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そこにくるみの木があったから  作者: タラ吉の助
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憧れ

ある日近くの商店からの帰り犬の散歩をしている3人の女の子と出会った。   3人の女の子らはみんな同じ顔で姉妹だとすぐわかった。母の店によく呑みにくる建設会社の社長にそっくり。     「◯◯さん?」と聞くと「はい」と答えた。                 女の子達は柴犬を連れていた。きれいな三角形のピンとした耳で、しっぽはクルッとまきがっちりとした体型。   毛色はきれいな山吹色。         「名前は?」と聞くと「ピンク!」    それから時々散歩をしているピンクを見かけるようになった。        何回か見ているうちに気がついた。    ピンクを連れて歩いている子供が時々違う。                私はまたあの3人娘が散歩している時わざわざ引き止めて聞いてみると、ピンクは捨て犬らしく子供達が遊びで紐をつけて散歩ごっこをしているらしい。  私は捨て犬と言うワードに目がキラ~ンと音がしたのを自分でも聞こえた。  その柴犬が一匹で歩いている所を店のベランダから見えた。          私はすぐ冷蔵庫からソーセージをもって犬のそばへ駆け寄ってそっとソーセージを口元へもっていってやると警戒もせずパクっとくわえてUターンして走って行った。             子供の頃から捨て犬ウォッチャーの私はすぐわかった。この子はメスだ。    子犬がいるかもしれない。        子供の頃から捨て犬を見つけては餌をやっていた。              オスはすぐその場でたべるけど、メスは(だいたい捨てられている時点でお腹が大きい)食べ物を土の中に埋めていざと言う時の保存なのか。         私は犬のあとを走って追いかけた。     頭の中では(何をやってるんだわざわざ店を閉めてまで)と思いながら。      500メートルは走った。         時には線路を横切り。          ようやく場所についたらしい。     どこかの畑に穴を掘ってソーセージを埋めていた。             私はそれを見届けて店に帰り、あの子を保護しようと決めた。        次の日首輪とリードをもって店にいき 時々ベランダから外を気にしていたらあの犬一匹で歩いていた。        私はまたソーセージをもって近づき口元へもっていくと今度はその場で食べた。首輪もつけ店のベランダにつないだ。                  さて、捕まえたものの家には外に池の鯉の番犬がいる。マリねーちゃんが山口百恵のドラマ赤いシリーズに出ていた犬の名前から付けた「バン」と言う雑種。私はだいたい名前をつけてもあだ名で呼んでしまう。その犬は「犬ら」と呼んでいた。犬らは番犬のくせに全然吠えなくてすごくシャイな犬だった。あとは家の中で飼っているマルチーズのタラちゃんことタラ吉。     とりあえず今日の所はベランダにつないで帰る事にした。           私が帰る時ベランダの柵からひょっこり顔を出していた。           全然鳴かないなぁ、私は下から見上げながら思った。              

次の日私は早めに店に出た。       散歩をしてトイレに連れていってやらないと。               私のバイクの音が聞こえたのか、またベランダの柵から顔をのぞかせていた。                  ベランダにいくと下痢をしていた。   なんでも食べているからお腹を壊してるんだ。もう家に連れて帰ろう。   反対されても飼う。         昼の客が帰ったあと、私は歩いて犬と家に帰った。            はてさて家の敷地は広いがつなぐ所がないな。とりあえず裏の方につないだ。                  そこで、パシャリ。写真を撮った。          全然鳴かないし、人間が言うがままついてくる。               私は名前に凝るタイプではなく、うちではメスの犬はコロと付けていたので名前はコロにした。           結局またあだ名では「まめ」になってしまったが。              私は一旦店に戻り、夜家に帰ると父から                  「犬は放したぞ、メスはいらないかなら」と、言われた。           (フンだ。また捕まえるもん)       私は懲りない。             しかし、次の日コロはうちの庭を歩いていた。               「帰ってきたの?もうここがあなたの家よ」と、言って頭を撫でてやると嬉しそうに耳を寝かしていた。       それからなんとなく、コロをつなぐ事せず、コロも逃げもせず、といった生活になっていた。             コロは庭をトコトコ歩いたり、玄関先で昼寝をしたり、外にいる犬らも吠える事もなく、私は子供の頃から憧れだった犬の放し飼いができている事に嬉しさを感じていた。          私が小さい頃隣の家にベルと言う名の犬がいて、ベルは放し飼いをされていた。ある日いつも玄関先で昼寝をしていたベルが道路を歩いていて町の方に向かっていた。             私は何処に行っているかあとをつけみた。                 するとベルはバス停の前に座った。     少しするとバスが止まり飼い主のおじさんがバスから降りてきてベルの頭を撫でていた。              その光景に感動をした。         5才くらいだったけど今でも目に浮かぶ   


コロは雷が怖かった。          

普段はおっとりとした性格なのに、ひとたび雷が鳴り始めると、家の中に上りベッドの下に潜り込んでしまう。     また雷が鳴るとまた別の所に逃げようと走り回り、それをタラ吉が追いかけてからかっている。           コロは吠える事もなく大人しく人懐っこく利口で自由だった。       フラッと何処かへ出かけ頭を撫でてもらいおやつをもらう。         相変わらず土に埋めているみたいで母の小さな家庭菜園の畑から大福が出てきた事も。               コロは人気者だった。          中でもコロを溺愛しているおばさんが近所にいた。              数年前飼っていた犬を見送ったあとペットロスになっていた。         しかしコロて出会ってまた犬への愛情が湧いてきたみたいだった。       コロに会いたくなるとうちに来て連れて帰りコタツにいれておやつを食べさせてくれる。             でもコロは少しおばさんに付き合うと私の家に帰ると言って玄関前にすわるらしい。               どんなに大事にされても、うちがいいみたいだ。              うちではコンクリートの玄関でコロの寝床は誰かの靴の上。もちろん靴はぺしゃんこ。               コロはいくら寝床を作っても靴の上がよかったみたいだった。         そんな優しい時間が10年くらいたった頃だった。 

ある日私はお歳暮でもらった焼豚のタコ糸を切ってゴミ箱に捨てた。      ちょっとしてゴミ箱をみたらタコ糸がなくなっている事に気がついた。     まさか?タラ吉が食べた?まさかあんなわりと大きいあのタコ糸を?       だとしたら私の責任だ。         どうか吐き出してくれないか。      いのるように数日様子を見たが、吐き出しもせず、餌も食べなくなった。    私はタラ吉を動物病院へ連れて行った。

その病院はタラ吉のある事でお世話になっていた。  

私の知り合いがメスのマルチーズを飼っていて、その子供がほしいからタラ吉とお見合いをしないかと言われ、メスの発情を待ってうちで預かっていたのだが、発情したメスにタラ吉がビビッてしまい無ずすべが無かった。   

メスの飼い主と相談して人工授精に挑戦しようとこの病院でトライする事に人工授精といってもいたってシンプルタラ吉から精子を出させ、注射器のような物でメスの方に注入する。

獣医と私、2人でタラ吉から精子をだそうとするがなかなかでない、そこへメスのお尻の匂いを嗅がせなんとか微量の精子が取り出せた。          タラ吉は、生まれた時から片玉しかなく、もうひとつは腸に忘れられてるとか。                  だから精子も少ないのだ。         一回目は懐妊せず。           また時を待ち、2回目で懐妊。        メスの飼い主も私も犬の出産に楽観視していた。

ほっておいても産むだろうくらいに。

途中一回検査したら赤ちゃんは一匹という事はわかっていた。

ある吹雪の夜。

私が母の店を手伝っていたら、メスの飼い主から生まれそうと電話が入った。

たまたま偶然、地元の酪農専門の獣医が呑みに来ていて、ついてきてもらう事にした。               私もお酒を呑んでいたので父の車でタラ吉も連れて行った。          「タラちゃん、お父さんだよ」なんて

行くと、客の獣医が片栗粉を水で溶いた物を用意して、と言って指にたっぷりつけてメス犬の子宮を調べてくれた

「ダメだ!逆子だ!早き出さないと親もダメになる!」    

さっきまでのウキウキが一変した。

すごく大変で長く感じた。         出てきた子犬は息絶えていた。       母体のわりに大きくなりすぎてたみたいだった。   

なにより逆子。想像もしなかった。     「すぐに埋めて、母犬が探すから」客の獣医が言った。

子犬は吹雪のなか埋められた。       オスで横顔がタラちゃんに似ていた。

うちではメスが2回出産していて、何も問題が無かったから。 

もっと気をつけてあげればよかった。


その時お世話になった病院へ連れて行った。                乾電池とかはレントゲンに映るけど   糸は映らないらしく、私の証言だけで多分タコ糸を飲み込んでいると、そして乾電池とかなら、出るんだけど糸は腸で絡まるから絶対に出ないという事で手術しかないとの事だった。      私は一旦家に帰った。           高額の手術に即答できず悩んだあげく医師に3回払いでお願いしたら、快諾してくれた。

こんな常連客でもない私に。しかも口約束で。

次の日すぐに手術をしてもらった。

お腹を開けたら、腸の一部が腐敗してそこから糸がのぞいていて、危ないところだった。

それから私は手術費を3回に分けて払わさせてもらった。

やっと払い終わって半年くらいたった頃、今度はコロの様子がおかしくなってまた病院に連れて行くと、なにやら子宮の病気でこれもまた手術をしないと治らないと言われ今度はタラ吉の倍費用がかかりそうだった。

どうしょう。続く手術費用にこればかりはどうにもなりそうもない。      病院から帰るとコロを心配して近所のおばさんが来た。

私は手術を悩んでいると伝えた。

その夜、おばさんの旦那がうちにやって来た、おじさんは神妙な顔で

「コロをおばさんにやってくれないか うちで手術するから」と言われた。

断わる理由が私には無かった。

でも またコロを撫でてやりたいから

3万だけ手術の足しにとおばさんに渡した。

手術は成功した。

何も知らないコロは元気になるとまたうちにやって来た。            でもすぐにおばさんが迎えに来る。

何度も何度も。             最初昼間だったのが、夜帰って来るようになった。             そして私や母が店から帰ると、納得しておばさんの家に帰るようになった。段々と頻度が減り、うちに来なくなった。

私も会わないようにした。

また思い出して帰ってくるようになると可哀想だから。


でもコロは手術後4年くらいは生きたと思う。

亡くなった時おばさんから連絡が来た。

コロをくれてありがとうと。        でも亡くなる前に会わせて欲しかった。

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