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不条理な奇跡(ミラクルム・アブサーディティ)
世界は終焉を向かえた。
たった一人残った彼女は、いや、多くの者によって救われた唯一の彼女は孤独な世界でただ一人、その虚無感に支配された。
それでも尚、彼女は諦めはしなかった。
また来るべき未来のため、また生まれてくる子供たちのため、彼女は詠唱した。
ああ、何度失敗してきたことだろうか。
英雄は死に、騎士は死に、別れはまだ先になるだろうとばかり思っていた友も死んだ。
我が生涯に意味はあっただろうか。
意味はない。
だがそれでも、これから起こる出来事を"奇跡"と呼ぶのなら、私はいつか英雄と呼ばれるであろう。
神の杯、不浄の杖、天上の剣、
これまで届きえなかった多くの者の屍を越え、私は今もう一度願う。
再生あれと
未来あれと
唯我の杯、腐乱の杖、天界の剣、
無意味に朽ちた者の命を代償に、ここに不条理な奇跡を、
誰一人として届かざるその高みに、我は天を伸ばす。
「不条理な奇跡」