第二十話
ちょっとした茶番(前回)の後、クリスを連れてオドン市街正門へと向かい、門番に身分証を提示するよう求められたため提示すると呼び止められた。
ミナだけ呼び止められた。
「キミ、この身分証なんだけど何で男の子の名前なのかな? 女の子だよね? キミ?」
「・・・」
不味い、バレてしまったか?
「それにライルという名前男の子の名前だよね? どうしてかな?」
「それは親に付けられまして。」
「へぇ、酷い親も居るんだなぁ。」
確かにライトの親は勇者の嫁になるのなら男である(今は女だが)本人を迫害し、精神を破壊されて故郷を追い出された。
しかし、それは彼女(彼)にとってはどうでも良い記憶でありくだらない事だった。
「まあ、良いよ、入っても。」
「ありがとうございます。」
「ほぅ、ここがオドン市街か・・・まあ、石造りの街だから良いのではないかな。」
「石造りの家ですか・・・あまり変わりませんね。」
二人は少しだけだが、オドン市街とはどういう街なのかと興味津々だったようだがあまり変わらないことに落胆していた。
「そう落ち込むな。」
そうして落胆している二人にミナは声を掛けて、着いてこいとある場所へと向かった。
「なぁ、ミナよ。
カリンという変な奴を殺したいのは解るが、何で闇取引の場所に来たんだ?」
「麻酔ボルトが欲しいから。
麻酔でカリンを気絶させて拷問部屋に連れていき情報を吐いてもらう。
そして最後は―――――」
ミナが黒いコートから取り出したものは葉のような植物を液状へと変えて注射器の中へと詰め込んだ物だった。
「人生をドン底へと堕落させる。」
彼女は笑みを浮かべながらそう言い、闇取引の店へと入った。