タイトル未定
※この小説には自殺に関しての話題が入っています。注意してお読みください。
この小説は新たな書き方の試作品でもあります。
「これでこの世界で俺に逆らうやつは居なくなった!」
俺は跪く民衆の前で、手を広げなから高笑いをした。
▲▽▲▽
帝国暦6000年、俺は誕生した。
別に名家の生まれというわけでも、金持ちの生まれでもない。
一般の平民家庭に生まれ育った。そんな俺が9歳の時、転機が訪れる。
「おい〇〇!てめえはいつになったらわかるんだ!」
蹴られた。殴られた。叩かれた。痛かった。悲しかった。泣いた。
俺には妹が居た。妹が同じことをしでかした。
また怒鳴ると思った。暴れると思った。
「〇〇。今度からは気をつけなさい」
違った。奴はそう言って妹の頭を撫でた。
後々知ったことだが、これを人は女尊男卑と呼ぶらしい。
「おい〇〇!またお前がやっただろ!」
また蹴られた。また殴られた。理不尽だ。俺は何もしていない。
事実、濡れ衣だった。犯人は妹だった。その妹は頭を撫でられていた。
俺は理解した。大人が正しいと思って生きてきた俺が間違っていた。
俺の考えは至極真っ当だろう。奴らは俺より知識・経験において俺よりも豊富だ。
9歳の子どもがよく気づいたものだ。
でも、そんなものは心の奥にしまった。俺は怖かったんだ。
もう、痛みを恐れることしかできなかった。抵抗する気力は残っていなかった。
▽▲▽▲
13歳になった。思春期に入り、俺は人の言う事を聞かなくなった。
同級生の言うことすら、右から左だった。
その時の俺は、人の言う事が全て間違っていると思っていた。
信じられるものは自分だけ。そう思うほどに病んでいた。
しかし、反抗期なるものはなかった。恐れていたからだ。
心の中では思いつくだけ、けなした。悪口を言った。
でも、それが口の中から出てくることはなかった。
俺の心は更に黒くなっていった。
そんな俺にも、パートナーができた。
もうどうでもよくなった。過去の黒いものが全てなくなった気がした。
こいつと一緒に居られれば他に何もいらない。そう思った。
でも、そんな願いは儚く散った。まぁ、要するに別れたということだ。
虚しくなるので詳細は省く。このときからだろうか。
俺は自己を守るため、見栄を張るようになった。
自己にも自分で干渉することをやめた。偽りの自分を作った。
これが本当の自分である。他人に隠してることなんて何もない。
そう言い聞かせた。傷つけられようと、これが自分だ。言い張った。
いつしか自己の存在なんてものは忘れていた。
13になるまでは自殺未遂を繰り返した。何度も。何度も。
でも全て未遂に終わった。行動を起こせなかった。
「死」という未知の痛みを恐れたから。
人間は未知のものを恐れるらしいか。正にそのとおりだろう。
自分を作り出してからは、自殺未遂を起こさなくなった。
▲▽▲▽
18になった。制度上の成人だ。
ここで帝国、というか大日本帝国について説明しよう。
実は、大日本帝国は一度滅び、日本国となったらしい。
第二次世界大戦に敗れ、GHQの指示で憲法が変わり、陛下は象徴とされた。
そこから100年。当時の総理大臣が、米国と英国に戦争を仕掛けた。
不意打ちで政府関係者全てを皆殺しにした。
一部逃げた者もいて、仮政府を立てるが、全てつぶしたという。
抵抗虚しく、1年立たずにこの戦争は終結した。
そうして、世界秩序は崩壊した。混乱の時代に突入する。
日本側(枢軸国)についたのは、
中国・ロシア・北朝鮮・トルコ・それから親日国だった。
だが、それでも世界では少数派。
ヨーロッパ諸国は仏国を中心に連合を立てた。
戦争犯罪として、枢軸国へ宣戦布告した。
がしかし、日本は中国と密約を交わし、ロシアに戦争を仕掛けた。
ロシアは想定外だったらしく、3ヶ月で滅びた。
当時の内閣は、
「ロシアは近隣諸国に戦争を仕掛ける過去がある。信用ならない」
そんなことをいったそうだ。どの口が言うのか。という話である。かくして、
東半球は中国・日本同盟、西半球はヨーロッパ連合という構図になった。
が、そんな折ヨーロッパ連合は核兵器の使用を決めた。
ちなみに、中国・日本同盟は一度も使っていない。
そうして、核兵器が東京へ飛んできた。
しかし、核兵器が被害を及ぼしたのは仏国であった。
日本はこれを想定し、対抗策を用意していた。仏国は半分崩壊。
それを見たヨーロッパ諸国は、多数が連合から抜けた。
残ったのは、フランス‐イタリア‐ドイツの3国のみだった。
連合から抜けた国は、日本の脅しに屈し、下についた。
1ヶ月後、フランスが滅亡した。内部の反乱によるものだった。
2ヶ月後、イタリアが降伏した。
当時の内閣は政府の関係者全てを処刑し、イタリアを日本国に取り込んだ。
3ヶ月後、ドイツに核兵器を投下した。
内閣の主張としては、「日本の核兵器使用は初めて」といったらしい。
事実日本の核兵器を使ったのは初めてである。フランスの件は流用しただけだ。
これをもって、世界は全て中国・日本同盟の手に落ちた。
そうして、中国と連名で大日本帝国に名称を変えたそうだ。
ここまでを第3次世界大戦と呼ぶらしい。
それと、中国は帝国暦200年程度で勝手に潰れた。
いや、1学者によれば、「潰れるように内部工作した」とのことだ。
まぁつまり、帝国暦200年で世界の国は大日本帝国の下についた。
革命や反乱等はあった。
しかし、国には叶わず帝国暦2000年を過ぎる頃には反乱は消えた。
これが大日本帝国の歴史だ。
▽▲▽▲
成人になって俺が考えたのは、成り上がることだった。
この国では不正に賄賂、なんでもありだった。
成り上がりに関しては、絶好の環境だったのだ。
天皇家の血筋は途切れなかったが、国の主権を握った人物は全て平民だった。
そしてこの頃の俺は、すでにかなり性格がねじ曲がっていた。
しかし、この性格が俺の未来を変えた。この頃の俺のスタンスは、
「認めた人間には師事する。認めない人間は処刑」だった。
当時はスターリンの伝記をよく読んでいた。影響を受けたのかもしれない。
俺には師とも言える、同級生がいた。学生時代もこいつの言うことは聞いた。
こいつが、
「起業するから手伝ってくれ」
と言ったとき、俺は迷わず手を取った。断る選択肢などなかった。
運が良かったのか、会社は軌道に乗った。世界トップ3の企業になった。
俺は秘書をしていた。
十分な経験を得た、富を得た。と思った。
ここまで来るのに、俺はいくつ人を殺したかわからない。様々な意味で、な。
社長は実利主義だった。俺のネジ曲がった性格は、自己分析に役立った。
自分には力がない。自分を超える者に立ち変わられてしまう。
常にそんな緊張感があった。
俺は部下に目をつけた。というか、監視していた。
自分より優秀な人間には追い込みをかけ、殺した。
何人も殺しているうちに、殺すことに何も感じなくなったが。
▲▽▲▽
60になった。定年した。俺は金を使って政治家になった。
競争相手を殺す。賄賂を長官に渡す。不正行為。なんでもやった。
唯一、自分を超える人間として社長がいたが、殺さなかった。
何故かはわからない。恩義でもあったのかもしれない。
そうして、俺は気がつけば政治家のトップ。総理大臣になっていた。
つめり、大日本帝国の2番になった。
しかし俺は満たされなかった。足りなかった。俺は求めた。一番を。
俺は当時の陛下に取り入った。
昔の時代ではなかったらしいが、女系天皇はこの時代では当たり前だった。
つまり、婿入りを狙ったのである。過去に例がないわけではない。
可能性があると思った。
事実、俺は恵まれていた。幼少期の不幸を回収したかのように。
俺は陛下の第一王女と婚姻を果たした。
相手方も60を過ぎて独身という、何とも奇跡的なことであった。
すべて揃った。そう確信した。
10年後、陛下が死没された。そして、自分の妻が天皇となった。
妻は俺の言う事をすべて聞く。全て実現してくれる。
そこまでした手段は、言わなくていいだろう。
その妻に命令し、新たな役を作った。
「帝国総督」俺は1人目の総督になった。
総督の地位は総理大臣より高い。これで完成した。
「これでこの世界で俺に逆らうやつは居なくなった!」
俺は跪く民衆の前で、手を広げなから高笑いをした。ふと思った。
俺は今、なんのために生きている?何がしたくて生きている?
それが突然わからなくなった。