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吹奏万華鏡  作者: 幻創奏創造団
挫折する主人公 市営コンクール始動編
102/208

31話 部長 VS 3年生

《茂華中学校 キャラクター》


古叢井(こむらい)瑠璃(るり)

打楽器パートパートリーダー

優しくて純粋な性格。皮楽器の方が好き。

伊崎(いさき)凪咲(なぎさ)

クラリネットパートパートリーダー

厳しくも優しい性格。実力は群を抜いて上手い。

鈴衛(すずえ)音織(ねお)

フルートパートパートリーダー

武将のような喋り方をする。頭が良い。

矢野(やの)雄成(ゆうせい)

部長。トランペットパート

厳しい性格でスパルタ。後輩にも容赦ない。

久城(くじょう)美心乃(みこの)

オーボエパートパートリーダー

頭脳明晰。瑠璃たちと仲が良く音織の理解者。

指原(さしはら)希良凛(きらり)

打楽器。瑠璃の後輩。

末次(すえつぐ)秀麟(しゅうりん)

打楽器。瑠璃の後輩で小学校からの経験者。

ー茂華中学校ー


「早く準備してくれ」

後輩にも容赦なく怒りをぶつける男の子がいた。

「はい」

その雰囲気に後輩は怖がっている。

「…はぁ」

この体たらくで全国大会になど行けるのだろうか?矢野雄成は不安に包まれた。

「そんなに怖い声で言わなくても」

「坂井」

唐突に名を呼ばれ、澪子は「何?」と首をかしげる。

「あまり甘やかすな」

「どうして、そんなに厳しくするの?」

「そんなの、練習に対する優先順位を上げる為だろう」

「そんな厳しくしたって…」

彼の態度には、澪子もやや呆れているようだった。

「はぁ。矢野ったら」

その様子を見て、誰かがため息を吐いた。


その日の帰り道。瑠璃たちは、夏祭りでお囃子に参加するので、練習の為に公民館へ向かっていた。瑠璃や凪咲が囃子に参加することは初めてだ。

その最中、凪咲が口を開く。

「地区まで1カ月切ったのに、矢野はまだあの態度よ」

「それは知能が低いのか、人智及ばぬ考えがあるのか…」

この少し変わった話し方をする女の子は、鈴衛音織だ。音織も彼の豹変ぶりに多少なりとも呆れているようだ。

「…でも、雄成って、練習の優先順位を上げたいが理由なんでしょ?」

瑠璃が訊ねると、凪咲が頷いた。

「…優先順位を上げるって言っても、それだけじゃ上手くなれないと私は思うけど」

そう言ったのは、久城美心乃。オーボエパートのパートリーダーだ。

「それは私も思うな」

凪咲が同意すると、瑠璃が何度も頷く。

その時、美心乃が瑠璃の肩を叩く。

「これはもう瑠璃ちゃんが何か言うしかないよ」

「えっ!?」

「…瑠璃ちゃん、怒ったら怖そうだし。雄成君と張り合えるかも」

悪気もなく言う美心乃に、瑠璃は小さくため息をついた。

「そんな事言われたって…、私、生まれて、誰かに怒ったことないよ」

その言葉に、全員がは?と目を丸める。確かに瑠璃は優しい性格だが、一度も怒ったことが無いというのは流石に嘘だろう。

「本当だよ」

「じゃあ、怒ったらどうしてたの?」

美心乃が単純な疑問をぶつける。

「えっ?小学校の時は、グーパンか思いっ切り蹴ってたよ。特に言葉で成敗したことなんて無かったなぁ」

何の造作もなしに言う彼女に、全員は(本当だな…)と事実を確信した。

「私、小学校の時は凄く大人しかったから」

「才気あふれる少女なり」

音織も独自の言葉で、彼女にそう言った。

しかし、こうして暫し、矢野の話題が上がってくるのだった。


それから数日後。

「…うん。良くなりましたね。瑠璃ちゃん」

中北が瑠璃を褒める。ティンパニのマレットを握った彼女はへへと笑う。 

「…あとは他の楽器もあるから、それもちゃんと練習するんだよ」

「はい」

瑠璃がこくりと頷く。

「あ、先生…、あの、雄成いや、矢野部長についてなんですけど」

「えっ?矢野君がどうかした?」

「少し、後輩に厳しすぎるかなぁ、と」

すると、ひょこりと希良凛が入り込む。

「我が後輩も怖がっています」

希良凛のちらりと向けた視線の先には、壁越しに3人を見ながら「ピクピク」と言って震える秀麟の姿があった。

「…えっ?それは誰かから聞いて?」

「はい」

瑠璃が頷く。すると希良凛が右足を床へと踏みつける。

「私も怖いです!!」

「えっ…ええ…。なるほど。でも本人に悪気は無いみたいなんだよね」

「悪気が無くても怖いものは怖いです!」

「…あ、あははは」

中北は困ったように笑う。

多分、彼女が注意しようと改善される事は無いだろう、そう思った。


「先生に言っちゃいましたね!」

中北が去ると希良凛がそう言った。

「そうだね」

「部長へ謀反(むほん)の始まりですね!!」

事の重大さを分からないのか、面白がっているのか、希良凛はノリノリな態度をとっている。

『謀反とか言ってる場合じゃないよ』

優愛ならこう言っているだろう。だが、瑠璃は言えなかった。恐らく1年前の自分も同じ事を言っていただろうから。

「そ、そうだね〜」

瑠璃はバツが悪そうに笑いながらも、希良凛の茶色毛を少し撫でた。ふさふさと心地よい感覚が腕にまで伝わってきた。

「先輩、これは一大事なんですよー」

その時、秀麟がそう言った。

「えっ?」

「ギスギスしても全国大会には行けません!厳しければ絶対に行けるとは限りませんっ!」

「あ、うん」

秀麟の剣幕に、思わず希良凛は頷いた。

「ね!瑠璃姉ちゃん♪」

「う、うん」

瑠璃は思わず頷いた。しっかりしているなぁ、そう思った。


夜7時。宵闇が空を囲う頃、瑠璃たちは囃子の練習へと来ていた。

バチを放った瑠璃はうちわを扇ぎながら、凪咲に先のことを話した。

「へえ、末次君が。しっかりしてるんだね」

「うん。ってか、凪咲は秀麟君と一緒の小学校でしょ?」

「ああ、そうだよ」

凪咲はそう言って、安っぽい音を放つ扇風機に当たる。長い髪がひらひらと宙を振りまく。

「…いたっ!」

「えっ?どうしたの?」

凪咲が手を見ると、指が擦れていた。少量だが出血している。

「あ、太鼓あるあるだね」

瑠璃はそう言って、白いティッシュを凪咲の手に押し当てる。

「大きい太鼓やってると、手と指が擦り切れちゃうんだよね」

「はぁ。流石経験者」

「自称プロだったから♪」

そう言って、瑠璃は子供っぽく笑った。彼女の可愛らしい顔からは想像すら出来ないが、実力は相当なものだった。

「でも、進めるかな?こんなんで全国大会になんて」

篠笛を手にした美心乃が言う。

「…神平中に、御浦中に、日光学園に、足浜中でしょ。この4校に勝たなきゃいけないなんて…」

「ウジウジするな。悪縁が寄り付いてくるぞ」

音織が小突くと、美心乃は「はぁい」と言った。

「あと凛西に宇つの…」

「こらぁ!」

結局、美心乃のウジウジ具合は、音織の荒療治によって矯正された。


その日の翌日。

「はい、もう一度、オーボエとトランペットでお願いします!」

笠松が彼女たちに指示をする。

「はい!」

トランペットの音が響くと、オーボエの音が入り込む。

「はい、トランペット、もう少しハリを付けるようにして下さい」

矢野はひとり、厳しい表情をしていた。

「トロンボーン、そこはしっかり伸ばして下さい」

「は、はい!」

すると笠松は楽譜を凝視した。

「さて、ではトロンボーンのメロディーからやってみましょうか!」

【マードックから最後の手紙】

この曲は然程有名では無いのだが、上手ければ何ら問題は無い。笠松はそう考えている。

(雄成…)

瑠璃は指先で、ティンパニの側面を撫でながら、矢野を見つめる。

彼の険しい表情を見るに、自己満足できそうな演奏が出来なかったのだろう。

見ているとこちらまで不安になる。

白いジャージの襟を引っ張りながら、瑠璃は深呼吸をする。エアコンの効いた音楽室は涼しい。しかし、嫌な予感と不穏な雰囲気が、音楽室を蝕みつつある。

(なんか…イライラする)

その感覚が瑠璃は嫌だった。胸の奥で赤い感情が蠢く。部長とは言え、ここまで部員を不穏な気持ちにさせて良いものなのか?

(…どうすれば良いんだろう?)

それは吹奏楽を楽器を楽しみたい瑠璃にとって、無上の邪魔だった。

しかし思考は、笠松の合奏再開の指示で遮られてしまった。


本番まで3週間。曲は完成しつつある。

そして、これからが試練の入り口だった…。

ありがとうございました!

良ければ、

リアクション、ブックマーク、ポイント、感想

をお願いします!




《ここからは本編とは関係ないストーリー宣伝です》


「…先輩ー、お疲れ様でーす」

話しかけてきたのは希良凛だった。

「あ、さっちゃん、どうしたの?」

「先輩、このページ知ってますか?」

そう言って、彼女が見せてきたものは、


【吹奏万華鏡 特別ページ】


だった。

「えーっ、知らなかった!」

「このページは、吹奏楽部以外の話しを投稿したり、本編では見られないレアな所も見られるんですよ!」

希良凛が言うと、瑠璃は「見てみるね」と言う。

「あっ!私の修学旅行!!」

「これ見てないと損ですよ」

「私は、行った本人だから良いや」

「因みに、瑠璃先輩が優愛先輩と管打楽器コンテストに出た話も投稿するかもらしいです」

「!?」

それを聞いた瑠璃の瞳が大きく揺らぐ。

「えーっ!」

「ブックマーク確定ですね」

瑠璃と優愛の話し、少々お待ち下さい。


『小説家になろう』検索欄で、

【 吹奏万華鏡 特別ページ 】

を検索して下さい!!


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