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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
復活と再会 華高祭編
106/211

35話 諸行無常

「箏馬君が、仏教間の言葉を使う理由がやっと分かったよ」

優月が言うと、箏馬は「そうですか?」と首を斜めに傾ける。

「うん。最初は仏教で救いを求める為かなって思ったけれど、本当は和尚さんから言われた言葉を真似したかっただけだったんだね」

「まぁ、そうですね」

そう言って箏馬は恥ずかしそうに笑った。今日はちょくちょく子供っぽい所が見られるな、優月はそう思って、ひとり静かに笑った。


すると箏馬は、あっ!と話を切り出す。

「それでさっきの、俺が吹部に入った理由ですが…」

「うん」

優月は静かに聞くことにした。

「孔愛に言われたんです。お前は力が強過ぎるから、力を使わない部活にしろと」

「へぇ」

「そしたら、バレー部ではサーブが強過ぎて厄介払い、サッカーはコントロールミスで投げ出し、バドミントンはシャトルを壊す。もう絶望的という所に、彼に吹部に入れ、と誘われたのです」

「へ、へぇ」

「でも、入って正解だったと思います。休部した身で言えるかは分かりませんが、少し優しくなれた気がします」

「…そう?」

優月はそう言って、箏馬の肩を叩いた。

「諸行無常。この世は常に変わり続けているんでしょ?早くしないと。その想いが腐っちゃう前に」

「!?」

すると箏馬は黙って頷いた。


その時、カンカン!と踏み切りの音が鳴り響く。どうやらここまでのようだ。

「じゃあ、箏馬君、また明日ね」

優月が手を振ると、箏馬も手を振り返した。

そうして優月が列車に乗ると、自動ドアが静かに閉まる。

「…優月先輩」

優月は座席を探すように歩いていた。そこで列車は滑り出し始めた。

「…ありがとうございました」

箏馬はそう言って、駅から去って行った。そして電話を誰かに掛けた。

「…孔愛、久し振り」

『おん?学校で会ったよな?』

「明日から部活に戻るわ」

『…っえ!?』

電話越しに、孔愛は驚いているようだった。

「少し考えが変わった…」

箏馬はそれだけ言って、電話を切った。

「諸行無常。この世の全ては変わりゆく」

絶え間なく変わり続ける事態と心情。

こうして、箏馬(かれ)の復帰が決定した。


その頃、優月は瑠璃に一報を入れていた。


           《恐らく箏馬君は部活に

           復帰すると思うよ!》

《えっ!?そうなの?》

           《うん。》


するとグッと書かれたスタンプが送られる。優愛からのスタンプとは、また違うデザインだ。

「…全く」

何はともあれ、ひとりを救えて良かった。今の優月はそう思っていた。

その時、メールの通知が知らされる。

「…ん?夏矢君?」

それは、夏矢颯佚からだった。彼とは連絡先を交換しているが、半年は交信していない。

《茂華高校の文化祭って行くか?》

そんなメールの文言はこれだった。


             《どうして?》

《少し朱雀と話したくて》

             《美玖音ちゃん?》

《優月くんは知ってるのか》

             《うん》

《それと吹部見たくて》


それを見て、優月はクスリと笑う。

《いいよ》

と返した。確かに茂華高校の吹奏楽は、春isポップン祭りでも、全く見られなかった。確かに見たいよな、優月も何故か自然とそう思った。

朱雀美玖音とは、元神平中学校出身の女の子だ。強豪校やバンドに所属していた彼女はパーカッションの技術が大人顔負けだ。その上、容姿端麗で優しいというおまけ付きである。


その美玖音は、現在、文化祭演奏の練習をしていた。茂華高校の文化祭、通称『華高祭』は、様々な団体が体育館上で演奏するのだが、吹奏楽部も同じだ。

だが、1時間が過ぎるまで、延々と演奏するらしい。人数も数十人単位だ。


そんな美玖音は、部活が終わっても尚、楽器のメンテナンスの最中だった。

「うん、音程がおかしかったのは、深澤さんの調整ミスですね」

ティンパニの音程を確認した美玖音は、何度も頷いた。

「あとは、トムトムのチューニングですか…ん?」

その時、胸元のポケットから着信音が鳴る。

「電話?誰?」

電話の相手を見た美玖音は、嬉しそうに目を細める。

「珍しい」

高い声で一言呟くと、通話ボタンを親指でタップする。

「はい、朱雀です」

『あ、やっぱり部活終わってたか』

その声は、夏矢颯佚だった。

「まだ音楽室ですが何か?」

『…ひとつ確認したくてな。文化祭いや、華高祭なんだが』

「はい」

美玖音と颯佚は中学からの交友関係だ。パートは違えど、よく恋バナで盛り上がったものだ。

『…あの、あの人来る?』

名前を出そうともしない彼に、美玖音は仕方なさそうに笑い、

妹夕(まゆ)ちゃんなら来ないよ」

と容赦なく、彼の言いたい名前を出した。しかしその電話口からは、はぁ、と溜め息が聞こえる。

『あんま名前出さないで』

「それは失礼。でも、会いたいんでしょ?」

その言葉に、颯佚のゴクリと生唾を飲む音が、スピーカー越しに聞こえてくる。

『朱雀…、それは言うな』

その声は怒気をはらんでいた。

「…まぁ、あの時の事を顧みれば当然か」

美玖音はそう言って、ディスクからタムのチューナーを取り出す。

『そっか。朱雀は知ってんのか』

「知ってるから、連絡してきてるんでしょう?」

『ああ、まぁ』

音楽室の窓を閉めた彼女は、スッと肩を落とした。


音羽(おとわ)妹夕(まゆ)。神平中学校にいた颯佚や美玖音と同級生。そして颯佚の元彼女である。


「あれだけは同情しますよ」

美玖音はそう言って、タムのボルトにチューナーを嵌め込む。キイキイ…と擦れるような音がする。

『あれだけは?』

「失礼。何でも」

美玖音はクスクスと笑うと、右手にあるスティックをタムへ打ち込む。どぉん、とくぐもった音。そしてチューナーを回す。すると、みるみるうちに音が変わった。

『って、音楽室で何してるんだ?』

颯佚の訝しげな問いに、

「楽器のメンテ」

と答える。美玖音は長い髪が肩に絡まりながらも、スマホを耳に当て、会話を続けていた。

『本当にそういうの好きだよな。お前』

「まぁ、小学生の頃からの癖だし」

クスッと美玖音が笑う。そして、チューナーを元の場所に戻す。

『…そんなこと言われても、俺は知らない』

意地を張る彼に、美玖音は、

『まぁ、安心して来なさい』

と言って、電話を切った。

「わざわざ電話で確認しなくても…」

美玖音はそう言って、音楽室の電気を止める。カチッという音と共に、音楽室が暗闇へと暗転する。



その時、箏馬は銀之進と話していた。

「…えっ!?部活に復帰する!?」

「ああ」

その言葉に、銀之進の目が輝く。

「良かったぁ」

すると彼は、冷凍庫を開ける。

「今日はカレーにするか。1時間くらいでできるから待ってろ」

「うん」

そう言って、銀之進は居間から出ていった。


(古叢井ちゃん…、優月先輩…)

脳裏にふたりの姿が浮かぶ。瑠璃も優月も、復帰には賛成してくれた。恐らく、世界の誰もが賛成してくれないと思っていた。


箏馬は茹でたパスタと切った野菜を和えると、和風ドレッシングと書かれた調味料をかける。ブロッコリーたちから、調味料の匂いが漂う。

「…パスタのサラダ」

そう言って彼は、サラダの入った大きな器を置くと、鍋の肉や野菜にカレールーを入れる。

いつもなら嫌だな、と思う作業も、今日は何故か苦にも感じない。

「銀之進!!夕飯できるぞ!」

「はーい…」


明日から部活だ。

そう思うと、再び気合が入ってきた。

ありがとうございました!

良ければ、

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※本編とは関係ないストーリー式宣伝です。


部活終わり。

「加藤ー」

岩坂心音が咲慧に言う。

「心音ちゃーん、部活疲れた」

咲慧はそう言って、へたりと椅子へ座り込む。

「そういえば、これ、知ってる」

そんな彼女がスマホを見せる。

「吹奏万華鏡の特別ページ?」

「そう」

「てか、まず本編すら見てないわ」

「それでも!1年生編見なくても、キャラクターの特色とかが分かるらしいよ!」

咲慧が大きな声で言う。

「…それは便利」

「あと、オリジナルのスピンオフも投稿されるらしいよ!もしかしたら、心音ちゃんが主人公のストーリーも出るかもね」

「俺の?流石に出ないよ」

「出たいの?」

咲慧が顔を近付ける。

「うーん、みんなは見たいかな?」

「それは分かんないよ」

その時、夏矢颯佚が話しかける。

「2人共!何話してるんだ?」

「あ、知ってる?吹奏万華鏡の特別ページ」

「知ってるよ。ブックマークしといた。朱雀に頼まれてな」

「朱雀?」

心音は首を傾げる。

「あ!茂華高校の!?」

「おう!もしかしたら、あの人が主人公の話も出るかもな」

「…美玖音ちゃんが」

見てみたい、咲慧はそう思った。

「…一応ブックマークして全部見よ…」

結局、心音は特別ページを徹夜で読破したんだとさ。


…さて、次は誰が主人公のスピンオフが良いでしょうか?


『小説家になろう』の検索欄にて

《吹奏万華鏡 特別ページ》

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