6、終わり
『シンデレラ』から何も書かれていない手紙が届いた次の日。
舞踏会の招待状が届いた。
手違いからか、2通の招待状が入っていた。
すぐに王城からの使者に確認すると、「友人を誘ってもいい」という王から好意だった。
ただし、招待状は必ず誰かに送ることと念押しされた。
友人もなにも全くいない私には地獄のような命令だ。
イビルヨー家から何か届いたら、どの家門も泡を吹いて倒れるだろう。
「……どうしよう」
王命である以上、誰かにこの招待状を渡さなければならない。
まるで、不幸の手紙を送らなければならない気分だ。
そっと、机に目を向ける。
あの書類の下には『シンデレラ』からの手紙がある。
封筒も綺麗にとってある。
「………」
差出人の名以外、何も書かれていない封筒を手にとる。
そして、何かおかしいことに気づいた。
「宛先が書かれていない……?」
「S」の下には、その人物の住所らしきものが書かれていた。
しかし、私の名前や住所は書かれていない。
それなのに、この手紙はここに届いた。
そして、ある考えが浮かぶ。
舞踏会当日。
招待したはずの「シンデレラ」は来なかった。
「アルタイル殿下!」
「殿下!」
そのかわり、自分を「シンデレラ」だと主張する王子殿下と出会った。
今まで秘匿されていた王子が「シンデレラ」?
この後、この王子に人生を搦めとられるとは、夢にも思っていなかった。