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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
心が激動!? 鳳月ゆなの過去編
148/209

77話 願い

鳳月ゆなの過去編 第2話

鳳月ゆなは、桜坂大吾に裏切られたことを、少女から聞かされた。そのまま帰路についた。

『お母さん、ただいま』

『遅かったじゃない!何してた…』

母は心配でゆなに詰め寄ろうとする。その時だった。

『お母さん、やめて!!』

隣りにいた少女が叫んだ。

痛々しいその声に、母の足が思わず止まる。

『この子はね、友達に嘘つかれてたの!』

少女の容赦ない声に、ゆなの口からは嗚咽が飛び出る。

『…っ!…っつ!』

自分は友達に裏切られた、と言われているようで。

『でもね、いちばん悪いのは、友達の男の子たちなんだよ!体育館前で男の子たちが、友達を殴ってたの見たもん!』

その少女の言葉に、ゆなと母は耳を疑った。

『だから、この子を怒らないで!』

幼い故、話しは一方通行だが、ふたりは言葉の意味を呑み込んだ。

『おね…がい…』

その時、女の子から力が抜ける。そして足から崩れ落ちる。

『あ、おい!』

ゆなが慌てて少女を抱きとめる。その時、破れた服から何かが落ちる。ボロボロになった名札だった。

『…読めない』

ゆなは漢字が読めなかった。だが、その名札には、

[詩島玖衣華]

と書かれていた。


その少女、詩島(うたしま)玖衣華(きいか)が目を覚ますと、暖房の聞いた温かい布団の中だった。

『あったかい…』

すると、ゆなが彼女へ顔を近づける。

『だ、大丈夫?君、名前は?』

『私?私は詩島玖衣華』

その時だった。

がちゃり!という音と共に、彼女の母が入ってくる。

『玖衣華ちゃんだね。明日……』

母が何かを言おうとした瞬間、

『お願いです!』

玖衣華が布団から全身を乗り出す。

『私を…施設に預けないで下さい…』

『えっ?施設?』

ゆなは首を傾げる。

『お願いします!私、ドラムができます…』

『えっ?ドラム?なにそれ?』

ゆなは一から十まで理解できない。

『何でもします!だから施設だけは…』

玖衣華は施設入りを恐れているようだ。

『…分かった』

すると母が根負けしたかのようにため息を吐いた。そして玖衣華へ顔を近づける。

『一体どうしたの?』

『私は…親に捨てられました』

その言葉に、幼いゆなでさえ、身震いしてしまった。

『私、親の命令でドラム演奏の動画を強要されて、そのせいでお母さんとお父さんが離婚しちゃって、私はお父さんに引き取られたんですけど、もうドラムができないなら用済みだって』

『なるほど』

母は優しい目をして言うが、目の奥は怒りに染まっていることが分かる。

彼女は親の金儲けの道具にされていたのだ。

しかし母の瞳から逃れるように彼女は目を逸らした。

『…お願いです。私、施設に行きたくないんです』

玖衣華の言葉には、強い意志が込められていた。

『お母さん、私からもお願い。この子がいなかったら、私は風邪を引いてた…ゴホッ!』

『あーたはもう引いているでしょう』

そして母は再び玖衣華と向かい合う。

『分かった。明日、手続きをしてくるからね』

『あ、ありがとう。お母さん…』

その通り、詩島玖衣華は鳳月家の一員となったのだ。

ありがとうございました!

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