しみ下さい!

東藤高校の顧問、井土広一朗は新たな本番への手続きで、土曜日も学校に来ていた。

「今日で全国大会が決まるんだな…、全国大会か」

パソコンを叩きながらそう言った。

すると不意に、この学校に来る前のことを思い出す。

『先生、厳しすぎます!もう部活やめたいです』

『ど、どうぞ…』

『ちょっとー!先生!?』

しかし、あの日のことは昨日のことのように覚えている。もう生徒を傷付けたくない。

「…まぁ、もう私には関係ありませんけれど」



いよいよ東関東大会本番だ。ここで金賞を取り、選抜されれば良いのだ。

毎年、神平中学校、日光学園中等部、常陸那珂中学校、横浜第一中学校、水戸内原中学校が、全国大会へ進む。茂華中学校は、その5つつのうちの1つに勝たねばならない。金賞を取っても選ばれなければ意味がない。


その緊張感は朝から張り詰められていた。

「やばい…、優愛お姉ちゃんからメールもらった」

「良かったじゃん」

古叢井(こむらい)瑠璃(るり)矢野(やの)雄成(ゆうせい)は楽器の運搬中、そんなことを話していた。

「…優愛お姉ちゃん、驚いてたよ。全国大会行けるかもって」

「ああ、まぁ、行ったら行ったで大変けどな」

いよいよ全国大会が現実味を帯びてきた。あの雄成がここまで言うのだ。演奏は神平と五分五分だろう。

あんなに努力したのだから。


東関東大会の会場だが、茨城で行われる。毎年そこで行われる。

『みなさん、おはようございます』

バスに乗ると、顧問の笠松が、スケジュール表を持って話し出す。

『おはようございます!』

「…現地についたら、すぐに楽器を下ろしてください。本番までそう遅くないので、モタモタしないように!」

『はい!』

バスの中は緊張の糸で張り巡らされていた。



茨城のホール。

「…緊張するせいで眠れなかった」

「それは結構」

普段は笑っている芽吹まで緊張している。

それは他の3年生も同じだった。

「オーボエの完全なソロは無いと言え、怖いなぁ」

美心乃が言うと、凪咲が彼女の肩をポンポンと叩いた。

「大丈夫よ。あんな練習したんだから」

「うん…」

やはり努力の分、緊張も深かった。

「…てか、ひとつ気になったんだけど」

「ん?どうしたの?」

「どうして遥篤君と知り合ったの?」

その問いに美心乃はふふっ、と笑った。

「…実はね、親戚が音楽家なんだ」

「え!?」

「オーボエ奏者。その人と慶光さんが知り合いだったの」

「へぇえ」

それは驚いた。

「それと、私の従姉妹の彼氏」

「っえ!?なーにー!?」

「驚きすぎね。まぁ、それで成り行きで聴いてもらったんだけど、そこでね…」

美心乃が溜息を吐き出す。すると凪咲がこう言う。

「…ねえ、もしかしてだけどさ、リードの調子が悪かったんじゃないの?」

「…今思えばね。確かに試聴用に良いリードは使えないし」

リードとは木管楽器に使うものだ。リードの原材料は植物の(あし)から作られる。息を吹き込むことで振動して音を発生させる仕組みだ。

このリード、調子の良い(アタリ)と悪い(ハズレ)がある。奏者は当たりのリードを大切に使うのだ。それはクラリネットも同じだった。

「…でも、今日は史上最高のリードとエリンジウム。今日の為に調子を良くしてきた」

こう言って意気込む美心乃。どうやら本来の元気を完全に取り戻したようだ。

「…私も最高のリードだよ。絶対に神平中には負けないから」

「私も最後まで戦う!青春(すべて)を賭けて!」

「ふふっ!」

ふたりは珍しく笑い出した。


「美心乃ちゃんの調子が戻ってよかったですね。鈴衛先輩」

後方に歩いていた後輩が、音織にそう言った。

「やはり、仲間には仲間が随一の薬」

「先輩、調子はどうですか?」

「好調。みるくちゃんは?」

「私も好調です!」

フルートの1年生、中畑みるく。彼女もフルートの実力は1年生ながら相当な実力者だ。ちなみに、演奏中に一気に集中力が上がる典型的なタイプだ。

「そこは、絶好調!でなくては」

「あー、そうすね!」

フルートパートも和んでいた。

こうして、茂華中学校吹奏楽部は本番を迎える。




その時、神平中学校も本番の前だった。

(…ふう)

「…相馬、緊張してんの?」

「…いや、全然。茂華には負けない。絶対に全国には行かせない」

冬深の濃紺の瞳には、怨念のようなものが写っていた。

(…私でさえ、できなかったことをあの人達は…)

冬深は今、怒りに呑み込まれていた。

その理由は瑠璃にある。

『やっぱり、1年であそこまで叩けるなんてなー』

鍵盤楽器だけをやるという運命を変えた瑠璃。自分の思い通りに、好きな楽器を演奏することが出来ていると思い込んだ彼女は、持論を否定された気持ちになっていたのだ。

(…私は負けない。絶対に)

だから、負けない。

自分の行く道から外れた者なんかに。

羨ましい気持ちを、勝利で誤魔化そうとしているのだ。

神平中学校にも、硬い緊張の糸が張り巡らされていた。



神平中学校から、先に本番だ。

順番は早い方だが、おそらく万全な状態だということを覚悟して瑠璃たちは、神平中学校の生徒を見つめる。

「…どれだけ上手くなってるかな?」

隣にいるのは伊崎凪咲。クラリネットパートで、クラリネットを吹く冬深を尊敬している。

「あの…冬深ちゃん、怖い怖い」

「大丈夫だよ。その子が吹くの少しだけだし」

「瑠璃は怖くないの?冬深ちゃんは打楽器も上手いんだよ」

その言葉に瑠璃は、にこっと笑った。

「うん。でもね、結局ひとりが上手くったって仕方ないよ。こうなったら皆と、どれだけ息を合わせられるかだね」

「…そう…かもね」

確かに、技術に加え表現力を鍛えられた茂華中学校は、地区内なら間違いなく無双の域だろう。

「…凪咲、これね優愛お姉ちゃんから言われたの…」

「何を?」

「…一度、相手を手放しに褒めれば、自分はどうすれば良いか見えてくる…って」

「手放し…」

次の瞬間、ステージから黄昏の光が差す。ここからはお喋りは禁止だ。最もふたりの声は、誰にも届いてないが。


(手放し…。榊澤先輩)

瑠璃は目をキラキラと光らせる。

今、瑠璃の視界には何が見えているだろう?

恐らく、ただ歴戦の怪物が目を覚ますとは思ってもいないだろう。誰よりも純粋で優しい。まるで自身の姉のような子。


(…優愛お姉ちゃん、頑張るからね)

凪咲の思った通り、瑠璃は期待に胸を膨らませていた。

(…私は全国に行こうなんて思ってないから)

ただその響きは非情なものだった。

『…欲が過ぎると失敗する。それくらい学べ』

諸越冬一。彼の言葉が、今になって蘇った。

それは小学生時代に言われたことだった。諸越が言うには、望めば望むほど失敗する。だから、結果はオマケ程度に考えろ、ということだった。

何故か、そんな思考が彼女の頭を支配した。

今、瑠璃は平常心を失い掛けていた…。



その時、神平中学校の本番が始まった。

冬深はグロッケンのマレットを構える。

(…必ず、今までで1番の演奏をする!)

トランペットの音が絶えた瞬間、素早い早打ちを見せる。その音は外すことなく正確。だが、いつもと違うことに、瑠璃たちは気付いてしまった。

その音は、今までの淡々とした音では無かった。魂のこもった連打だったのだ。

秀麟が息を呑んだ。

感情の籠もった演奏は、ここまで上手いのか?

全身の毛が奮い立つ。音は一瞬にも関わらず、ずっと聞いていたいと思うくらいの音。他の楽器よりも尚、目立つのだ。

(…すご)

そして、ユーフォニアムとトランペットの音。ふたつのソロがホールへ弾ける。

遥篤のユーフォニアムは別格だ。幼い頃から、父の影響で始めたユーフォニアムは、もはやプロ並みの実力だった。

あまりにも上手いので、茂華中の部員は全員、手に汗を握ってしまった。

そうだ、神平中学校も全国大会の常連校だった。

そして響くSクラリネットの音。その音に込められた激情は、観客席にいる全員の心を震わせる。

(…全国!!)

冬深だけ、ただ1人。茂華打倒を考えていたのは、彼女だけだった。そんな激情が、他の奏者より存在感を示していた。明確な嫉妬と決意だけが、彼女の真の演奏を底上げしている。

そして鍵盤だけではない。スネアドラムのロールやオーケストラチャイムを、一切のズレも無しに演奏してしまう。

この奏者、もしかしたら、悠介以上かもしれない。そんなことを考えてしまう本校の奏者がいた。

『…すごい』

つい瑠璃が声に出してしまうくらいには、上手いと思ってしまった。

このままでは、全国大会に行くなんて夢物語なのかもしれない…。

たった1人のパーカッション奏者の為に、瑠璃の感情は徐々に冷静なものになった。


神平中学校の演奏は、熱い余韻を残したまま終えた。

(…すごい)

瑠璃のみならず、凪咲もそう思った。

凪咲は、無意識にクラリネットだけを見ていたのだが、やはり冬深だけが違っていた。

(…やっぱり、すごい)

凪咲は冬深を素直に評価した。

全員で作り上げるはずの吹奏楽。しかし、それ以上の凄さが冬深にはあったのだ。

あの悠介に全く劣らぬロール等の技術力、遥篤に負けない表現力。やはり学校を越えて噂されるだけはあるな、と思った。


それからも、様々な学校の曲を聴いた。茂華(ここ)より何か足りない演奏をする学校や、神平のように上手い学校もあった。

そして、茂華中学校の本番も迫る頃、笠松が声を掛ける。

『…はい、行きますよ』

すると、部員25人は雪崩れるように、ホールを出て行った。


いよいよ、始まる茂華中学校の演奏。

「瑠璃先輩…」

「…緊張する」

瑠璃は、今までの練習の成果のせいで、尋常じゃない量の汗をかいていた。普段は本番に強い彼女も、全国大会を掛ける戦いには緊張する。

おぼつかない仕草で、楽譜をめくる。そこには数枚の写真が隠されていた。

「…先輩?」

「うん」

そのうちの1枚。フィルムカメラで撮った優愛との写真。その1枚を最前列に置く。

もちろん、五線譜に被らない絶妙な位置に、ぶら下がっている。

(…瑠璃先輩)

希良凜も、心配のせいでよく瑠璃が見えなかった。しかし、瑠璃の様子はいつもと違って見えた。


「…頑張ろうね。さっちゃん、秀麟くん」

『『はい!』』

瑠璃はそれだけ言って、チューニング済のティンパニを撫でた。

(行くよ…、全国大会)

瑠璃はようやく、心中でそれだけ言うことができた。


しかし、彼女の中の"本性"が目覚めようとしていた…。

【次回】

『うわぁぁああ!!』

心の中で絶叫する瑠璃。マレットを大きく振りかぶった。抑えつけていた狂気が、錯乱により失い掛けている。

しかし、その目には涙が浮かんでいた…。


そして…全員大号泣…

10月4日[土曜日] 投稿!



…日を同じくして。

「宣伝に来ましたー」

優月と心音から、宣伝があるようです…。

   ↓      ↓      ↓

優月:「数ヶ月前から始めた『吹奏万華鏡 特別ページ』についてです!」

心音:「それがどうかした?」

優月:「この度、2025年11月21日金曜日にて…」

心音:「俺たちが修学旅行に行ってる間?」

優月:「"長編版 吹奏万華鏡0 打楽器ソロコンテスト編"を投稿することが決定しましたー!」

心音:「えー!?お前、ソロコンに出んの!?」

優月:「違うよ。この物語の主人公は毎度お馴染み、古叢井瑠璃ちゃんです」

心音:「あの子か。俺、喋ったことないわ」

優月:「ちなみに、僕が中学3年生の時にあったっていう事もあり、0と付けてます」

心音:「おー!安直」

優月:「言わんといて…。完全オリジナルストーリーなので、絶対に見てほしいです!」

(PV1万人を越えたいよぉ…)

優月:「さらに!ラストは衝撃の結末を予定してるので…」

心音:「予定?面白くしろよ?誰も見てくれないぞ」

優月:「さーせん。絶対に面白くします!」

更に!

吹奏万華鏡特別ページでは!

1…キャラクターの紹介、裏話

2…超特別なスピンオフ

3…吹奏楽部員ならお馴染み! 楽器あるある!

そして、どうやってストーリーを作っていくのか、作者が分かりやすく解説しようかと考えています!



         長編版

        吹奏万華鏡0

     打楽器ソロコンテストの章編


     続報を待っててくださーい!涙

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