第三十話
「赤い曲剣······それはランスロットの魔神剣『夜刀』だわ!!」
「ランスロット殿の······だと······!?」
ミナ(ライト)は初めてランスロットの魔神剣を見た。
彼女その魔神剣は美しく芸術的でシンプルそうに見えた。
······だが、欠点なんか無いような力が備わっているのを肌で感じた。
彼女が持つジークフリート程ではないにしろ、赤いオーラを放っていた。
しばらくソレを見つめていると、ソレが自分で動いて、持ち主の処へと戻っていった。
戻る方向に視線を移すと其処には3人の精霊騎士の少女達が四肢を切り飛ばされて横たわっている姿とタイミング良く戻ってきた魔神剣を右手に握っているランスロットの姿があった。
「ランスロット殿、すまない。
そちらは大丈夫か?」
彼はミナの安否を確認しようと尋ねる。
「ああ、大丈夫だがこいつらはすぐに復活する。四肢を切り飛ばしたくらいではな。」
「確かにそのようだな。」
ミナは自らの無事を彼に伝えてチラリとランスロットの後ろを見て、人差し指で指すと切り飛ばされた四肢が再生していた。
「ミナ、お前は先に行ってろ。
このエントランスの中央の道に真っ直ぐ進めば扉がある。
其処にカリンのクソ野郎が居る。」
「分かった。
こいつらはどうするんだ?」
ミナはエントランスの中央の道に入る前に彼女らはどうするのか聞いた。
「我に任せろ。
我一人でもこいつらの相手は務まる。」
ランスロットはそう言うと結界を張った。
「メディナ、そしてその部下達よ······ここから先は立ち入り禁止だ。」
薄く笑って、夜刀を両手に持ち構えた。
「行かせるとでも思っているの······と言いたいところだけど貴女は見逃してあげるわ。
彼を手に入れるチャンスかもしれないしね。」
そう言って早く行けとでも言わんばかりにシッシッと厄介払いをした。
「メディナと言ったか? お前にはカリンに対して忠誠心 とやらは無いのか?」
「一応、慕わっているけど······忠誠心? 崇拝のことかしら?
······残念だけど私はアイツを信用してないわ。」
「崇拝していないだと? 何故だ?」
「アイツはどうやって精霊使いになったのか教えてあげましょうか。
アイツはね······魅了を使って精霊女王様と精霊王様を操って精霊使いになったそうよ。」
「じゃあ、お前は魅了に掛かっていなかったんだ?」
「私には魅了スキルが通用しない性質でね。
それがバレてここで働いているわけよ。
それにここに連れてこられる人間どもを······殺すことが何よりの楽しみなのよ。」
「悪い趣味だな。
やっぱりお前は精霊じゃないな。」
「何言ってんのよ? 私はこれでも上級精霊よ。
まあ、趣味が悪いというのは認めるけどね。」
本人はすんなりと認めた。
「では、後は任せた。」
「ああ、行ってこい。」
そうして、ミナは中央廊下を疾走した。
◆◆◆
中央の廊下を走っている時、不思議と誰も居なかった。
代わりに罠がたくさん有って、ミナを苦しめた。
「何て罠の多さだ。」
その数々の罠には毒針、落とし穴、ワイヤートラップなどである。
毒針は剣を失った代わりにナイフで弾いて、落とし穴は発動する瞬間に飛んで避けて、ワイヤートラップはスライディングして突破した。
他にも爆発物やキャノン砲があったが通り抜けても、壊れていたのか発動しなかった。
(発動しないのか。)
流石に発動しないことに呆れて心の中でツッコミを入れた。
罠を潜り抜けてようやく到着した。
(此処だな。)
中を確認しようと大きい扉の鍵穴を覗くと、それと同時に中から大の男のドスの効いた声が聞こえた。
「てめぇ、ちゃんと見張っていろと言ったよな? なあ!!」
中では金髪のヤンキーのような傷だらけの男と土下座して必死に許しを乞おうとする少年が居た。
「すみません!! お許しください!!」
許しを乞おうとする少年は酷く痩せ干せており、片目と左手の中指と親指が欠損していて、痛々しい姿だった。
恐らく、食事を録に与えられずに······。
何処からか現れた執事らしき人物がこう提案した。
「ご主人様、もう使えないので殺してみては如何ですか?」
「ふん、そうだなガルデン、と言うことでてめぇは破棄処分だ!!」
ガルデンと呼ばれる執事の提案を受けて、血相を変えてその少年に襲いかかった。
「イヤだぁ!!」
ボコッ!! バキッ!! ゴキッ!!
少年は抵抗できないのに対して、カリンは気にせず平気で暴行を行った。
その様子を鍵穴から除いていたミナは思った。
(変わってないな、あの時と同じだ。
性格も見た目も何も変わってない。
······あの少年には同情するがどうでも良い。)
カリンは過去の記憶と大して変わっていなかった事への確信した。
少年に対する同情もあるがそんなことはどうでも良いと首を横に振った。
襲い掛かられた少年はカリンに顎を蹴り飛ばされて、顎が無くなっていた。
そして、後ろへと倒れて追い討ちに頭を踏み潰しられて死んだ。
そして、 ミナは扉を蹴り破ってカリンの腹を強打した。
「ぐはっ」
カリンはいきなりの事で反応できずに後ろの本棚に衝突した。
「ご主人様!!」
ガルデンは心配して駆けつけるが、彼は衝突する数前に自身の加護で身体を防御していた。
カリンは立ち上がり、ミナを睨み付けた。
「てめぇ、何だ?
何処から入ってきた? 俺様が誰だと知っての事か? それにてめぇ、女だな? おい。」
彼は一旦睨み付けて女と分かると欲望に満ちたニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「お前のようなクズを消しに来た復讐者だよ。」
冷たい表情で彼女はそう告げるのだった。